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第二十五話 入植初日、出城と乙女心。
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土塁が村と畑を囲い込むように完成してから、すでに小一時間が経過していた。
ストライダーIKUMIは、その一時間を土塁を含む周辺の見回りに費やした。
実施の勉強がてら、リューコ、ノア、アマナも、その作業へと同行し、小規模な精霊術を共に行使して、土塁建造の微調整に携わった。
その作業の終了と共に、一行は村の入口へと帰っていく。
だが、それはストライダーが次の作業に入るための措置であった。
IKUMIが次の作業に入るためには、慣れない作業で疲弊した幼女たちを、一旦村に預けなければなかったのだ。
そんな一行の様子を見とめて、村に残っていた幼女一同が村の入口へと集まってきた。
土塁の完成によって、村の防衛能力が格段に上昇したことは一目瞭然である。その感謝をストライダーたちに捧げるべく、彼女たちは村入口へと集まってきたのである。
タタタタッ!
「みんな! マリティア! アマナがね、ストライダーさまのお陰で喋れるようになったんだよ!」
そんな仲間たちの許へと元気よく走り、開口一番、リューコがそうマリティアに伝える。その結果、マリティアたちによる感謝の言葉はお流れとなってしまった。
ストライダーたちを、感謝の言葉で出迎えようと集まっていた幼女たちは、リューコに機先を制されて「なんでそんなにハイテンションなの?」と、その勢いにただただ面食らうのだった。
実際、先頭に立ってストライダーたちを待っていたマリティアは、瞼をパチクリとしばたたせて、話の内容よりリューコのそのテンションの高さに、ただただ驚いていた。
そして、助けを求めるように、マリティアはストライダーIKUMIへと視線を移す。
だが、ストライダーから求めていた返事はなく、「もう少しそうさせてやれ」と指示する視線だけが返ってきた。
そして、その隣では、なぜか気恥ずかしげにアマナが頭を下げ、ノアが困り顔でポリポリと頭を掻いているのだった。
このリューコの症状、じつは先程まで四人一緒に使っていた、精霊術の影響である。
木の属性であるリューコは、隣にいた火属性のノアの影響で、精霊術を使う度に、火が付いた焚火のような状態へとになっていった。
元々ピュアなリューコは、精霊使用から受ける影響が大きい様なのだ。
そこに、友人のアマナが喋れるようになった歓びも加わり、感情の爆発が生じたのだった。
一緒にいたノアとアマナは、「どうにかしないと」と思ったが、肝心のストライダーが「これも経験だ」と、ハイテンション状態のリューコを放置した。
そう指示されたなら、もうノアとアマナには、リューコをどうすることもできない。
先程二人がマリティアに頭を下げたのも、そんな理由があったからだった。「マリティア、私たち何もできなくってゴメンね」と、態度で表していたのである。
そんなこんなで、困り顔になるマリティアである。
「そっ、それは良かったですわね、リューコ。それにおめでとう、アマナ」
「うん! やっぱりIKUMIさんは凄かったよ!。アマナの声も直しちゃうんだもの!」
「そっ、そうなんですの。それは凄いですわね(焦)」
マリティアは、仕方なくストライダーにリューコを宥めて貰うことを諦め、自力でリューコを鎮めることにした。 アマナが普通に喋れるようになったのは、マリティアにとっても大ニュースであったが、今はそれ所ではない。
まず目の前のハイテンションガールを鎮めることが優先であった。
マリティアは、リューコのテンションの高さに気圧されながらも、何とかしなければと頭を捻る。
しかし、良い案などまったくと言っていい程、思い付かない。
リューコのハイテンション振りは尋常ではなかった。例えるならフル充電された自立型ロボットみたいな状態である。マリティアはただ気圧されるのみである。これでは電池切れを持つのも一苦労のように思われた。
(…どうすれば良いんですの?)
絶望的な表情となるマリティア。
だが次の瞬間。
ドサッ!
