ストライダーIKUMI~奴隷を助けたら求婚された。だが気にしない。

ゆっこ!

文字の大きさ
42 / 45

第四十二話 今後の話し合い。其の一

しおりを挟む
 俺の名前はIKUMI。性別は男性。年齢は二十歳前半。地球生まれ。現在、異世界に転移中。
 この世界を守護する存在に選ばれた、俗に言う[選ばれし者]だ。
 そのために、常人にはとても到達できない領域の鍛え抜かれた肉体を持ち、そこそこの戦闘技術もある。さらに錬気術と水と地の精霊を使役できる。

 そんな俺は現在、ホーリーズクランという国家と、北方諸国連合を形成する小国家群の狭間にある、国境地帯にいる。
 何をしているかというと、奴隷にされた幼女たちを救い出して、現在はそのお世話の途中だ。

 自分と思想の違う者は人と見做さない、差別主義全開の連中に奴隷とされたていた彼女たちを、俺は助け出して小さな村に匿い、その地を拠点としている。
 そのため、世界に混乱を巻き起こそうとしている[世界の敵]を探し出し、戦い、封じるという本来の目的は一時停止中だ。
 ちょっと苦しい言い訳と取る者もいるかもしれんが、辛い立場に立たされたか弱き者たちを助けるのも、この世界を救う一助と言える。
 今はそのために、本来の目的は少しの間お休みだ。

 幸い俺たち[選ばれし者]は一人ではない。

 探索や大規模な戦闘の準備は俺とは別の連中に任せて、こちらに注力してもしばらくは問題ないだろう。

 ◇ ◇ ◇

 「さてニオ」

 「! ハイ、何でしょうか?」

 「火の精霊術が使えるノアや他の者たちと一緒に、兄君やアルス殿、アカバナム殿の足を洗って風呂の用意をしてやってくれ。みんなで精霊術の練習をするんだ。他の者たちは食事と床の用意をしてやってくれ」

 遥々国境山脈を越えてきた客人たち村の敷地の中へとを受け入れ、その世話にまわった幼女たちを除き、IKUMIたちは本来の予定へと戻ることとした。そのためにIKUMIたちはちょっとしたミーティングを行う。
 
 「わかりました! ええっと…ノア。それと………」

 「あっ、私が水の精霊術で湯船に水を満たしてみる!」

 「じゃあ、僕が火の精霊術でお湯を沸かすね」

 「お願いするわ。私は木の術で風を起こすね」

 「他の者たちはそれぞれ普段の仕事を続けてくれ」

 「「「「「はい!」」」」」

 IKUMIと出会ってから三日目となると幼女たちも、状況の変化に慣れ始めて戸惑いなく話し合いを終え、短時間で物事を決めていくようになっていた。しかし、その会話を聞き及び、目を丸く者がいた。

 「!? と、言うことはニオも精霊術が使えるのか!何で!何時使えるようになった!」

 「今日の朝だよ。IKUMIさんに教えて貰ったの!」

 目を丸くした人物、それはリュウであった。実の妹とその友人たちの会話に驚き、どこまでが事実か聞き出そうとする。彼は丸くした両瞼をさらに見開き、妹とその連れの幼女たちをまじまじと見詰めた。

 「もしかして、お前たち全員か?」

 「そうだよ、ニオのお兄さん! ねぇ、みんな!」

 「うん!」

 「えへへ、ちょっと凄いでしょう!」

 「今朝、そう言うことになりました」

 「そゆこと、そゆこと」

 「うんうん。じつはそうなのです」

 「ニオのお兄さんも、御侍様と一緒に教えて貰ったら?」

 「うん? 可能なのか? 俺でも?」

 「たぶん。ニオも使えるようになったんだから、お兄さんもできると思う。

 「まあまあ。とりあえず今日は休んでください。まずは休んで疲れをとって貰わなくちゃ」

 「うん。ニオもそうした方がよいと思うの。お兄ちゃん、まずは井戸端で足を洗って。今、桶を持ってくるから」

 「おっ、おう!」

 幼女たちの話を聞いて、そんな簡単に精霊術が使えるようになるものなのか?と仰天するリュウ。その一方、実妹ニオとその友人たちの、まず休めという言い分ももっともだと思った。
 自分が国元を離れ、国境山脈を越えてここまできたことを思い出し、それがまず肝要だと思い立つ。すべてはそう、一休みしてからだと。
 
 「それじゃニオ、お前たちのお言葉に甘えることにするよ。(井戸端に)連れて行ってくれ」

 「うん!」

 まずはニオたちの提案に素直に従うこととするリュウであった。何事に対処するにも、疲れていては頭が回らなけい。よい判断をするためにはとりあえず休む。それから後のことは考えよう。
 そう考えてリュウは、アルスやアカバナムを共に井戸端に行こうと誘うのだった。

 「アルス殿、アカバナム殿、まずは足を洗って貰い、休息を取りましょう」

 「はい」

 「そうですな。、では失礼しますぞマリティア殿」

 「はい。まずはお二人、いえ、三人共お休みください。すべてはその後に致しましょう」

 「そうですね。では」

 「失礼しますぞ」

 「ええ。では私も自分の仕事に一旦戻りますわ」

 それぞれのやるべきことをなそうと、一旦解散するIKUMIと幼女たち、アルス一行であった。

 リュウは早速、マリティアたちと話していたアルス、アカバナムを伴い井戸端に向かう。まさかこうして、攫われた妹たちと共に過ごせることになるとはな。などと感慨深く思いながら。

 そんなリュウたちを見送り、IKUMIはリューコとアマナを伴い、まだ生まれる前の樹花の精霊獣が眠る場所へと向かって行く。

 「行くぞ二人共。手を繋ごう」

 「はい!」

 「はい」

 そして、IKUMIが自分を見詰めるリューコとアマナそれぞれに掌を差し出すと、二人は嬉しそうにそれを握った。こうして三人は、仲良く手を繋いで目的地へと歩いていくのだった。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...