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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。
6*二人の秘密は絶対守ります。
しおりを挟むあれからディナン達と、一週間に一度は会って遊ぶようないいお友達になれました。
どこのお家の子かは、まだ分からないけれど、ディナンはとてもいい子で、無口だと思っていたのはほとんど最初だけで、今はよく話して笑ってくれるようになりました。
最近では、ジョーと見つめ合いながら笑ってるの見たり、この前サッカーをした時、ディナンが転んでしまった時には、ジョーがとても慌てて、自分の持ってたハンカチを膝に巻いてあげてたり、その後も甲斐甲斐しく介抱していて‥‥鼻血が出そうなほど心の中でニヨニヨしてしまいました。
あ、先週なんてね、ディナンがウトウトしていて(あ、寝るなーなにか掛けれるものないかな)って思ってたら、ジョーが着ていた上着を、無言で掛けてあげてたんですよっ!!なにそれ!可愛いがすぎる!!ちっちゃいくせにスマート!紳士!!ウトウトしてるディナンも可愛いし、ちょっと照れながら上着かけてあげるジョーも可愛いし!!!(腐り補正有り)挙句に、上着掛けられたのに気づいたディナンがな寝ぼけ眼で、
「‥‥ジョー、ありがとう。」
そう言って少し笑ったかと思ったらまた寝だすディナンはなんなんでしょう!!?聞こえないはずの言葉が私には聞こえましたよ!!!絶対、心の中で好きって、思ったでしょう!?ジョーも動き止まってましたよ!?さすが美少年!!そーゆーこと?そーゆー感じなの?そーゆー事でいいのね?確定しますよ?いいんですね!!??(※腐り補正強めにかかっております。)
あぁぁぁぁ。なんなの、この二人が尊すぎて苦しい‥‥あの二人は私のこと弄んでいるんだわ。そうよ。そうに違いありません。はぁぁぁ。幸せ(※心が腐っているので腐った見方しかできてません。)
そんな事を妄想しながらも、平穏な日常は過ぎていきます。
そして今日も、二人と遊びに来ました。何故か、ディナンとジョーが気まづそうにしています。何故なのでしょう?訳が分からず少し不安になります。‥‥まさか!
「チャコ、今日は君に話したいことがある。」
ディナンにやはり、切り出されました。
あぁ、やっぱり。そうなんですね。わかってます。言いたい事は、十分分かっています。
それでも、ちゃんと返事はしなければいけません。
「話?なにぃ?」
少しだけ、演技っぽくなってしまったのは仕方ありません。頬が緩むのを気をつけないとです。
ディナンの言いたい事は分かっているんですもの。ジョーと両想いになった、という事を伝えたいんですよね?私は世間が反対しても、二人のことを心から応援します。幼馴染属性はとても大好物なのです。誰にも邪魔はさせません。もちろん、二人のためにアリバイ工作など必要になれば、協力も惜しみません。あ、まだ五歳ですからね?まだソッチはしなくていいとは思いますが、大きくなった時は任せて!としか言えませんね。うふふん。親友のお願いですもの全力で場所提供でも、隠れ蓑でもなんでもなりましょう。なにより、隠し事せずに言ってくれる二人がとても愛おしく思います。
あぁ、いいんです。仲間はずれだなんて微塵も思いませんから。あぁ、なんということでしょう。今まで私はちゃんと協力できてたかしら‥‥まさか、無意識にお邪魔なんかしてないですよね?万が一してたとしても、後の祭り。これから気をつければいいのです。うん、そうですね。
一人の世界に入っている、と意を決したようにディナンが話し出しました。
「チャコ、ずっと黙っていてすまなかった。実は‥‥私は、この国の第2王子なんだ。」
「なぁんだ、そんなこと~全然気にしてないよ~!大丈夫!私はディナン達の味方だから!!‥‥え?」
予想だにしなかった話に、用意していたセリフをドバーッと言った後、我に帰りました。
「ほら、言った通りでしょ?ディナン。チャコは身分なんか気にしない子なんだ。」
「あ、あぁ。ジョーの言う通りだ。こんなにあっさり受け入れられて逆に拍子抜けした‥‥。」
「チャコだからね。気に入ったら平民だろうと孤児だろと大切にしてくれるんだ。そんなチャコが僕は大好きなんだ。」
そう言ってジョーがいつも通り私の事を抱きしめてきました。
いや、・・・・ちょっと待って。伝えたかったことって身分のこと??
