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第1章 この度、伯爵令嬢になりました。
23*内緒の話をしたのです。
しおりを挟む次の日、私は久々に熱を出しました。
昨日、はしゃぎすぎたのかな‥‥。
そういえば、なんであんな場面が頭に流れて来たんだろう?それに、ナイフはどこから出て来たんだろう‥‥いつの間にか、ナイフは無くなっていてそれとなく荷馬車の中とか、下とかに落ちてないか見たけどなかったんですよね。
ルーファス先生に今度話してみようかな‥‥。何かわかるかもしれない。
とりあえず寝よう。あぁ、頭痛いです。
目を閉じると、すぐに眠気がきました。
体が熱い。うーん、こういう時、冷たくなるベットカバーが恋しくなります。あの、二◯リの◯クール。あれは、前世でヘビロテいました。便利なんですよね。ツルツルしてる方は冷たくて、冬になると裏のタオル地の方を使うんです。あれは、初めて買った時、感動しましたね。暑がりのお父さんには、二◯リじゃなくて、通販の冷却ジェルマット買ってあげたらとても喜んでくれました。本当、日本って便利道具多かったなぁ。痒いところに手が届くというか‥‥何かしらありましたもんね。‥‥こっちでも、作ってくれないかなぁ
そんな事を懐かしみながら寝ようとしていると、コンコンっと遠慮気味にドアを叩く音が聞こえます。
「‥‥はい」
カチャ
ゆっくりと、ドアが開く音がして、レイ兄様が入ってきました。
「チャコ、具合はどう?少しでも、食事、食べれるかな?」
「少しだけ良くなったような気がします。‥‥多分、少しなら」
「そうか、良かった。」
レイ兄様は、ベットテーブルを持ってきてくれて、食べやすいようにセッティングしてくれました。‥‥私の好きなクラムチャウダーです。うれしい。
「レイ兄様、ありがとうございます。」
「ううん、早く良くなってね。本当に、昨日は父上に話を聞いてビックリしたよ。何でまた、一人で解決しようとするのか‥‥本当に、危ないことばかりして‥‥」
「うう。ごめんなさい‥‥」
「いいよ、父上にこっ酷く叱られたのは知っているから。‥‥チャコ、偉かったね。」
「‥‥え?」
レイ兄様は、優しく私の頭を撫でてくれます。
「だって、困ってた人を助けたんでしょう?確かに、やり方は危なっかしいけど、チャコがしたことは間違ってないから。チャコも怖かっただろうに。偉かった。僕は、兄として、誇りに思うよ。」
怒られるとは思っても、まさか褒められるとは思いませんでした。
「っ!チャコ、泣いてるの?どっか痛い?どうしたの?」
レイ兄様の言葉で、ポロポロと涙が出ているのに気付きました。。
「いや、違うんです。嬉しいんです。まさか‥‥誉められるとは‥‥うう。」
みんなには、二度とやめてくれ。‥‥としか言われませんでした。
確かに、私の事を心から案じての言葉だと分かっています。でも、私は肯定されたかったんだなってレイ兄様の言葉で気付きました。
レイ兄様が困ったように笑って、ハンカチで涙を拭ってくれるのに、しばらく止まりませんでした。泣いている間、ずっと手を握ってくれたレイ兄様の優しさがとても染み渡りました。
「‥‥レイ兄様、ありがとうございます、落ち着きました。へへ。泣いちゃってごめんなさい。」
「謝ることなんかないよ。ほら、スープ冷めちゃうよ。ほら、アーン」
自然に‥‥当たり前のようにこの子は『アーン』してきた‥‥だと!?
