ハイスペック隠れ腐女子が異世界に転生しました。~二度目の人生全力で楽しみます!~

なーさん

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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。

7*初めてのハマるものって絶対特別になります。

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 目を閉じて1つ深呼吸します。

 そして、静かにギターに手をかけするて前奏を弾き出します。

「ーー‥‥泣きつかれいて」

 ーー♪
 ーーー♪

「それは偶然じゃなくって、偽り愛でも無くて‥‥」

 ーー♪
 ーーー♪
 ーー♪

 なりきって歌い終わり、とてもスッキリしたところで拍手が聞こえました。
 お父様もお義母様も、カート兄様もレイ兄様もハンクも、とてもキラキラした笑顔で手を叩いてくれています。私はとても嬉しくなり、椅子から降りて、なるべく綺麗に見えるように礼をしました。


 この家族で良かった。
 本当に心からそう思うお誕生日でした。
 歌は嗜みとも言いますが、それはこの世界ではオペラみたいな歌のこと。私も習っているので歌えなくはないですが、やっぱり日本の歌が好きです。多分、他の家で歌えば私の事を嫌厭したり悪口を言われても不思議じゃありません。音の出し方も、言語も違いますしね。

 それでも、こんなに自由に・・・自分の趣味を認めてもらえて、さらに受け入れてもらえるこの環境にいれることは、とても幸せなことです。

 パンパン

 お父様が少し大きく手を打って視線を集めます。

「ゴホン。ここで、子供達に重大な発表がある。」

 緊張しているのか、少しだけ声が低くなっています。
 横に立つお義母様はそんなお父様が可愛いのか、幸せそうに笑っています。

 あぁ、そーいうことですね。あめでたい。

「今年の秋の始めくらいに、家族が一人増える事になる。いまやっと安定期に入ったくらいだ。」

 ハンクは言われた意味がわからないのか、首を傾げています。

「ハンク、赤ちゃんがここにいるのよ。あなたもお兄ちゃんになるのよ。」

 そう言って、お義母様がハンクの前まで行ってハンクの手をお腹に当てました。

「ぼ、僕が‥‥お兄ちゃん?」

「そうよ。ふふ。この子をしっかり守ってね」

「っ!!はい!!僕、頑張ります!」

 素直なハンクが可愛い~~。ハンクと私は同い年ですが、私の方が半年ほど先に誕生日が早いので私の方がお姉さんです。だから、ハンクは下の兄弟というのが初めてなので、とても嬉しそうです。

「お父様、お義母様、本当におめでとうございます!私も赤ちゃんをちゃんと守ります!なんでも協力するので言ってくださいね!!」

「チャコ、ありがとう。」

「ありがとう。チャコの事も、凄く頼りにしていますね。」


 こうして、とても嬉しくて楽しい幸せな6歳の誕生日を終えたのでした。



 夜、遅くまでギターを弄って怒られたのは仕方がないと思います。だって・・・嬉しかったんだもん。うう‥‥。よし、明日はアランのとこに行って、二人で一緒に弾こう!そしてギターのテクニック教えてもらおう!そうと決まったら早く寝なければ!!


 ◆◇◆◇◆◇◆


 次の日の午前中ーー・・

 今日は、いつものように家庭教師たちと勉強したり、ピアノをしたりして、普通に過ごしました。お昼ご飯をチャチャっとでも優雅に見えるように気をつけながら食べ終えて、そそくさと自室へ戻り下町に行くための服を着て、ギターを持ってコッソリと通り穴のある庭へ向かいます。

「あれ?チャコ、これから下町に行くのかい?」

 急に後ろから声をかけられてお腹がビクゥっとしました。

「あ、レイ兄様。そうです。アランにギターを教えてもらおうと思って‥‥」

 レイ兄様は、よく抜け出した私の事を迎えに着てくれるのでアレンの事も抜け穴の事も知っています。行く時はコッソリと行くけど、帰る時は家に入るだけなので堂々と入っています。だから屋敷の人は私が下町によく行っているという事は知っているんですが、呼び止められるのが鬱陶しいので行く時は内緒で行くのです。