「え?」
電池切れを起こしたリューコが、突然、マリティアの幼女らしいフラットな胸へと倒れ込んできた。
リューコは、長い奴隷生活に幼い身体を晒していたため、体力が落ちていた。そこでハイテンションになったものだから、身体が持つ訳もない。
村の入口に到着して早々、このように電池切れとなり、マリティアの薄い胸へと倒れ込んだのだった。
スヤァー。
気持ち良さげに眠ってしまったリューコ。
「どっ、どうすれば良いんでの、この状況は!」
たまらずペタンと地面へ座り込み、マリティアが叫んだ。正体を失って倒れ込んできた幼女は、それなりに重い。さすがにマリティア一人では支えきれなかったのだ。
「任せろ」
それ故、そこは身体の大きいストライダーIKUMIの出番となる。
ストライダーは膝を曲げると、その背中にリューコの身体を簡単に担ぎ上げ、座り込んでいたマリティアの手を取って、共に立ち上がった。
「あっ、ありがとうございますのっ!」
逞しい異性の動作に感動し、マリティアが頬を染めて御礼を言う。
こうも逞しい異性の姿を直近で見せ付けられては、冷静でいられない。乙女であるマリティアは、可憐に頬を染めてしまうのだった。
「ああ。一旦、リューコを屋内に入れてくる。その後、俺は夜警をやらせるSANSAIを根分けしてくる。数が必要だからな。先に荷物を屋内に運び込んで、夕食の準備をしていてくれ」
だが、それ以上マリティアの様子を気に留めることもなく、ストライダーはこれからの自分の予定を伝え、家屋に向かい歩き出す。
「はい。御苦労様ですの」
(土塁や精霊術の詳細は、夕食の後にでも聞きますの)
土塁と精霊術の件を聞きたくて、集まってきたマリティアたち幼女の一団であったが、その暇はないようだ。仕方なく説明を聞くことを諦めたマリティアが、一同を代表する形でそう返答をした。
「ああ、それと」
「はい?」
「土塁の件は、ノアとアマナに聞いてくれ」
幼女たちが、なぜここに集まったか理解していたIKUMIは、その説明をノアとアマナに任せるのであった。
「はい、解りましたの」
にっこり笑るマリティア。
「ああ。モモ、コーラル、ケイト、スノ、お前たちも、もう少し頑張ってくれ。他のみんなもな」
「はい!」
「はい!」
「はーい!」
「はいなのです!」
IKUMIに名前を呼ばれた幼女たちが嬉しそうに返事をして、塞いでいた村の入口の道を開ける。家屋までは、並んで一緒に歩く気だった。
今の幼女たちは、そんな何気ない行動に幸せを感じるのだ。
奴隷だった頃は、こんな当たり前のこともできなかったのである。
また、別の子たちに、ストライダーが「御苦労」と手を振ると、その幼女たちも嬉しそうに手を振り返すのであった。
そうして眠ったリューコを家屋内に送り届けると、幼女たちの見送りを受けたストライダーIKUMIは、一人、畑へと向かい、村を出て行った。
☆ ☆ ☆
幼女一同が就寝することになる家屋。
そこに集まった面々は、食事の準備を終え、ストライダーが返ってくる時を待っていた。
すでに、炊き上げた御飯、メインディッシュである装甲狼の肉と、各種野菜がふんだんに使われた料理は、中身が満ちた寸胴鍋に入れられたまま、家屋内に運ばれている。
この夕食を待つ時間帯の彼女たちは、もっぱら土塁形成のことを話題にしていた。その会話の中には、出城という単語が含まれていた。
「何しろ敵地であるホーリーズ・クランの領土内に逆侵攻して、橋頭保である出城を築いた形だからね! ストライダーさまは、間違いなくカッコイイよ!」
「そうです。まるでお伽噺みたいですよね。こんな大事件に関わることになるなんて…」
「私も、こんなことになるなんて思ってもみなかったわ」
「うん、悪い大人に売られて、酷い人生を生きるって思っていたもの」
「これで、向こう側の戦況が少しでも良くなれば良いのだけど」
「うん………」
テーブルクロスが敷かれた机の前で、幼女たちへとノアが熱く語り掛けていた。その言葉に肯き、同意する幼女はモモ、ニオ、ケイト、リチア、カナである。
多少、戦争や戦略のあれこれを理解できるモモをはじめとする面々は、ノアの許に集まり、その話を熱心に聞いていた。
もちろん、あまり戦争のことには興味がなく、諸々の雑事をやっている子たちも同様だ。
そんな子たちは、もっぱらストライダーさまがカッコイイという単語に反応していた。その点には全面的に同意するからだ。
スヤァ。
反応していないのは、少し離れた場所に寝かされているリューコくらいである。
「…あの、その事なんですが、もう私たちもマリティアさんたちのように、郎党に入れて貰わないと………カナはそう思うのです」
「………確かに、それはそうですの。」
カナの決意を込めた意見を聞き、マリティアがその話に同意した。
ストライダーIKUMIは、強い上に優しさを兼ね備えた人物だ。郎党となれば、よりマリティアやカナたちを、一族の者として大事にしてくれるだろう。
当然、マリティア含め、一族の郎党になった者は、そのお返しとして一生、御家のために尽くしていかなければならないだろう。
御恩と奉公というやつである。
もっとも、この場に居る全員は、すでに一生費やしても返せるかどうか解らない、奴隷解放という恩を受けている。
今さら郎党になって一生使える身となっても、何ら異存はない。当然、そう全員が思っていた。
「だから止めませんの、私は」
そう言って、この場にいる全員を見渡すマリティア。最後にスヤァと寝入っているリューコの寝顔を見て、笑顔になるのであった。
「マリティア………」
少し前、言語障害を克服したアマナが、そう友人の名を言った。ちょっと言いたいことを言い澱んでいる感じであった。
そんなアマナの態度に、マリティアもが気付く。
「何ですの、アマナ?」
そんなアマナの想いを聞き出すべく、質問してみることにしたマリティアだった。
「…えと、それって、ここに居るみんなが、IKUMIさまの奥方になっても問題無いってこと?………」
ガタンッ!