レイ兄様は、差し出されたスプーンを凝視してしまった私に気付いて慌ててスプーンを引っ込めました。
「ごめん、こんなことしなくても、自分で食べれたよね。」
赤くなって照れつつも、ちょっと残念そうにされて、私は決心しました。
「いいえ、レイ兄様、食べさせてくださいませ!」
「え、いや、いいよ?無理しなくて‥‥」
「無理なんかしてませんよ?侍女とお母様以外にしてくれる人がいると思わなかったので、ビックリしただけです。ふふ。レイ兄様、アーン」
今度は逆に、レイ兄様が照れてしまいました。
でも、スープをまたスプーンに救って差し出してくれます。
「ふふ。美味しいです。」
「‥‥よかった。」
レイ兄様の照れ顔、まじで、可愛いです。耳まで真っ赤。うわぁ・・
「ハンクがちっちゃい頃は、風邪ひいたりしたら僕が食べさせてあげてたんだ。その頃の癖がでちゃったよ。」
「レイ兄様は、とても面倒見がいいですからね。レイ兄様みたいなお兄ちゃんがいて、私は幸せです。」
「‥‥ありがとう。」
その後も、レイ兄様が甲斐甲斐しく看病してくれて、すぐに体調はよくなりました。
◇◆◇◆◇◆
今日は、待ちに待った、魔法の授業の日です。
いつも通り、授業を受けて、帰り際にルーファス先生に呼び止めました。
「先生、ちょっと、不思議な体験をしまして‥‥お時間ありますか?お茶でも飲みながらでもお話ししたいんですけど‥‥」
「ほぅ、不思議な体験?それは面白そうだ。時間は大丈夫だよ。」
先生の了承を得て、先生に応接室に来てもらって二人でお茶を飲みます。
「で?不思議な体験、とは?」
「あ、はい。あのですね、その場になかったものが、急に出て来たり、聞こえるはずない、見えるはずないものが頭の中に勝手に入って来たりするのって、何かの魔法なんでしょうか?」
「‥‥よく話がつかめないな。どんな状況で、どんな風にそのようになったのか詳しく話してみなさい。」
先生に言われ、先日の話をなるべく詳しく話しました。
といっても、私も訳がわからないうちにそのようになったので先生の納得できる話になったのかは謎ですけど‥‥。
「ふむ。ナイフは、想像魔法が発動したのかもな‥‥」
「想像魔法‥‥ですか。」
「チャコ、いまは、ナイフは出せるのか?」
「あ、はい。‥‥ほら。できるようになりました。」
ベットの上で過ごさないといけなくて暇でやってみたら、ナイフの形を想像しただけでパッと出せるようになりました。いらなくなると、スッと消えます。出したナイフをルーファス先生に渡しました。
「ほう。すごいな。呪文もいらないのか。‥‥たしかに、これはチャコの魔力で出来たナイフみたいだな。」
「はい。これって、なんなんでしょうか?便利だからいいんですけど、いきなり出来たのでびっくりして‥‥」
「想像魔術っていうのは、一般的には知られていない古代の魔法だ。当時でも、出来る人も少なく、多分、今出来るのはチャコくらいなんじゃないかと思う。」
「そう、なんですか?」
「映像が流れて来たっていうのは、多分、チャコがその子の事を探していて、無意識に自分の魔力を広げてたんじゃないかと思う。んで、チャコの魔力が男の子を見つけた時の映像が流れて来たんだと思う。‥‥でも、まだ6歳のチャコにそこまでの魔力があるのが信じられん。チャコの魔力は、底なし沼のようだな。」
「私、何か変なんですか?いきなり色んなことが起こって少し混乱してます‥‥。」
「変なんかじゃないぞ。確かに、魔力が多すぎると扱いが大変になるし、それだけ精神力が必要になる。でも、誇れることであって落ち込むことなんかない。魔力や、魔法なんかの事は、俺に聞け。その為の、先生なんだから。多分、チャコの体の中で、魔力が成長しているんだ。これから、どんどんやれることも多くなるぞ。自分のやれることが増えたら、絶対、楽しくなるぞ?」
「っ!」
そうですよね。多分、楽しいことばかりじゃないのかもしれないですが‥‥でも、楽しまないと損ですよね!!
