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第2章この度、学生になりました。
1*お家に帰るのです。
しおりを挟む「お嬢、そろそろ出発の時間ですよ。」
私が自室でアルバムを見て居たらジンが声をかけてきました。
ジンは、この五年の間に随分と背がグンと伸びて、長かった髪をサッパリと切って、とても男らしくなってしまいました。ショタの成長‥‥嬉しいけど、寂しいです。
「‥‥」
じーっと、ジンの事を観察します。
「な、なんですか?なんか顔についてます?」
少しだけ恥ずかしそうにするのは今も変わらずです。もう慣れてもいいのに。でも、照れ顔可愛いです。うん、ご馳走様です。
「んーん。昔はジンは可愛かったなぁって思ってただけ~」
「えぇ??いまは、ダメですか?」
「いまは、とてもカッコいいよ~。普通にイケメン。でもね、見て!」
それは、前に撮った女装姿の人の写真です。うん、ほんと可愛かったです。
いまやったらどうかな~結構肩幅出ちゃったし、声低いし‥‥以外と男顔だったからなぁ。
なんて、まじまじと見比べると、やっぱり月日を感じますね。ジンが男らしくなってる‥‥
「‥‥はぁ。」
「‥‥お嬢、流石に失礼ですよ?」
ブッスーと、目に見えて拗ねたジンに笑いが出てきます。ふふ。
ちょっとした表情は昔と変わらないので、ついついからかいたくなってしまうんですよね。
「ごめんごめん。今のジンも好きよ。」
「なら良いですけど。あ、本当にもう行かないと、宿に着くのが遅くなってしまいます。」
「あ、本当だ。行きましょ。」
カバンを持って自室を出ました。
そう、今日は遂に、王都に帰る日です。
「お爺様、また遊びにきますね。」
「チャコーーっ!!絶対だぞ!!お爺ちゃん、寂しくて寂しくて‥‥」
「ふふ。私も寂しいです。でも、お爺様はもう、1人じゃないでしょう?」
クスクスと笑って、お爺様の隣にいる師匠をチラッと見ます。
うっ!!と、師匠もお爺様も年甲斐もなく赤くなっています。うふふ。
まさかですね、師匠とお爺様が恋人になるなんて。でも、意外と2人はお似合いでした。
師匠と、ロンくんはこのまま領地で暮らすことになっています。
ロンくんにも、下町に彼女ができて今は幸せ真っ只中なんです。うふふ
「チャコ、そのニヤニヤを今すぐやめないと、今からまたあんたを至極よ。」
ギランと師匠に睨まれて、急いで表情を引き締めました。
「ゴホン。とりあえず、本当に気をつけて帰るんだぞ?」
「ふふ。ちゃんと気をつけます。まぁ、ジンも居るし、私もこの6年で随分と成長しましたから、安心してくださいませ。」
「でもさー‥‥2人で帰る事なかったんじゃないのか?三日も2人きりとか‥‥」
「ジンも、運転に慣れてきましたし、大丈夫ですよ。ちゃんと休憩取るようにしますから。ね、ジン?」
「はい。俺が、お嬢を命に代えても王都の屋敷までちゃんと送り届けます。安心してください。」
「絶対だぞ。居眠り運転なんかしたら‥‥」
「大丈夫ですよ。居眠りなんかしたら、車から飛び降りて私だけで帰りますから。ふふ」
「大丈夫です。お嬢といて眠くなることなんかあり得ませんから。」
「ん?なんか失礼ね。私の隣じゃ安心して寝れないって言うわけ?」
ムッと眉をしかめた顔でジンを睨むと、ジンは力なく笑っています。
「安心できないと言うより、車ん中でお嬢がめちゃくちゃ話しかけてくるから寝る暇ないんじゃないですか。」
「そっかなぁ?」
「いつも、そーですよ?」
・・・うーん、そんなに話しかけてたっけ?
