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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。

8*人間1つや2つくらいは欠点があった方がいいと思います。

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それからレイ兄様は、時間少しでもがあると、ギターを弾いて練習していました。
あっという間に上達しているからビックリです。今度、ピアノとギターで二人で何か一緒に練習しようと言ったんですが‥‥

「弾くのはいいんだけど歌うのは‥‥僕、音痴だから恥ずかしい。チャコみたいに歌えないから‥‥」

「え、音痴なんですか?レイ兄様が!?いつも何をしても完璧なのに!?‥‥あ、でも確かにレイ兄様の歌声を聞いたことありませんね。あ、ねぇ!今、ちょうど二人きりですし、歌えるものでいいので少しだけ歌って見てくれませんか?」

「・・・僕は完璧なわけじゃないよ、ただ誤魔化すのが得意なだけで‥‥えぇ‥‥、いま?歌うの?」

ギターを持ちながら耳を真っ赤にして困っているレイ兄様はとても可愛く、とても受けに向いてるなと心の隅で思いました。

「はい!少しだけでいいので!」

「んん‥‥わかったよ。・・・本当に酷いからって引かないでよ?」

少しだけ思考した後、観念したように頷いてくれました。

「歌が下手なくらいで引くわけないじゃないですか!」

「うん‥‥。そうだよね‥‥うん。」

レイ兄様は少し戸惑った仕草を見せつつ、何度か深呼吸をして歌い出します。


・・・・・うん。結構、音痴だわ。
音が外れすぎてる。なんていうか、コ◯ン君もびっくりの音痴だわ。いや、仲間か。
どうしましょう。ここまで酷いと思いませんでした。大した事ないよって言ってあげたいけど、絶対に嘘だってバレてしまいます。

「‥‥だから言ったでしょう?僕は凄く音痴なんだ。だから、デュエットは出来ないんだよ。」

ポツリと零すように言われて、少し胸が痛みます。

「‥‥た、たしかに、上手いとは言えませんね。でも、練習次第だと思いますよ?私、レイ兄様と楽しく演奏したいんですもの。何か練習方法考えて見ますね。」

「チャコ‥‥。うん、ありがとう。」

レイ兄様は嬉しそうに笑ってくれました。一曲くらいどうにかなるはずです!壊滅的に音痴とは言え、普通に歌えれるようになればいいんですもの!人前でお金もらって歌うわけじゃないですからね、まずは練習方法を思い出さないと!

気合いを入れ直していると、レイ兄様が私の頭を優しく撫でてくれました。
・・・・頭を撫でられるのに弱いです。とても心地よく感じて、すぐ身を任せてしまいます。

「チャコは、本当に頭撫でられるのに弱いね。ふふ」

「そうですね、いい子いい子されるの好きです。安心します。」

素直に認めて笑うと、レイ兄様は手は撫でたままで天を仰ぎ出しました。

「‥‥チャコ、無闇に他の人に撫でさせたらダメだよ?」

「そんなのわかってますよ?大好きな人にしか私は触らせませんよ?」

「っ!」

今はピアノの椅子に座っているので兄様と私は同じくらいの目線です。レイ兄様は顔を真っ赤にして片手で口元を押さえて、何やらブツブツ言っていますがよく聞こえません。不思議に思って首をかしげると大きい溜息を吐かれました。私、何かしたでしょうか?普通に、知らない人に頭なんて撫でさせないですよね?普通のことを言っただけだと思うんですけど。



◇◆◇◆◇◆



あっという間に夏になりました。今月から、本格的に魔法の練習をするとして、家庭教師が付くことになりました。先生はお父様と仲のいい、古くからの友人だそうで、とてもフレンドリーに話してくれます。赤ちゃんの頃から会っている方なので私も緊張せずに授業を受けれています。