確かに、身分なんて気にしないし、どうでもいいですけど、ショタの純愛BのLはどこいったのですか?私の癒しは!?何処へ!??
あぁああぁ‥‥と膝をついてがっくりしてしまうのは仕方のないことだと思います。
あれ?そういえばジョーは何故か驚いたりしてません。寧ろ、だから言ったでしょ?と得意げです。かわいい。
「ジョーは、前から知っていたの?」
気になってジョーに聞いてみました。少し気不味げに視線を彷徨わせた後真っ直ぐに私の事を見つめて来ました。‥‥可愛い。
「黙っていてごめんね。僕チャコに秘密なんて作りたくなかったんだけど・・・ディナンに黙っているように凄く頼まれていたんだ。ディナンのことを知ったのは偶然なんだけど‥‥。僕の父上が騎士なのは知っているでしょう?」
「うん、グラムさんは騎士団長様なんだよね。」
「うん。このあいだ、父上の仕事の見学に王宮へ連れて行ってもらえることがあったんだ。その時に、バッタリ王宮で会ったの。最初は信じられなくて固まっちゃたよ。」
ふふっと照れ笑いしてほっぺを掻いています。ディナンもホッとしたのか珍しくその場にしゃがみ込んで頭を掻いています。ディナンは一度、長いため息を吐いた後に、スクッと立ち上がりました。
「私もあの時はびっくりしたぞ。まさか騎士団長の子供がこんなところで遊ぶとは思わなかったし。どっかの富豪の息子くらいにか思ってなかったからな。チャコも、伯爵家の令嬢とは思いもしなかった。」
「そうかな?私は、ディナンはそれなりの貴族の子だと思ってたから…王族と言われてもそっかあ。くらいにしか思わないなぁ。」
「やはりそうだったか。最初から貴族の礼をしたり、最初こっちが言うまで敬語だったりしたから・・・バレているんじゃないかとは思ってたが‥‥。」
「チャコは鋭いところがあるからね。そんなギャップも好きだよ」
ジョーはそう言って、私の手を握って来ました。とても可愛い。私も可愛いジョーが好きです。ふへへ
「む。ジョー、さっきからちょっと、チャコにベタベタしすぎなんじゃないか?」
少しふて腐れたように、ディナンが繋いでいる手をチョップで攻撃してきました。あぁ‥‥。そんな可愛い嫉妬しなくてもいいのに。
「むふふふふ。そんな事しなくても仲間はずれにしないよ!ほら、ディナンも手ぇ繋ごう?」
そう言って手を出すと、顔を真っ赤にしてディナンも手を出して来てくれました。
その手をとって、ジョーと繋いでいた手を離してジョーとディナンの手を繋がせます。
・・・・うん、完璧。うっはぁ~
呆然とする二人にとびっきりの笑顔を向けました。
「これからも、三人仲良しでいようね!!」
二人が顔を見合わせて、何故か力が抜けたように笑いました。うわっ!眼福!