「あ、あと、チャコ。これから凄く、忙しくなるからな。」
「え、何かあるんですか?」
「古代の魔法を使えるものが出て来た。それは、何処から情報が漏れるかわからない。気を付けていても、必ず、遅かれ早かれ暴かれる。その時、自分で自分を守れるようにしておかないとならない。この力が欲しいのは、シェール王国だけじゃない。世界中の国が欲しがる力だ。下手したら、攫われて奴隷のようにその力を使おうという奴らが出て来るかもしれない。だから、絶対に信用出来るやつだけにしか言ってはならないぞ?家族にも、言わないほうがいいくらいだからな。」
「‥‥」
どうしよう、軍事利用されちゃうってこと!?安易に話すんじゃなかった‥‥誰にも言っちゃいけないことだったんだ‥‥。
「そんな不安そうな顔をするな。俺は誰にも話さないよ。俺は、チャコを守る側でいると、約束する。」
ポンっと大きな手を頭に乗せてルーファス先生が安心させるようにニッコリと笑ってくれます。ホッとして、ルーファス先生に1つ深呼吸して、真剣に先生を見据えます。
「先生‥‥私、これから、どうしたらいいんでしょうか。」
「そうだな。万が一、この力がある事を悪いやつに知られたときのために、自分の身は自分で守れるようにならないとだな。あと、」
「あと?」
「そんなに気張らず、いつも通り過ごせばいいんじゃないか?」
「へ?」
さも、もっと無理難題を言われると思っって身構えていたので、意外な答えに間の抜けた声が出てしまいました。
「何だその間抜けな顔は。」
「いや、意外だったなって‥‥何かしなきゃと思って身構えていたので‥‥」
「そうは言っても、まだ、自分の意思で使えるものじゃないんだろう?確かに、出来るなら自分の意思で使えるようになるために、練習しておいた方がいいとは思う。が、今はどんな物かも、よくわからない状態だからな。まぁ、俺の方でも、情報を集めてみるよ。だからチャコは、普通に過ごしてればいい。まぁ、剣術か武術か‥‥あるいは両方か‥‥クロードには俺から何かさせるように言ってみるよ。魔法の方でも、攻撃魔法は早いと思ってたが、まぁ‥‥そろそろ教えてもいいかもしれんな。」
「‥‥色々と、ありがとうございます。」
「いいんだよ。ただ‥‥」
「ただ?」
「今度、お前を研究させてくれな!」
そうルーファス先生はニッと笑っておちゃらけて‥‥いや、この人、目が本気です。そうですね、この前も魔力調べたいって言ってましたもんね。
「まぁ、私の為にもなるし‥‥その時は、よろしくお願いします。」
「おう!‥‥じゃ、今日はこの辺で帰るかな。」
「遅くまですみませんでした。ありがとうございました!」
先生に挨拶をすると、先生は笑って車に乗って帰って行きました。
・・・なんだか、私、チート転生してたって事なのかな?でも、なんか、物騒な事言われたし‥‥私は平穏に過ごしたいからこんなチート能力いらなかったです‥‥いや、想像魔法とか便利だけど‥‥
どうせならもっと派手な、天候を操れるとか、可愛い精霊と友達になるとか、それか‥‥あ、あれ!背中に羽が生えて空を飛べるとか!!・・・そう思った瞬間、背中が熱くなりました。
「え?え?あ、あっついっ!!」
思わず蹲ってしまいます。背中からパァっと光が出たと思ったら、熱かったのが嘘みたいに引いて行きました。
「え、な、なに?どゆこと?」
ソッと、背中を触るとフワリと白い羽がヒラリと落ちてきます。
・・・・んんん?????な?????
緊急事態に、急いで自室まで走ります。いや、これ、飛んでる!!??低空飛行で、飛んでる!!!!!???
自室のドアノブを掴み、力一杯開けて急いで部屋に入ります。
ガチャ バタン ガチャ
一応、鍵まで閉めて、恐る恐る姿見の前まで来ました。
「・・・う、嘘。」
姿見に映った私の背中には、とても綺麗な、立派な羽が生えてました。
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