そう聞いて、マリティアが盛大にズッコケ、椅子を倒す。思いっきり予想外の内容だったからだ。
「ちょっ! ちょっと待ってください! それとこれとは、話の趣旨が違いますの!!!」
そしてアマナの答えに激しく反論しようとした。
「…違わないよ。女が一生男に従うって事は、そういう事…それに、私はそれで良いと思う」
「えええ!? でも!」
「貴女、何言っているか解っているの?」と、アマナの正気を疑うマリティアである。
しかし、アマナは感情的になったマリティアとは正反対に、冷静に言葉を紡いでいく。
「マリティアの言いたいことも理解できるけど、ストライダーIKUMIさまは、私たち小娘が一人一人で御使え出来る御方じゃないと思う。それこそ、ここに居る全員で仕えても足りない、大きな使命を待った人なんだと思う」
「でも!? でも!?」
アマナの意見に、「リューコ、アマナ、そして私。この三人でIKUMIさんの奥方になる約束だったでしょう!」「それ以上増やしたら、順番的に大変なことになる!」そう反論したいマリティアであった。
恋する乙女が、できれば好きな人を独占したいと思うのは当然のことであった。
しかし、アマナの意見も理解できてしまうため、「でも!?」としか、言葉を繰り返せないマリティアであった。
恋する乙女マリティアは、どうしてもアマナの意見に納得できなかったのであった。
ストライダーIKUMIは、その一時間を土塁を含む周辺の見回りに費やした。
実施の勉強がてら、リューコ、ノア、アマナも、その作業へと同行し、小規模な精霊術を共に行使して、土塁建造の微調整に携わった。
その作業の終了と共に、一行は村の入口へと帰っていく。
だが、それはストライダーが次の作業に入るための措置であった。
IKUMIが次の作業に入るためには、慣れない作業で疲弊した幼女たちを、一旦村に預けなければなかったのだ。
そんな一行の様子を見とめて、村に残っていた幼女一同が村の入口へと集まってきた。
土塁の完成によって、村の防衛能力が格段に上昇したことは一目瞭然である。その感謝をストライダーたちに捧げるべく、彼女たちは村入口へと集まってきたのである。
タタタタッ!
「みんな! マリティア! アマナがね、ストライダーさまのお陰で喋れるようになったんだよ!」
そんな仲間たちの許へと元気よく走り、開口一番、リューコがそうマリティアに伝える。その結果、マリティアたちによる感謝の言葉はお流れとなってしまった。
ストライダーたちを、感謝の言葉で出迎えようと集まっていた幼女たちは、リューコに機先を制されて「なんでそんなにハイテンションなの?」と、その勢いにただただ面食らうのだった。
実際、先頭に立ってストライダーたちを待っていたマリティアは、瞼をパチクリとしばたたせて、話の内容よりリューコのそのテンションの高さに、ただただ驚いていた。
そして、助けを求めるように、マリティアはストライダーIKUMIへと視線を移す。
だが、ストライダーから求めていた返事はなく、「もう少しそうさせてやれ」と指示する視線だけが返ってきた。
そして、その隣では、なぜか気恥ずかしげにアマナが頭を下げ、ノアが困り顔でポリポリと頭を掻いているのだった。
このリューコの症状、じつは先程まで四人一緒に使っていた、精霊術の影響である。
木の属性であるリューコは、隣にいた火属性のノアの影響で、精霊術を使う度に、火が付いた焚火のような状態へとになっていった。
元々ピュアなリューコは、精霊使用から受ける影響が大きい様なのだ。
そこに、友人のアマナが喋れるようになった歓びも加わり、感情の爆発が生じたのだった。
一緒にいたノアとアマナは、「どうにかしないと」と思ったが、肝心のストライダーが「これも経験だ」と、ハイテンション状態のリューコを放置した。
そう指示されたなら、もうノアとアマナには、リューコをどうすることもできない。
先程二人がマリティアに頭を下げたのも、そんな理由があったからだった。「マリティア、私たち何もできなくってゴメンね」と、態度で表していたのである。
そんなこんなで、困り顔になるマリティアである。
「そっ、それは良かったですわね、リューコ。それにおめでとう、アマナ」
