ストライダーIKUMI~奴隷を助けたら求婚された。だが気にしない。

ゆっこ!

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第四十一話 兄妹の再開。

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 「!? おっ、お兄ちゃん!」

 「!? その声はニオ! お前! 無事だったのか!」

 国境から程近いの村の敷地に兄妹の再開の声が響いた。じつに三カ月振りの再開である。

 この再開した兄妹、狩人リュウ・ノウギクと、侍の家の幼女ニオ・イナズナは、年の離れた実の兄妹であった。

 元々、ニオが養女となったイナズナ家は、ノウギク家とは血縁関係、つまり親戚なのである。

 二世代前にイナズナ家の次男坊が侍の道を捨て、新たに国境付近の山林地帯での狩人を生業とするノウギクの家を建て、独立した。

 とはいえ、核家族化が進んだ地球の現代日本と違い、こちらの世界では親族同士の関係は重要なものであり、関係が疎遠になる特別な理由もなかった。

 北方諸国連合の領土は苛酷な北方の地にある。

 そこに住む人間たちの最後の頼りは、国でもなく地位でもなく、一族と血縁関係なのである。
 
 そんな経緯と関係は、家が分かれようとリュウ、ニオの世代まで続き、その縁が元で、ニオは金銭的に余裕があったイナズナ家の幼女に入ることとなったのだ。

 理由は、長年を山中で過ごす狩人の生活は、女子には辛かろうとのノウギク家、イナズナ家双方の親の配慮である。

 しかし、運命とは皮肉なもの。

 金銭的に恵まれ、幸せに育ち、年頃になれば良家へと嫁ぐはずだった妹のニオは戦乱の煽りを受けて奴隷商人へと捕えられ、その兄であるリュウは、妹の身柄を取り戻すため、奴隷商人たちをこのトーリンの地まで追う事となったのだった。 

 そんな兄妹が、今日、ここで期せずして再開することとなったのである。

 「本当に…よく無事で!」

 「お…お兄ちゃん…ぐすっ、助けに…本当に助けに来てくれたんだ…」

 感極まり、その身体の疲れも忘れて満面の笑みを浮かべる兄のリュウ。一方、妹のニオも嬉し涙を眦に涙を溜めた。
 その兄妹の様子を眺め、リュウの同行者であるアルス、アカバナムの表情も明るいものとなった。攫われた娘たち全員の所在を掴み、助け出した訳ではないが、彼等も一応の目的を果たしたのである。

 「おお。ここに探していた妹御がいたか。まずは我等の目的の一つは果たされた。重々、重々」

 「リュウ殿、おめでとう御座います!」

 「おお! 二人共助かった!」 

 辛い旅路を共にした二人に祝福され、リュウも振り返り、返礼の言葉を投げ掛ける。

 「!? これは! シヨケギクのお殿さまにトロメリアのアルスさま! お二人までが、この地までわたくしたちを取り返しにきてくださったのですか!」

 そんな三人連れの者たちに、別方向から幼女の声が投げかけられた。IKUMIに連れられアルス一行へと会いにきたマリティアの驚きの声であった。

 「そのお声はマリティア殿か! 御無事でありましたか!」

 「おお! 生きておいででありましたか!」

 マリティアの肉声を聞き、IKUMIとマリティア、連れられてやってきた幼女たちのいる方向に向き直るアルスとアカバナムであった。
 共に北方諸国連合の貴人であるマリティア、アルス、アカバナムの三人は、互いを知る間柄。異国の地で再び出会えた歓びにパッと明るい表情を見せる。

 とはいえ、互いの姿にハッと驚く三人だった。

 マリティアは金色の髪に月を模った髪飾り、緑の草花と布の服を重ねた服装。一方、アルス、アカバナムはホーリーズ・クランの間者たちとの戦で、一敗、地に塗れた武者装束。

 三人は、お互いに見知った服装とはいかぬ知り合いの装束に一瞬驚きはしたが、それも致し方なしと一礼し、近況を話し出す。

 「アルス様、アカバナム殿、ご無事で何よりです。私も幸運なことに、こうして奴隷の身からこちらのIKUMIさまによって助けられ、この身を穢されることもなく、この場にいるみなさま共々、こうしてこの村に逃げ込めた次第です」

 「マリティア殿こそご無事でなにより。私は、おのれの不甲斐なさに恥じ入るばかりです。一敗、地に塗れ、しかし、攫われた皆々様の身を取り返しもせずに死ぬるは無念と、このアカバナム殿と共にこのトーリンの地まで遥々やってきた次第です」

 「ふふっ、お互い、貴人には程遠い姿ですね。されど、私、命があっただけでも運がよかったと思っております」

 「ええ。それは某もでございます」

 「ふふっ、ではお互い様ですね」

 「ええ。お互い様です」

 「左様、お二人の言う通りで御座る。まずは、重々、重々!」

 斯様にして、再会の挨拶とするマリティア、アルス、アカバナムの貴人たちであった。
 その合間にも、リュウとニオの実の兄妹も親しく互いの近況を語り合っていた。
 選ばれし者であるIKUMI、TURUGIはじめ、その連れであるリューコ、モモといった幼女の面々は、その再会の挨拶が終わるまで、温かく彼等を見守り続けた。
 
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