この世界では、車の運転は15歳の成人から免許が取れます。ジンが15歳になってすぐに、免許を取ってもらいました。そのおかげで、出かける範囲が広がってとても楽チンになりました。
「ま、まぁまぁ。安全運転で帰りなさいよ。」
私たちの言い合いを見ていたお爺様が声をかけてきます。
「チャコ、落ち着いたら手紙書いてね。俺も書くから。いつか、イゼルとそっちに遊びに行くからその時は宜しくね。」
ロンくんが手を差し出してきました。私はその手を握って、大きく頷きます。
「もちろん、書くね!イゼルとお幸せにっ!結婚式には行くから、絶対呼んでよ?」
「チャコ気が早いよ‥‥。でも、頑張る。‥‥色々と。」
「ロン、イゼルに振られたら、いつでもお嬢の護衛に戻って良いって旦那様から伺ってるからな?連絡、待ってるぞ?」
ニヤニヤしながらジンがロンくんに突っかかります。
「ちょっ!!縁起でもないこと言わないでよ!!」
「ははは。」
ジンとロンくんは、年が近いと言う事で、よく手合わせをしていました。‥‥2人が手合わせしてるのを見てるのは本当、眼福です。可愛い顔した2人が組み合う‥‥イケメンの絡み合い‥‥。ジンがロンくんを羽交い締めにしてたり、ストレッチを2人でしているところは‥‥うふふ。
2人の絡みを最初見た時は、鼻血出るかと思いましたよ。片方が勝ったら片方を立たせる為に手を差し出したり、熱い友情がそこにはありました。うん、尊い。
「ロンくんとイゼルなら大丈夫よ。本当ジンは、ロンくんが好きねぇ~」
ニヤニヤと頬に手を当てながら茶化すとジンは心外とばかりにショックを受けたような顔をしますが、多分本当にロンくんのことは好きですね。うん。
「ほら、本当に行かないとあっという間に日が暮れちまうよ。ほら行った、行った。」
呆れたような師匠が私とジンを車に押し込みます。
うん、確かに切りがないですね。ここは大人しく師匠に従いましょう。
「では、お爺様、師匠、ロンくん、みんな、長い間お世話になりました。行ってきます!」
笑顔で、お別れを言っていよいよ出発です。
◇◆◇◆◇◆
「チャコ!おかえり!!」
「わぁ!?」
何年かぶりかの王都の家に着いて玄関を開けた瞬間、誰かが抱きついてきました。え、誰!?
「っ!?」
ギュウッと力強く押し付けられた胸板を少し押して顔を確認します。
綺麗な青紫の髪に、海のように真っ青な瞳‥‥クリッと大きくて彫りの深い顔立ち‥‥
「え、ジョー!?」
「うん。チャコ、おかえり。」
再度、ギュウッと強く抱きしめられて顔がジョーの胸板に埋まります。く、苦しい‥‥
「ちょ、ジョー!苦しいっ!」
「あ、ごめん。」
パッと抱きしめる腕の力を緩めてくれました。
ジョーは、愛おしい物を触るように、次は優しくふんわりと抱きしめてくれます。
「‥‥ただいま、ジョー。」
「あー会いたかったぁ。本物のチャコだ‥‥。」
ジョーは、本当に毎年私の誕生日に領地へ来てお祝いをしてくれました。しかし、去年はどうしても都合がつかず、私たちは2年ぶりの再会です。2年での成長、えげつない!2年前はまだ、ジョーは男の子っていうような幼い印象でしたが、この2年でガラッと変わっていました。身長もですが、顔つきも、雰囲気も、全部、青年です!!男って感じです!!成長期怖い!!何より、声変わり中なのか、少し掠れてる声が‥‥良い。来年にはもっと声が低くなるのかぁ。うわぁ。凄いな、成長期。
私からは、写真を撮って良く手紙と一緒に送っていたけど、ジョーからは写真は撮れないので私は全くの初見なのです。うわーーカッコいい!!生前の、推しに少し似ています。うわーうわー!!
抱きしめられた時の胸板も厚くて、腹筋もしっかり硬かったのは確認済みです。うわぁ~
語彙力なくなるーー。テンションあがるー。
「お嬢、ジョー様。その辺にしてください。」
ベリッというように、ジョーと私を引き剥がしたジンは私の肩に手をかけて掴んでいます。
そんなジンを、ジョーは鋭く睨みました。あら、ジョー怒っちゃったかしら?
