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実家に向かう

お店の店長さん

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「えっと、僕はこういうお店に来るのが初めてなんだ。昔、クラスメイトが話していた内容から推測すると、時間制限って言うのがあるんだっけ?」

「はい、あります。でも、昼間はお客さんが少ないので時間制限が長くなっています。えっと、言っておくと一八〇分です」

「三時間か。わかった。じゃあルパ。三時間後にまた来る。旧友とのお話、楽しんでね」

 僕は部屋を出ようとしたが、ルパは僕の手を持って引き留めて来た。

「す、捨ててくの……」

「はぁ、僕がそんなことするわけないでしょ。早めに事がすんだら戻ってくるから、安心して。何なら、プルスを置いておくよ」

「ぴよ! 何でそうなるんですか!」

「その方が、ルパが安心するでしょ。今回の件はプルスがいなくても、問題なさそうだし、ルパに付いていてあげて」

「ぴよぉ……。主がそう言うなら、仕方ありませんね」

 プルスはルパの頭に飛び乗り、座った。

「じゃあ、ミア。ルパをお願いね」

 僕はミアの頭を普通に撫でた。いつもルパの頭を撫でると言うことが癖になっていたのだ。

「え、えっと……。私の仕事はしなくてもいいってことですか?」

「うん。しなくてもいいよ。でも、お金はしっかりと払う。何なら、今払うよ」

 僕は金貨一枚をニアの手に渡した。

「そんな、何もしていないのにお金を貰うなんて出来ませんよ」

「じゃあ、ルパのお守りをお願い。一時間金貨一枚ってことで」

 僕は金貨三枚をミアに渡した。

「ちょ、一時間、ルパちゃんとお話するだけで金貨一枚って……」

「気にしないでいい。ルパがここまで嬉しがるなんて珍しいんだ。それだけで僕も嬉しいから、何も気にする必要はないよ」

 ミアは金貨三枚を受け取り、涙目になって頭を下げて来た。

「じゃあ、行ってくる」

 僕はルパとミア、プルスを部屋に残し、受付に戻る。

「すみません。少しいいですか?」

「はい。どうされましたか?」

「このお店の店主と話しをさせてもらいたいんですけど、いいですかね?」

「苦情ですかね……。そう言う場合は嬢にきつく言っておきますから、私が……」

「いえ、苦情じゃありません。交渉がしたいんです」

 僕は金貨が入った革袋を台の上に置いた。

「なるほど……。嬢の購入ですか。では、私についてきてください」

 僕は嬢の購入など考えていなかったのだが、とりあえず店主に会えそうだ。

 男性の後ろをついていくと、最上階に連れていかれ、一番大きな扉の前にやって来た。どう考えても店主のいる仕事場だろうなってわかる。

 男性が扉を三回叩き、声をかけた。

「すみません、店長。お客様が嬢の買い取りを所望されました」

 男性が声をかけて数秒経っても声が返ってこない。

「店長? 店長、開けさせてもらいますよ」

 男性は大きな扉を開ける。すると、部屋の中は大量の水蒸気で満ちていた。

「うわっ、な、なにが起きてるんだ! 店長! 店長!」

 男性は部屋の中に入っていこうとする。僕は男性の首根っこを掴み、進むのを止めさせた。

「水蒸気が晴れるまで待ちましょう。闇雲に進んでも危険なだけです」

「そ、そうですね。すみません」

 僕は最上階の窓を全開にし、風を送った。すると水蒸気が晴れていく。

「あぁ~。ちょっとちょっと、ニクス君。公務執行妨害二回目だよ~!」

 シオンさんが少々小太りの男性の首を握っており、持ち上げていた。男性の口からは泡が出ており、すでに気を失っている。

「だ、誰ですかあなた! 店長を放しない!」

 受付の男性は腰に付けていた鉄砲を手に取り、シオンさんに向ける。

「はぁ、このおっさんが全然話してくれないから、ぶっ殺そうとしてたんだけど、あなたなら知ってるの?」

「な、何をだ……」

「このおっさんが買った少女。返してくれないかな? あの子を待っている親がいるんだよね」

「少女……。新人の少女か?」

「おお~、話が早~い。このキモいおっさんより何倍も楽じゃん」

 シオンさんは店長の首を放し、男性の方に寄ってくる。僕は男性の前に立ってシオンさんと相対した。

「シオンさん、少し手荒すぎるんじゃないですか。もっと穏便に……っ!」

 シオンさんは僕に殴りかかってきた、攻撃をかわすと男性の首根っこを掴み、僕を睨んでくる。

「公務執行妨害、三回目だよ。神様も三回目注意するのは嫌って言うでしょ。私のやり方はゲンジさんから教えてもらった完璧な仕事術なの、否定しないでくれるかな」

 ――師匠があれなら、弟子もこれか……。。

「少女の居場所は一階の待合室です。その男性を放してください」

「なんだ~。ニクス君、知ってるんじゃん、早く言ってよ~。もう、無駄な時間過ごした~」

 シオンさんは男性の首根っこを放し、窓から飛び降りる。この場は五階だ。一階まで一五メートルくらいあるのに……。

 僕は窓から下を覗くと猫のように完璧に着地していた。

「猫みたいな気まぐれさ……。面倒臭すぎる……」

 僕は店主の状態を見に、部屋の中に入った。店長の口もとに手を当てる。

 すると店長は息をしておらず、心不全を起こしているようだった。

 僕は店主を炎で包みながら、心臓マッサージを行い、応急処置を施す。すると、店長が息を吹き返し、大きく息を吸ってせき込み始める。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」

 僕は店長の背中をさすって様態を見る。

「はぁ、はぁ、はぁ……。わしはいったい……」

 店長の意識ははっきりとしており、辺りを見渡していた。

「店長、無事ですか?」

 黒服の男性が店長に声を掛ける。

「あ、ああ……。死ぬかと思ったが生きとる……。ほんと、いったい何が起こったんだ」

「刑事が首を掴んで情報を吐かせようとしたんですよ。あなたは喋る前に気を失ったそうですけどね」

「お、お主は誰だ?」

「僕はしがない旅人です。少し聞きたい話があってここまで来たら、店長さんが首を絞められている現場を発見しました」

「そうか……」

 店長は冷静になり、自分の座っていた高そうな椅子に腰を掛ける。

「はぁ……。酷い目に会った……。して、旅人よ。いったい何をしに来たんだ?」

 ――殺されそうになっていたのに、もう、日常運転に戻った……。図太い性格なのかな。

「えっと、つい先ほど店長さんが購入された奴隷の少女を引き取りたいんです。あの子は元々、迷子になっていただけらしくてその間に人攫いにあってしまったそうで……」
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