「またコッソリと行くのかい?も~チャコは仕方のない子だね。・・・あ、今日は僕もこれから予定無いんだ。一緒に行ってもいいかい?」

 レイ兄様の突然の提案に、嬉しくなります。
 レイ兄様もカード兄様も忙しい方なので一緒にお出かけはあまり出来ないので嬉しいのです。

「勿論、いいですよ。では、レイ兄様が着替える終えるのを庭で待ってますね。」

「うん、すぐに行くよ。」

 そう言って足早にレイ兄様が去っていきます。

 私は、鼻歌を口ずさみながら庭の方へ歩いて行きます。庭に出ると、暖かくなり始めた空気がとても気持ちがいいです。この国は気候に恵まれた土地で、冬でも雪が降るほど寒くなりません。多分、北の町の方に行けば、雪も降っているのでしょうが・・・私はまだ見たことがありません。日本とは違って、島国ではなく大陸なので地震もほとんどありませんし、自然災害というものも、この国では殆ど無いと、お父様は言っていました。そう思うと凄く恵まれた所ですね。私は王都に住んでますが領地はもっと南の方にあります。うちの領地は、海もあり海鮮が取れるとてもいい所です。伯爵家で、いまはあまりお金がないのですが、本来はもっと裕福でもおかしくないのです。

 お母様が亡くなって、何もする気になれず・・・ずっと部屋に閉じこもっていたお父様。その時に領地経営を任せていた人の人選が間違っていました。横領や変な投資話に乗ったりして、我が家はあっという間に借金を抱えてしまいました。お父様はそれにまた嘆きましたが、お義母様と出会い立ち直ってからは・・・また昔のようにバリバリ働いてくれています。元々は、頭のいいお父様ですから。2年のブランクなんか屁でもありません。実際、目に見えてこの1年で我が家は劇的に変わりました。だからギターも買ってくれたんだと思います。

 お義母様も、あの抜け殻だったお父様をよくぞここまで立て直してくれた!と、頭が上がらないです。まぁ結果、愛の力ってすごいですね。

 うんうん。と庭から屋敷を見て感慨深くなっていると、レイ兄様が下町用の服に着替えていらっしゃいました。

「チャコ、お待たせ」

 片手を上げてニコリと笑うレイ兄様はいつもと服装が違うからなのか、とてもカッコいいです。

「レイ兄様は何着ても本当に似合いますね。羨ましいです。」

「チャコだって何着ても可愛いじゃないか。今日のオフホワイトのニット、とても似合っているよ」

「えへへ。これはおニューなんです。よくわかりましたね。」

「ふふ。大抵チャコは下町に行く時は同じ服なのに違ったからね。ほら、そろそろ行こう?帰りが遅くなってしまうよ。」

「あ、そうですね!急ぎましょう!!」

 私はギターを背中に背負い、玄関へ向かいます。今日はレイ兄様がいるので抜け穴は使わずに正面突破です。

 しばらくレイ兄様と他愛もない話をしながら歩いていると、噴水が見えてきました。
 そこには人集りがあり、中心を見るとアランがいました。

 アランの声は本当に綺麗です。男の子特有の、私よりも低い声なのにまだ変声期が来てないからなのか、男の子にしては高い声をしています。アランは12歳らしいので、そろそろ変声期になってもおかしくありません。この声が聞けなくなると思うと少し‥‥いや、かなり悲しいですがアレンなら声が低くなっても絶対いい声になると確信できるので、それを早く聴きたい気持ちもあります。