「・・・チャコはほんと‥‥」
「あぁ、ジョーの言いたい事はよく分かる。本当にチャコは‥‥」
あら!言葉無く分かり合えるなんて!本当に、二人は仲良しですね!なんだか、私の事でわかり合っているようですが、それはスルーでいきましょう!脱力した二人は、手を繋いだまま呆れたように私を見て笑っています。なんだか三人で遊び出してから、二人とも表情が豊かになったような気がします。とてもいいことですね。お互いにいい影響を与えてるって思うと、リアル純愛になるのは時間の問題かも?うふふふのふ
◇◆◇◆◇◆
それからは、コソコソと秘密基地で会うだけでは無く、手紙のやり取りや我が家へ遊びに来たりして平穏に過ごしていました。
最初、手紙のやり取りの時、お父様もセバスチャンも青い顔をして手紙を届けてくれました。初めてディナンが家に来た時なんか、大慌てで・・・とてもいつもの冷静沈着なセバスチャンからは想像できない慌ただしさでした。ふふふ。
今度、機会があったら、私もジョーと一緒に王宮へ招待してくれると言われて今から楽しみです♪
そんなこんなで慌ただしく、でも、とても平和に過ごしていると、あっという間に、春になり、私も6歳になりました。
レイ兄様から、可愛いノートやペンをもらったり、ジョーやディナンからは、示し合わせたように、二人から、とても綺麗な髪飾りを送ってくれました。‥‥これは、どこか特別なお出かけの時につけていこうと思います。いつも使っているのは、使用感はあれどお母様の形見の物。普段使いはお母様のを使いたいんです。
私が今回のプレゼントで一番嬉しかったのは、お父様とお義母様からのプレゼントです。
ずっと欲しかったけど・・・高いから言えずにいた物。
アコースティックギターです。
アランが持っていて、とっても羨ましくて、楽器屋さんに何度も見に行きました。でも、うちはそこまで裕福な家ではないし、5歳の女の子に買える値段ではなかったのです。それに、女の子がギターをするのも珍しくて、反対されるだろうと思って、ずっと言えずにアランのギターを借りて我慢していました。
「お父様、なんで、私が一番欲しいものが分かったの‥‥?」
少し声が震えてしまったのは、感動してしまって感極まっているからです。
「泣くほど嬉しかったのかい?チャコ。なんで知っているかって?それは、私がチャコの父親だからだよ。」
へへんっと胸を張ってお父様がおちゃらけています。
そんなお父様を見て呆れたようにお義母様が肩を竦めました。
「なぁに言っているんですか。レイに聞いて決めたくせに。」
「えっ!レイ兄様が‥‥?」
バッと後ろを向くと優しく笑っているレイ兄様を見つけました。少しだけ、ばつが悪そうに頬を掻いて、照れているのがとても可愛いです。
「レイ兄様!ありがとうございます!本当に嬉しいですっ!!レイ兄様、世界一大好きですっ!!」
感極まってレイ兄様に飛びつ来ました。しっかりと受け止めてくれて、レイ兄様も私をギュウっと強く抱きしめてくれました。
「チャコが喜んでくれて嬉しいよ。‥‥本当は僕からって‥‥送りたかったんだけど流石にそこまでのお金がなかったから父上に言ったんだ。ちょっとカッコ悪いね。」
そう言って、レイ兄様は申し訳なさそうに眉を下げてしまいました。
「いいえ、レイ兄様からもらった可愛いノートとペンも、本当に嬉しいんです。もぉっ!なんでレイ兄様はそんなに私の事を分かってくれるんですか?エスパーなんですか??本当に凄いです!私のツボを分かりすぎてて逆に怖いくらいです!!」
興奮して一気に捲し立てて、レイ兄様の胸に頭をグリグリすると、レイ兄様は少し擽ったそうに、でも嬉しそうに顔を綻ばせました。そして、背中をポンポンと撫でてくれて「内緒」と言われました。あぁぁあぁ、この紳士力。将来有望すぎる。このまま・・・どうか、このまま、優しさの塊のまま育って欲しいです。兄様が汚れないように私が守らねば。
「チャコは、ギター弾けるのか?」
カート兄様が横からギターを覗きながら聞いて来ました。
「ちょっと大きいので、座りながらになりますけど、簡単なのなら弾けますよ。あっ!家族のみんなに、お礼に一曲歌わせてください!」
「それはいいですね。チャコの曲はとても素敵な曲ばかりですもの。聞きたいわ」
パンっと手を叩いてお義母様が楽しそうにしています。
私はセバスチャンを呼んで、椅子と足をかける台を用意してもらいました。
椅子に座ってギターを構えて弦をポロンっと鳴らします。
‥‥何歌おうかな。
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