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第二十四話 入植初日、精霊術の奔流。
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「…はぁああああっ!!!」
ストライダーが気合を込めた叫び声を上げる。集めた力を大地へと一気に注ぎ込み、その姿形を変化させようというのだ。
この世界に満ちる、水と地の精霊力を自分たちへと一旦引き込み、イメージ通りに諸々の力を組み合わせることは終了した。
後はその力を大地へと注ぎ込み、ここ一帯の地形を劇的に変化させるのだ。
「水と大地の精霊たちよ! その大いなる慈悲を示し、か弱き者達を守護する御力を、この地へと顕したまえ!」
フォォォォォ………ォォォォォォンンン!!!
IKUMIはそう高らかに精霊たちへと呼び掛け、四人の身体を依代にして集め、増幅した力を、大地へと手を翳して注ぎ込んだ。
………シン………
…ゴゴゴッ…ゴゴッ……ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ………
…ザワザワッ………ザザッ……ザザザザザッ………ザザザザザザザザザザッ………
…チチチチッ……バサッ!、バサッバサッ!………バタタタタタタッ!
ピチチチッ!…ギャアッ!ギャアッ!………チュンッ!チュンッ!
一瞬の静寂の後、地響きが最初は小さく、次第に大きくなって響き渡り、その鳴動と同時に大地が隆起していく。その動きの余波を受け、周辺の木々が揺れた。驚いた大小の鳥が羽搏いて飛び出し、小動物がより遠くへと逃げ出していった。
ゴォオオオオオッ…ドドドッ…ドドドドドドドドッ………ドォオオオオオオオン!
その合間にも隆起していく土塁は、村を中心にして拡がる畑の外周部を、まるっと囲む形で完成していった。
その素早さは、地球の拠点作成ゲームのあの異常な早さをも凌駕し、まさしく神速と言うべき速度で、この国境沿いにある廃村周辺を、立派な一大勢力の拠点へと変化させていった。
………ゴゴゴッ…ガタッ、ガタッ、ガタッ………
「なっ、何ですの一体!? みなさん無事ですか!」
「こっ、怖いです!」
「…モモは大丈夫です。外のみんなは大丈夫かしら?」
「…地鳴りが収まったら、外に出て身に行きましょう」
「解った。それまでは下手に外に出ると危ないものね」
「コーラルは良い子ですので、その提案に従うです」
………ゴゴゴッ…ガタッ、ガタッ、ガタッ………
一方、屋内で掃除中だったマリティアたちは、この事態は堪ったものではなかった。外に土塁を作るというストライダーの話は聞いていた。
だが、ここまでの荒業だとは想像だにしていなかった。
土塁出現時の地鳴りは、屋内に居たマリティアたちにとっては原因不明の地鳴りである。また、揺れる家屋が彼女たちの恐怖心を増幅したのだった。
………ドゥオオオオオッ………
「ウモォー!」
「ブモォー!」
「ゥモー!」
「モォォー!」
「…視界…塞がっていく」
「うん…こんなの、始めてみるよ…」
「…これって、これが本当の精霊の御業なの?」
「…凄すぎる!」
飼育場でも、先程まで飼料を反芻しておとなしくしていた装甲牛が騒ぎ出していた。
その姿を眺めながら、施設の手入れをしていたスズ、ケイト、リチアの三人も手を止めて、ポカーンと大口を開けていた。
土塁が廃村を中心にした畑の外周部を囲って行き、遠方への視界を覆い隠していくのである。彼女たちには、そうして棒立ちとなり、この事態を受け入れるしか手段が存在しなかった。
………ドォオオオオオオンッ!!!………
カランッ、カラランッ。
「…本当に、土の壁が出来ちゃったね、カナちゃん」
「…そうだね、スノちゃん」
野外のかまど付近で夕食の調理中だった二人の幼女スノとカナ。
彼女ら二人は、震動によって屋台から木の食器が落下する中、土塁が完全に廃村と畑の外周部を囲い尽くす光景を目の当たりにしていた。
かまど付近から見渡せる場所が調度、土塁が最後に閉じられる場所だったのである。
「…」
「…」
「…とにかく、地面に落ちちゃった木のお皿と食器を洗っちゃおう」
「…うん。もう一度、水を汲んでくるね」
「それじゃ、お皿とかは私が拾っておくね」
「お願いするわ。じゃあ、行ってくる」
「うん」
しばらく無言で土塁の壁を眺めていた二人であったが、何かできる訳でもないスノとカナである。
二人は、今必要とされている本来の役割に戻っていった。スノが地鳴りによって屋台から落ちた木製の食器を拾い、カナが水汲みへと向かうのだった。
☆ ☆ ☆
(凄い…これが精霊術なのね…)
(…頑張って修業すれば、僕たちもいずれはこんな凄い術が使えるかもしれないのかな?…)
そして、IKUMI、アマナと共に水と地の精霊術を行使したリューコ、ノアと言えば、精霊術で互いに力を合わせたことで、言葉がなくても力の奔流の中、精神のみで意思の疎通が取れる状態となっていた。
純粋な子供の精神のままの二人は、その状況を自然に受け止め、理解し合えるようになっていた。
(うん。きっと使えるようになるよ)
(あれ? その意識はアマナ?)