「~~♪~~~~♪」

 アランだけで歌っているところを見るのはレイ兄様は初めてなのか聴きいています。その横顔がとても新鮮で私は一人ニヨニヨしてしまいました。

「お、チャコじゃねーか!今日はにぃちゃんも一緒か!ってあれ!!!お前、後ろの!!」

 アランは歌い終わって、私を見つけると早速話しかけてくれました。

「アラン、こんにちは。そうなの!今日はレイ兄様も一緒だよ。あのね、やっとね、ギター買ってもらえたの!!昨日、私の誕生日でね、プレゼントにお父様が買ってくれたんだよ!だから今日は、アランにギター習いたくて来たの!」

「アラン、話すのは初めてだよね。チャコの兄のレイだ。宜しく」

「レイ、宜しくな。よかったなぁ~チャコ!これで二重奏が出来るな!!俺で良ければいっくらでも教えるぜ!」

「二重奏!!わぁやりたい!アラン、私いっぱい練習するからね!アランに追いつけるように頑張る!」

 二重奏!楽しそう!そしたら何の曲がいいかな?ギターだからね、やっぱり『ゆ◯』?あぁ、でも、『菅◯将◯』のあれもいいよなぁ。でもでも、王道に‥‥

 ぶつぶつと自分の思考に浸っている隣でレイ兄様とアランが話しています。


「昨日の夜、チャコが歌ってくれた時も思ったけど、ギター持って歌ってるのって凄くカッコいいね。さっきも、アランが弾いてるの見てカッコいいなぁって少し見惚れたよ。俺もやってみたいなぁって思った。」

「だろ~~?俺は歌っている時が一番かっこいいってよく言われるからな。男も魅了してしまうたぁ、俺も罪な男だね~。よし!じゃぁ、ここはレイの気持ちも汲んで、レイにもギター教えてやるよ!」

「え!?でも、僕はギター持ってないし‥‥」

「ここに来りゃあ、俺のを貸してやるよ。家での練習はチャコの借りればいいんじゃねーの?なぁ、チャコ」

「レイ兄様もギターやるの!?絶対似合う!!カッコいいよ!!一緒に練習しよ!そして、ピアノとギターとかで二重奏しよう!!」

 優しい優等生がギター弾くとかそんなギャップ!!!萌えでしか無いです!!!

「チャコ‥‥そうだね、二重奏しよう!」

 少し戸惑いつつも、ギターの魅力にはまったのか、レイ兄様も夢中でギターの練習を始めました。

 楽しい時間は本当にあっという間で、もうあたりはオレンジの空になっています。

「よし、今日はここまでかな。また、いつでも練習しに来いよ。」

「アラン、ありがとうね!次、来た時は新しい曲持ってくるね!」

「アラン、ありがとう。とても楽しかったよ。」

「新しい曲、楽しみにしてるわ!レイも、とんでもなくお前器用だし覚えも早くてビビったわ。次は何か歌おうぜ!じゃーなー」

「ばいばーい。」

 アランに手を振って別れると、レイ兄様は私の手を取って歩き始めました。
 ずっとギターを握っていたからなのか、少し手が暖かい気がします。

「レイ兄様、楽しかったですね。」

「あぁ、本当に。音楽はとても楽しいな。早くギターをマスターして、チャコと弾きたいよ。」

「本当に、楽しみです。今日、何度も兄様に見惚れましたよ。ギター持っているレイ兄様はとても楽しそうで、キラキラしてました。道行く人たちもみんなレイ兄様を見てましたよ。気付いてました?」

「それは・・・チャコのことを見ていたんだよ、僕じゃない。‥‥下手くそだったしね。」

 そりゃ、5歳の子供がギター練習してたら気になるでしょう。でも、広場にいた少し上の女の子たちはみんなレイ兄様を見て顔を真っ赤にしていました。確実に。

「初めてであそこまで弾けたら、とても凄いことですけど‥‥。」

「まだまだだよ。帰ってご飯食べたら少し練習に付き合ってくれるかい?」

 流石。なんでも完璧なレイ兄様は、努力の人です。とてもストイック。

「もちろん、いいですよ!」

「あぁ、じゃあ早く屋敷へ帰ろう」

「はいっ!」

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