「ジンこそ、その手をどけろ。俺のチャコに気安く触るな。」
「お言葉ながら、お嬢はジョー様の婚約者でも何でもありません。ジョー様と私だったら私の方が常にお嬢と一緒にいる分、お嬢に近い存在かと。」
「‥‥はぁ?」
なにやら不穏な空気です。なぜジンも、そんなに怒ってんの!?ジョーはいつものことじゃない!
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。それに、チャコはどっちのものでもないからね。ジンもジョーもいい歳なんだから、もう少し、適切な接し方をしてくれないかな?」
にこやかに、でも有無を言わせないような冷たい声が玄関に響きました。
「レイ兄様!」
「チャコ、おかえり。」
レイ兄様は一緒に領地に行って、数年は一緒にいましたが2年前に学園が始まるということで先に帰っていました。久々に見たレイ兄様は、スラッと背が伸びて、優しげな眼差しはそのままにとても綺麗な顔をしています。幼さが抜けて、ちょっと大人びたように感じます。
レイ兄様は、私の手を取ると手の甲にチュッと一つキスを落としました。
ボボッというように顔が熱くなったのがわかりました。す、す、スマート!!
にこやかに上目遣いでチラッと見る仕草、か、カッコいい‥‥。
その後の、笑顔よ。さっきの冷気はどこ行った!?くらいの暖かい笑顔よ‥‥
「た、ただいま戻りました‥‥。」
そんな私の反応をジョーとジンが面白くなさそうに見てます。うん、でも、仕方ないわ。色気が‥‥うん。仕方ないわ。(2回目)
「チャコ、疲れたでしょ?ゆっくりお話ししよう?」
ジョーが後ろから手を繋いで甘えてきました。体は大きくなったのにやってる事は昔と変わりません。大型犬みたいで、可愛いです。
「うん。ジョー、お夕飯までいれるの?」
「父上も、夕食の時間にはこっちに来るって言ってたから、食べて帰るよ。」
「ふふ。グラムさんにも会えるんだ!やった!じゃあ、時間あるね。私、着替えてからサロンに行くから、先に行っててくれる?」
「わかったよ。」
お父様やお母様、みんなにも帰って来た挨拶をして、着替えるために自室へ行きます。
久々の自室は、きちんと整えられていました。
「ふふ。洋服までちゃんと揃えられてる。」
服は向こうで使っていたのもあるのに、何着も新しい服がクローゼットに並んでいました。
クローゼットの中のワンピースを一つ手にとって、着替えてからジョーの待つサロンへ急ぎます。
サロンではもう、ジョーとジンがいました。
ジンにお茶を入れてもらって、ジョーの座っているソファーに腰掛けるとジョーがくっついて来ました。‥‥体が大きくなっても変わってない所、ほんと可愛い。癒されます。
「来週から、学園が始まるけどチャコは準備してる?」
「うん、一応ね。制服も届いたし、必要な物も揃えたし、書類関係も大丈夫なはだよー。」
「クラス、どうなるんだろうね?あーチャコと一緒のクラスになれないかなぁ」
「ふふ。本当にね、少しでも知り合いがいるクラスがいいなぁ。」
「でも、チャコなら平気でしょ?」
「うーーん。どうだろう。大丈夫だといいんだけど。」
「お嬢は、ちゃんと勉強も頑張っていましたし、大丈夫ですよ!」
うん、確かにテスト自体は大丈夫だと思うんです。問題はクラス。
本当は、10歳で社交が始まる貴族社会で、12歳の私は今まで社交をしたことがないのです。
よって、みんなよりも圧倒的に知り合いが少ないのです。それが不安!!
・・・まぁ、今更言っても仕方がない事ですね。
来週、学園へ行ってみないと、どうにもなりませんしね。
学園には、カート兄様もいるし、レイ兄様もいるし、ハンクも一緒だし、ジョーやリリも一緒ですから、なんとかなるでしょう。
とにかく、学園生活を楽しみたいと思います。
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