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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。

正月の食事

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「どこでお祈りをするの? ここには教会はないし、祠もないよ」

「えっと、えっと……。確か、高い場所でお供え物をして祈ればいいはず。お父さんたちは凄く高い山を登って頂上にある祠にお供え物をしてた。だから、とりあえずすっごく高い場所に行って、お供え物を添えてからお祈りすればいいと思う」

「ん~。じゃあ、角ウサギを一羽ずつ狩ってあそこに行こう」

 僕は火山のてっぺんを指さした。ルパは目を丸くしたが、コクリと頷き、近くに居た角ウサギをさくっと倒した。

「じゃあ、プルス。ルパが火山噴出孔に近づいても死なないよう、炎で守って」

「了解です」

 プルスはルパに火を吐く。すると、ルパの口と鼻に炎が纏わり付き口の中に入って行った。

 魔力を食べさせたのかもしれない。

「あ、熱い……。体が凄く熱い……。けど、苦しくはない」

 ルパは一瞬苦しみ、胸をぎゅっと抑えていた。だが、何事もなかったかのように平然とした顔をしている。

 ――プルス、ルパに何をしたの?

「ルパに私の魔力を食べさせて一時の間、熱に耐性を着けました。これで火山噴出口には入れます」

 ――そうなんだ。ありがとう。

「よし、ルパ。一気に行くよ」

 僕はルパを抱きしめて炎の翼を使い、浮遊。少し羽ばたいて火山噴出口の上空に移動した。

「うわぁ……。ドロドロ。何あれ、ここ絶対に危ない所だよ」

 ルパは火山の中を覗き込み、異質な光景を見て怖くなったのか、僕に抱き着き返してくる。

「今の僕たちなら問題ないよ。あと、この辺で一番高い場所はあそこだから、あの場所でお祈りしよう」

「わ、わかった」

 僕とルパは火山噴出口に降り立ち、祈りやすい場所を探す。一番祈りやすかった場所は以前、剣が突き刺さっていた場所だった。目の前にはドロドロの溶岩があり、きっと入ったら死んでしまうだろう。

 僕とルパは剣の突き刺さっていた場所に狩った角ウサギを置き、正座しながら目を瞑り、両手を合わせて心の中で願った。

 ――神様ありがとうございます。ルパという素晴らしい子と巡り合わせてくださり、とても感謝しています。これからはもう少し頑張って生きます。昔はすぐに死ぬ、もう死ぬといっていたのですが最近ではいわなくなりました。どうやら死にたくない欲が出てきてしまったようです。僕はこれから、ルパをもっと幸せにしますから、どうかこの場所をお守りください。

「よし。祈り終えた。ルパは……まだ、祈ってるね。相当長い間祈ってるけど……、何を祈っているんだろう」

 ルパは尻尾がはち切れんばかりに揺らしながら願っていた。何か嬉しい願いでもしているのかな。ルパが眼を開けて祈りを終える。

「ボッ……」×二羽

 角ウサギの体に炎が付き、燃えていく。角ウサギの焼けるいい匂いがして全て灰となり、消えた。

「な、なんか消えたんだけど……。これでいいのかな?」

「多分……。まぁ、お祈りがどこまで利くかわからないけど、私は満足。ニクスはなんて願ったの?」

「このお願いって言ってもいいの?」

「どっちでもいいと思う。言っても言わなくても、好きな方で」

「じゃあ、言おうかな。僕のこれからの目標だし。お金持ちになるって言う小さな夢はもう、ほぼかなったからさ。今は別の夢を見つけたんだ」

「へぇ、ニクスってお金持ちになるのが夢だったんだ。で、叶ったからどうするの?」

「僕はこれからルパをもっと幸せにするって願ったよ」

「な……。そ、そんな恥ずかしい願い事するなよ。う、嬉しくなんてないからな」

 ルパは僕から視線をそらした。だが、尻尾がありえないほど振れている。

 ――嬉しくないのに尻尾が振れる理由って何かな、ルパ。

「じゃあ、ルパは何をお願いしたの?」

「私は……、ニクスを倒せますようにってお願いした。その後のお願いは言わない」

「そうなんだ。まぁ、ルパが言いたくないのなら、言わなくてもいいよ。ルパの願いが叶うといいね。応援してるよ。僕はわざわざ負けてあげないから、ちゃんと強くならないと倒せないよ」

「そんなことわかってる。絶対に強くなってニクスを倒す。ニクスを倒して言うことを聞いてもらうの。私が勝ったら絶対に言うことを聞いてよ。どんな願いでも聞いてもらうから!」

「わかってるよ。絶対に聞いてあげる。死ね、意外はね」

「よし! 絶対に倒してやるんだから! さ、これでお祈りは終わり。早く帰って夕食にしよう。もう、お腹空いて仕方ない」

「はいはい。わかったよ。そんなに焦らなくてもすぐに帰れるよ」

 僕はルパに近づき、抱きかかえた後、炎の翼を使って上空に飛ぶ。そのまま架空して家にまで飛んで行った。

 僕達は正月らしい縁起のいい食べ物を色々用意して食べる。

 事前に用意していたので、火で温めた。数の子、里芋、昆布、黒豆、栗きんとん、などルークス王国でも正月で食べられている食材をギルドに取り寄せてもらい、購入したものだ。実際の僕は食べた覚えがないが、上流貴族のディアさんの証言などから覚えている物を抜粋した。

「いただきます」

「いただきます!」

 僕達は用意した食事をモグモグと食べ始めた。ルパは初めて見る食べ物ばかりでとても興奮している。肉ばかりの料理もいいがちょっとした色のある食事もたまにはいいだろう。

「ニクス、この黄色い粒粒は何だ?」

「これは数の子と言って魚の卵だよ。それを塩漬けして食べるんだ。ルパの口に合うかわからないけど、少しでも食べて見なよ。さっき食べたけど、触感が面白くて美味しかったよ」

「なら、食べてみる」

 ルパは慣れない箸を使い、数の子を食べた。

「モグモグ……。ん~、変わった味だけど普通に美味しい。このカズノコにはなんの意味があるの?」

 正月に食べる食材には意味があるらしく、僕の覚えている範囲で教えてあげた。

「数の子は子沢山になりますようにって意味らしよ」

「ぶーー!」

 ルパは飲んでいた水を噴出した。なぜ、そんなに驚くんだろうか。

「ルパ、どうしてそんなに恥ずかしがっているの?」

「な、だ、だって。子沢山って、そんなもん私に食わせてどうするきだ!」

 ルパは顔を赤くして大声を出し、僕から少し離れる。

「どうするも何も、縁起物だからさ、別にどうもしないよ。まぁ、確かに……、ルパとの赤ちゃんがいっぱい出来たら嬉しかもね」

「なぁ……」

 ルパの顔は真っ赤から紅色に変わり、顔から湯気が出そうになっている。尻尾は少し揺れていた。
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