ハンクは初めての授業の時は緊張でほとんど何も話せなかったですが、今では先生大好きっ子になっています。

先生の名前は、ルーファス・ウォルト先生。ちょっと汚いローブを着てローブの中はシャツと長ズボンのシンプルなコーディネートです。先生曰く、ローブをすればあまり外から見えないからいいんだと言われました。ルーファス先生はとっても渋めのイケおじ様です。顎に生えた髭がとても似合います。こんなに渋いのにまだ25歳とは驚きでした。もっと小綺麗にすれば若く見えるんでしょうか?‥‥なんだか想像つきません。くふふ。

面白くて、優しくて。でも授業は厳しくて‥‥でも、根気強く教えてくれるので、とても頼りになるしとってもかっこいいです。こんな人がまだ独身とか‥‥世の女性は何をしているんでしょうか?多分、同じ年くらいだったら普通にルーファス先生に惚れていると思いますね、私は!

「チャコ、ハンク、そろそろ休憩にしよう。集中力が切れてきてるぞー」

「「はーい」」

かれこれ一時間ずっと目を閉じて自分の中の魔力の動きを感じるように、集中していると流石に疲れます。体を動かすよりも、魔力を動かす方が精神的に疲れるんです。特に私は魔法が苦手なので、自分の中の魔力を感じ取るのだけでも相当大変です。


「チャコ、どうだ?だいぶ自分の魔力を感じ取れるようになったか?」

「うーん。始めの時に比べたら感じやすくはなっているのかな?とは思います。でも、まだまだ時間がかかります‥‥。なにかコツはあるんですか?」

「あ、俺もそれ聞きたい!」

ハンクが隣でバッと手をあげました。

「コツ‥‥うーーん。魔力はどう使いたいか、何をしたいのかを明確に想像するのが一番やり易いな。例えば、あそこの石をこっちに持ってきたかったら石が浮くイメージとこっちの手に飛んできて掴むイメージをちゃんと作るんだ。‥‥ほら、こんな感じで。」

そうするとヒュンっという風を切る音がしました。ルーファス先生の手の中には先ほどの石があります。軽々とやっていてあまり難しく感じませんがこんなに自然に出来るのは凄いコトです。

「想像力が大事ってことですか‥‥」

想像力なら自信あるんですけどね。。試しに、私も石を動かしてみましょう。

「むむむ。あの石が‥‥浮く。んんんん。・・・・・はぁ。ダメみたいです‥‥」

ギュウッと眉を寄せて石を見つめましたが特に何もなりませんでした。
隣で同じようにやっているハンクもまだものを動かすのは出来ないようです。
もう一度、小さくハァと溜息をつくとパリンと小さい音がしました。

「‥‥え?」

再度さっきの石を見るとガラスが割れたように粉々に割れています。
魔力が暴発したってことですかね?でも、視線を外した後でしたし‥‥訳が分からなくてルーファス先生を見ると先生もビックリしたようで目をパチクリさせています。

「‥‥もしかしたらチャコは魔力が多すぎて逆に体が魔力に慣れすぎているから、動きを読み取るのが難しいのかもしれないな。一度、ちゃんとどのくらい魔力があるのかみてみよう。」

ルーファス先生の黒に近い深緑の瞳の奥がキランと光ったように感じたのは、気のせいでしょうか。先生は普段、王宮で魔法生物の研究のお仕事をしているらしいのですが、先生の目が研究対象を見つけた、というような目をしていて少し怖くなります。

「とりあえず、今日は魔力の動きを感じ取れたら自分の意思で魔力を動かしてみよう。はい、休憩終わり!」

そう言っていつものルーファス先生に戻りました。それを見て少しホッとします。
私は、先生に言われた通り魔力を自分の意思で動かす練習をして三時間の今日の授業は終わりました。最後には少しだけ動かせれるようにはなったものの、ハンクに負けてしまったので次こそは勝つために自主練習をちゃんとやらなきゃですね!

「魔力が多すぎて逆に読みづらい‥‥。うーん、それはどうしたらいいでしょう。」

先生の言葉を思いだして頭を捻っても、どうしたらこの状況を打破出来るのか分からなくて困ってしまいます。

‥‥そんな時は気分転換ですね。秘密基地に行きましょう。

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