「うん! やっぱりIKUMIさんは凄かったよ!。アマナの声も直しちゃうんだもの!」
「そっ、そうなんですの。それは凄いですわね(焦)」
マリティアは、仕方なくストライダーにリューコを宥めて貰うことを諦め、自力でリューコを鎮めることにした。 アマナが普通に喋れるようになったのは、マリティアにとっても大ニュースであったが、今はそれ所ではない。
まず目の前のハイテンションガールを鎮めることが優先であった。
マリティアは、リューコのテンションの高さに気圧されながらも、何とかしなければと頭を捻る。
しかし、良い案などまったくと言っていい程、思い付かない。
リューコのハイテンション振りは尋常ではなかった。例えるならフル充電された自立型ロボットみたいな状態である。マリティアはただ気圧されるのみである。これでは電池切れを持つのも一苦労のように思われた。
(…どうすれば良いんですの?)
絶望的な表情となるマリティア。
だが次の瞬間。
ドサッ!
「え?」
電池切れを起こしたリューコが、突然、マリティアの幼女らしいフラットな胸へと倒れ込んできた。
リューコは、長い奴隷生活に幼い身体を晒していたため、体力が落ちていた。そこでハイテンションになったものだから、身体が持つ訳もない。
村の入口に到着して早々、このように電池切れとなり、マリティアの薄い胸へと倒れ込んだのだった。
スヤァー。
気持ち良さげに眠ってしまったリューコ。
「どっ、どうすれば良いんでの、この状況は!」
たまらずペタンと地面へ座り込み、マリティアが叫んだ。正体を失って倒れ込んできた幼女は、それなりに重い。さすがにマリティア一人では支えきれなかったのだ。
「任せろ」
それ故、そこは身体の大きいストライダーIKUMIの出番となる。
ストライダーは膝を曲げると、その背中にリューコの身体を簡単に担ぎ上げ、座り込んでいたマリティアの手を取って、共に立ち上がった。
「あっ、ありがとうございますのっ!」
逞しい異性の動作に感動し、マリティアが頬を染めて御礼を言う。
こうも逞しい異性の姿を直近で見せ付けられては、冷静でいられない。乙女であるマリティアは、可憐に頬を染めてしまうのだった。
「ああ。一旦、リューコを屋内に入れてくる。その後、俺は夜警をやらせるSANSAIを根分けしてくる。数が必要だからな。先に荷物を屋内に運び込んで、夕食の準備をしていてくれ」
だが、それ以上マリティアの様子を気に留めることもなく、ストライダーはこれからの自分の予定を伝え、家屋に向かい歩き出す。
「はい。御苦労様ですの」
(土塁や精霊術の詳細は、夕食の後にでも聞きますの)
土塁と精霊術の件を聞きたくて、集まってきたマリティアたち幼女の一団であったが、その暇はないようだ。仕方なく説明を聞くことを諦めたマリティアが、一同を代表する形でそう返答をした。
「ああ、それと」
「はい?」
「土塁の件は、ノアとアマナに聞いてくれ」
幼女たちが、なぜここに集まったか理解していたIKUMIは、その説明をノアとアマナに任せるのであった。
「はい、解りましたの」
にっこり笑るマリティア。
「ああ。モモ、コーラル、ケイト、スノ、お前たちも、もう少し頑張ってくれ。他のみんなもな」
「はい!」
「はい!」
「はーい!」
「はいなのです!」
IKUMIに名前を呼ばれた幼女たちが嬉しそうに返事をして、塞いでいた村の入口の道を開ける。家屋までは、並んで一緒に歩く気だった。
今の幼女たちは、そんな何気ない行動に幸せを感じるのだ。
奴隷だった頃は、こんな当たり前のこともできなかったのである。
また、別の子たちに、ストライダーが「御苦労」と手を振ると、その幼女たちも嬉しそうに手を振り返すのであった。
そうして眠ったリューコを家屋内に送り届けると、幼女たちの見送りを受けたストライダーIKUMIは、一人、畑へと向かい、村を出て行った。
☆ ☆ ☆
幼女一同が就寝することになる家屋。
そこに集まった面々は、食事の準備を終え、ストライダーが返ってくる時を待っていた。
すでに、炊き上げた御飯、メインディッシュである装甲狼の肉と、各種野菜がふんだんに使われた料理は、中身が満ちた寸胴鍋に入れられたまま、家屋内に運ばれている。
