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第四章 戦争争議

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まるで卓上で行われるボードゲームのように戦争が話し合いの元できまってゆく。
未来において、俺はこの時代を話し合いができない愚者ばかりの時代だと思っていたが、飛んだ間違いだった。

各国の王はいても、実際に牛耳っているのは二十四家の貴族。
彼らが文官や武官、要職まで政治の中枢まで入り込んでいる。
さらに彼らは、儀式で決まった代表者の決定に意を唱えない。

あの儀式は、どの家がヘッドになり、どの家が手足になるかを振り分ける意味があったのだろう。

砦の決定がどんどん現実化していく。

サイラ国が鉱山を欲しいと言えば、サライ国内で、鉱山の輸入価格が高いという声があがる。さらに同調する者が現れ、スピア国との価格交渉に入る。
スピア国の中枢にいる公爵へはすでにレイフから連絡が入っている。
二国は予定調和的に交渉を決裂させた。

軍備の備えが薄いスピア国であっても、徴兵がなされ、挙兵の準備が整えられる。四か国中もっとも武器の保有が少ない国であったが、ミデオ国から旧式の武器を輸入し、形だけは整えられた。

サイラ国には真新しい武器が揃い、スピア国には旧式の武器が売られる。
ミデオ国はスピア国への武器の供与で儲かった。
実際にはミデオ国軍の旧式の武器を買い受けたリドリー家がスピア国に武器を売ったという流れである。

武器の差は歴然としており、スピア国は負けるべくして負け、鉱山をサライ国に奪われた。

地図の傍に置いてある金貨の山は気分をあげるための装置であった。
ゴードはレイフの前にあった金貨をかっさらっていく。
サライ国のデニスによって、国境線が引き直された。

賭博のように、金貨を動かす。
戦争により、資金がうねるように流れていく。

レイフを抜いた三者は高笑いをしながら、戦争の計画を練る。
彼らが戦火を定め、駒を動かせば、国庫の資金はたちまち二十四家に転がり込む。

ヤネス国とスピア国は森の国境線で争うよう仕向けられた。
二国の間で、要人が殺され、それがどちらの国であったかという紛糾するなかで、二国間で国境線の認識の違いが浮き彫りになり、戦争へと突入した。

勝者も敗者も砦のなかで決められる。
ヤネス国にはサイラ国の最新の武器が売られ、スピア国にはミデオ国から旧式の武器が売られた。
武器の差が勝敗を左右する。
スピア国はまた領土を狭くした。
未来で小国と言われる所以は、この時期に国土を減らしたからだったのだ。

また、ヤネス国の国庫はサライ国のバスカ家に流れ、スピア国の国庫はリドリー家に流れた。

怒りを覚えるレイフを抑えながら、俺は戦況を静観する。
彼らがどう動こうとも、歴史は揺るがない。
今はまだ耐えるしかない。

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