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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。

でかい尻

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「ぐわっ!」

 ディアさんは吹き飛ぶも体制を空中で即座に立て直し、靴裏から着地した。

「はは……、ここまでとは。さすがニクス君だ! 楽しい、楽しいぞ!」

 ディアさんは満面の笑みを常時浮かべており、嬉しすぎるのか体中から魔力が溢れ、辺りの空気が冷やされて氷の粒が浮かび上がる。

「凍てつく氷の硬度に震え、貫かれる痛みを知れ『アイスバレット!』」

 ディアさんは溢れ出す魔力で作った氷の塊を僕に打ち込んできた。あまりの数に、全て切りつけるのは滅入るが、ディアさんが操っている以上、どこまでも追い続けてくる。

「はあああっ!」

 僕は剣を振りながら氷を砕き、無効化した。地面に砕け散った氷の粒が散乱し、日の光を反射させる。

「ははは……、今の数をすべて剣で切り裂いた。くぅ~! やはりニクス君との戦いは楽しいな! 私をもっと楽しませてくれ!」

 ディアさんは氷でランスを作り、二本のランスを使って僕に攻撃してきた。単純に攻撃の数が二倍になり、一撃の威力よりも数で押してくるようだ。

 剣が氷の槍に当たっても砕けず、硬度が増している。ディアさんのランスさばきは卓越されており、二本になったからと言って隙は無く、息つく暇もない。

 ――どうしよう、息が辛くなってきた。このまま攻撃され続けたら僕の方が先にやられる。一回息を整え直さないと。

 僕はディアさんから距離を取ろうとした。でも、相手はディアさんだ。そうやすやすと距離を取らせてくれない。一本引っかけないと離脱すら、させてくれないのか。

「ふっ!」

「ふっ!」

 僕は剣の穂先と氷の槍の先がぶつかり合うように戦いの流れを作る。剣先によって砕かれた氷のランスはディアさんの左手から喪失する。そのさい、ランスの重みが消えたことで少なからずディアさんの体が右側に傾いていた。

 ディアさんは踏ん張るために右脚を引き、体を均等に保とうとする。ディアさんの方から一歩引いてくれたおかげで僕は息を整える間を手に入れた。そのまま引けばいいのに、勝つためには引けないと察する。

「はあっ!」

「ははっ! それでこそニクス君だ!」

 僕は剣を振りかざしディアさんに振りかざした。ディアさんのランスは僕の剣を防ぐ。同時に、僕の剣が粉砕する。どうやら、先ほどの氷のランスを割ったのは無理があったようだ。

「ふうぅ……。僕の負けですね」

 僕は剣の破片が誰かに傷をつけるかもしれないのですぐに燃やす。

「うぅ、後味の悪い終わり方だ……。こんな結果、武器の性能の違いでしかないじゃないか」

 騎士の戦いはどちらかの武器が壊れた時、壊れた方が負けである。武器が壊れたら武器を持っている騎士に勝てないという通説の判断だ。

「す、すげぇ……。何だよ、あの動き~。やっぱりニクスはただ者じゃないな」

 僕たちの決闘を途中から見ていたのか、スグルさんが姿を現した。

「おぉ、スグル! 久しぶりだな! ん~? ちょっと老けたか? ちゃんと寝ろよ」

 ディアさんはスグルさんの方を見て手を振った。二人の間柄はそこまで悪くないようだ。

「ディア、お前は相変わらずだな……」

「前に会ったのはスグルの結婚式の時か。もう、一から二年くらいたつな。元気にしていたか」

「ああ、ぼちぼちな……。にしても、二人でドンパチやり合ってよ。副団長に見られたらどうするつもりだ。特にディア。お前は謹慎処分じゃ済まねえぞ」

「軍の作戦を放棄したのは悪いと思っているが、人を見殺しにも出来ないだろ。お前は相変わらず頭が固いな」

「どっちがだよ……。俺の方が柔軟に立ち回っていると思うけどな。お前の方がよっぽど頭でっかいなんだよ。感情に左右されすぎだ。もっとよく考えろよ。頭は良いだろ」

「考えて行動している結果だ。誰も考えず行動に移さなかったから、私が移した。そうしないとこの街が消えてしまうと思ったからな。作戦の実行場所がブレーブ街の近くでよかった。地震発生から一五分で移動できたからな」

「はぁ、単独行動はこれで何度目だ?」

「八回くらいだな」

「は……八回って。そりゃあ、副団長も激怒するわけだ……。よく、騎士の資格をはく奪されてないな。功績の結果か……」

「そうだな。軍規に反しても成果を上げていればおとがめなし。そう、父上と話しを付けてある。ま、毎度怒られるのだがな。ハハハッ!」

 ディアさんは大きく笑った。笑いごとじゃないと思うんだけど。

「はぁ、騎士団長の計らいがあるのなら根回しはしやすいか。何で団体行動が出来ないやつが騎士になってるんだか……」

 スグルさんは額に手を当てて頭を横に動かしていた。

「私は他の人にこの場を頼むと言って出て来ただけだぞ。団体行動をしているじゃないか」

「どこがだよ。それじゃあ、仕事を他人に押し付けているようにしか見えないぞ。お前、騎士団の中でなんて言われているか知っているのか?」

「?」

 ディアさんは頭上に? を浮かべ、知らない様子だ。僕も知らないけど。

「自己中の戦姫って言われているんだぜ。あまりにも協調性が無さすぎる。全部自分一人で出来て、周りが役立たずに見えるのは理解できるが、騎士団は信頼関係が重要な場所だ。周りのことをもっと考えて動かないと反感を買うぞ」

「ぐぬぬ……。そう言われてもな。私の性格は大昔から変わっていない。今更変えろと言われても無理な話だ」

「なら、いっそディア一人の騎士団でも作るか。どこでどんな風にしようが騎士本人が決められるそんな騎士団の団長になる勇気があるのなら、そうしてやらなくはない」

「そ、そんな騎士団があったら私ももっと動きやすくなる。出来るならぜひ頼みたい!」

 ディアさんはスグルさんの手を握り。頼んでいた。

「あんまり期待はするなよな。騎士達からの反感は買うだろうが、毎度毎度謝罪文をしたためる必要は無くなる。まぁ、特例中の特例だからな。上手くいくか分からないが、ディアの実力なら申し分ないはずだ」

「うぉ~! ありがとう! スグル! やはり持つべきものは友達だな!」

「俺はいつもディアの尻を拭く係なんだよ。そのデカい尻をな」

「なっ! わ、私の尻はデカくないぞ! 少々ふくよかなだけだ!」

 ディアさんは盛大な勘違いをしている。スグルさんはディアさんの起こす事柄の後始末をするということの大きさを言っただけで、ディアさんの大きなお尻の話をしたわけではない。

 まぁ、実際に大きなお尻を持っているのだけど……。
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