この夕食を待つ時間帯の彼女たちは、もっぱら土塁形成のことを話題にしていた。その会話の中には、出城という単語が含まれていた。
「何しろ敵地であるホーリーズ・クランの領土内に逆侵攻して、橋頭保である出城を築いた形だからね! ストライダーさまは、間違いなくカッコイイよ!」
「そうです。まるでお伽噺みたいですよね。こんな大事件に関わることになるなんて…」
「私も、こんなことになるなんて思ってもみなかったわ」
「うん、悪い大人に売られて、酷い人生を生きるって思っていたもの」
「これで、向こう側の戦況が少しでも良くなれば良いのだけど」
「うん………」
テーブルクロスが敷かれた机の前で、幼女たちへとノアが熱く語り掛けていた。その言葉に肯き、同意する幼女はモモ、ニオ、ケイト、リチア、カナである。
多少、戦争や戦略のあれこれを理解できるモモをはじめとする面々は、ノアの許に集まり、その話を熱心に聞いていた。
もちろん、あまり戦争のことには興味がなく、諸々の雑事をやっている子たちも同様だ。
そんな子たちは、もっぱらストライダーさまがカッコイイという単語に反応していた。その点には全面的に同意するからだ。
スヤァ。
反応していないのは、少し離れた場所に寝かされているリューコくらいである。
「…あの、その事なんですが、もう私たちもマリティアさんたちのように、郎党に入れて貰わないと………カナはそう思うのです」
「………確かに、それはそうですの。」
カナの決意を込めた意見を聞き、マリティアがその話に同意した。
ストライダーIKUMIは、強い上に優しさを兼ね備えた人物だ。郎党となれば、よりマリティアやカナたちを、一族の者として大事にしてくれるだろう。
当然、マリティア含め、一族の郎党になった者は、そのお返しとして一生、御家のために尽くしていかなければならないだろう。
御恩と奉公というやつである。
もっとも、この場に居る全員は、すでに一生費やしても返せるかどうか解らない、奴隷解放という恩を受けている。
今さら郎党になって一生使える身となっても、何ら異存はない。当然、そう全員が思っていた。
「だから止めませんの、私は」
そう言って、この場にいる全員を見渡すマリティア。最後にスヤァと寝入っているリューコの寝顔を見て、笑顔になるのであった。
「マリティア………」
少し前、言語障害を克服したアマナが、そう友人の名を言った。ちょっと言いたいことを言い澱んでいる感じであった。
そんなアマナの態度に、マリティアもが気付く。
「何ですの、アマナ?」
そんなアマナの想いを聞き出すべく、質問してみることにしたマリティアだった。
「…えと、それって、ここに居るみんなが、IKUMIさまの奥方になっても問題無いってこと?………」
ガタンッ!
そう聞いて、マリティアが盛大にズッコケ、椅子を倒す。思いっきり予想外の内容だったからだ。
「ちょっ! ちょっと待ってください! それとこれとは、話の趣旨が違いますの!!!」
そしてアマナの答えに激しく反論しようとした。
「…違わないよ。女が一生男に従うって事は、そういう事…それに、私はそれで良いと思う」
「えええ!? でも!」
「貴女、何言っているか解っているの?」と、アマナの正気を疑うマリティアである。
しかし、アマナは感情的になったマリティアとは正反対に、冷静に言葉を紡いでいく。
「マリティアの言いたいことも理解できるけど、ストライダーIKUMIさまは、私たち小娘が一人一人で御使え出来る御方じゃないと思う。それこそ、ここに居る全員で仕えても足りない、大きな使命を待った人なんだと思う」
「でも!? でも!?」
アマナの意見に、「リューコ、アマナ、そして私。この三人でIKUMIさんの奥方になる約束だったでしょう!」「それ以上増やしたら、順番的に大変なことになる!」そう反論したいマリティアであった。
恋する乙女が、できれば好きな人を独占したいと思うのは当然のことであった。
しかし、アマナの意見も理解できてしまうため、「でも!?」としか、言葉を繰り返せないマリティアであった。
恋する乙女マリティアは、どうしてもアマナの意見に納得できなかったのであった。
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