(ええ。そうよリューコちゃん、ノアちゃん)
(なるほど。僕たちは今、精神で繋がっているから、互いの意思を流暢に伝え合えるんだね)
そんな時、繋がる二人の前にもう一つの意思が現れた。それは、ノアが感じた通りアマナの意思だった。
(ストライダーさま…IKUMIさんの精霊術を通じて、リューコちゃん、ノアちゃんと意識を触れ合ったことで、色々と心の枷が外れたみたい。だからこそ、こうして二人と意思の疎通が図れるの)
(そうなのね。じゃあ、これからお話できなかった分、いっぱいお話出来るんだね!)
(ええ。そうよリューコちゃん)
(良かった。僕もアマナには色々と術法のことを聞きたかったんだ。これならそれも大丈夫だね!)
(そうね。私に答えられることなら、何でも質問してね、リューコちゃん、ノアちゃん)
(うん! 頼りにするよアマナちゃん!)
(僕もね! アマナちゃん!)
(ええ! 歓迎するわノアちゃん!)
(ふふふふ!)
(あはははは!)
(ふふふふ!)
そうして力の奔流の中、三人の意思は歓びに包まえ、その力場には純粋な歓喜の声が響き渡った。
!?
!?
!?
だが次の瞬間、三人の幼女の意識は、なぜかモノクローム―――白黒の世界へと飛翔していた。
(あれ?)
(ここは………そうか!)
(ストライダーさまの意識?)
ストライダーIKUMIを認識したリューコ、ノア、アマナ。その認識により、白側の空間にIKUMIの姿が浮かび上がる。
(あれは、IKIMIさんに、TURUGIさんだ。他にも居るよ?)
(そうだねリューコちゃん、他にも八人居る)
(もしかして、あちらの黒側の誰かと戦っている?)
そう感じたアマナの意識に倣い、リューコ、ノアも、意識を黒い側へと向ける。
(何なのあれ。すごく嫌な感じ!)
(解らない! だけど、決して近付いたらいけないと感じる!)
(もしかして、ストライダーさまたちが、あれが白い世界側に来ないように―――守ってくれているの?)
(…私も、そう感じるよ!)
(うん、僕も!)
三人が意思をそちらに向けると、確かに白い世界側に入り込もうとする暗黒の力を、IKUMIが仲間たちと共に防いでいるようであった。
(あれは…あの暗黒は一体!)
(!? 駄目だリューコちゃん! あれは、触れてはいけない力だよ!)
(いけないわリューコ! あの暗黒の想念はこの世界にあってはいけない力だわ!)
IKUMIたちと反発する力。その正体を探ろうとするリューコの意識。一方、ノアとアマナの意識は、直感的にあの暗黒を「今の自分たちでは触れてはいけない存在」だと認識し、必至にリューコの意思を引き留めた。
(あれ?)
(あれれ?)
(これは?)
だが、そのようにして三人の幼女の意思が別々に別たれた瞬間、異変が起こった。
精霊の力の奔流の中で絡まり合った彼女たちの意識は、その力場から解き放たれ、本来の肉体へと帰っていったのだった。
☆ ☆ ☆
「…えっと?」
「…あれ?」
「…戻った?」
「どうやら、三人とも、精霊の力を十分に感じたようだな。とりあえず今日の訓練は、これでお終いだ」
力の奔流の力場から意識を帰還させたリューコ、ノア、アマナ。そんな三人に、ストライダーIKUMIが術法の訓練終了を告げる。
はじめての感覚を終え、瞑想を終えた幼女三人は脱力状態にあった。
しかし、以前より大幅に変わっている光景に、やはり驚く。
「!? わあ、土の壁が本当に周りを覆ってる!」
「これ、本当に僕たちがやったんだよね?」
「そうよノア。ほとんどはストライダーさまの力だけどね」
土塁に囲まれた周辺一帯を見て、リューコとノアが、改めて驚きの声を上げた。そうなるとは知っていたが、やりり実際に完成した実物を見てみれば、凄いなぁと思う。
まあ、目を開けたらいつの間にか、のどかだった寒村周辺で、大規模土木工事が終了していれば、誰だって驚くのも当然だった。
そんな二人に、アマナは事実のみを告げた。
(? あれ、何か他にも変わったような…何だろう???)
!?
「そうだ! アマナちゃん、ちゃんと話せるようになってるよ!」
!?
「そういえば! よかったねアマナちゃん!」
「…えと? そう言えば、なんで私???」
ガバッ!
「きゃっ!」
「良かったー!」
そういえばと、アマナがいつの間にか言語障害を克服していたことに気付き、リューコが喜びを爆発させた。そして、リューコはアマナに抱き着いて、歓びの気持ちを表すのだった。
そんな光景を、ストライダーIKUMIは黙って見守った。もう一人の幼女、ノアと一緒に。
ただ、ストライダーはそんな合間にも近未来のことを考えていた。
(さて、土塁の整備、リューコたちへの精霊術の教導、アマナの精霊術師としてのリミッター解除。この三つは一段落させた。だがまだまだ。それだけだ)
マリティアたちへの精霊術の教導。忘れられた鉱山から送られた荷物の受け取り。新たにやってくる女忍者たちと連れられてくる幼女たち。SANSAIの根分け。その他、諸々のこと。
ストライダーIKUMIがやらなければならない仕事は膨大であった。
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