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第2章この度、学生になりました。
4*【ディナン目線】その2
しおりを挟む【ディナン目線】
それから、私達はこの6年の間にあった事をいっぱい話した。‥‥まぁ、話し足りなかったが。チャコが、向こうでも楽しく過ごせていたということは分かった。それに、人誑しは健在だということも。
何故、連絡石で連絡が取れなかったのかはよく分からないが、確かに、お互いにその場で連絡を送っても反応しなかった。何か、細工をされたのか?誰に?いつ?いや、幼い時だからいつでも出来るか。くそ。何故もっとあの時調べなかったんだ。
その場で、お互いに新しく連絡石を作った。新しい方は問題なく連絡が取れる様だ。やはり、結晶石に細工をされているということなんだろう。‥‥帰ったら壊そう。いや、新しいのを隠したほうがいいかもしれないな。少し邪魔だが、フェイクで持っていよう。
午後の授業が終わる鐘が鳴り、チャコが焦り出す。
「あ、やばい!ジンに怒られる!!」
・・・ジン?
「ごめん、ちょっと、連絡させて。」
「あぁ、構わない。」
チャコは少し焦った様に『ジン』に連絡を入れる。
「ごめんて!ほんと、悪かったって思ってます。うん。うん。え、居るの!?何処に?うわぁ、来てんならむしろジンが連絡‥‥いいえ、何でもありません。わかったよー‥‥今から向かうね。はい、はーい。」
気の置けない仲になって居るのだろう。とても親しそうに話すチャコを見て、少しだけ寂しくなる。‥‥私も、6年も間が開いていなかったらこんな風に話せたのだろうか。
「ディナン、ごめんね。侍従が迎えに来てくれて居るみたいだからもう行かなくちゃ。」
私よりも、侍従を優先するのか‥‥そんな心に儚い影が広がって行く。
いや、思っても仕方ない事だ。チャコからジンの話を少し聞いただけで、チャコがその侍従を大切にして居るのがわかるし、侍従もチャコを大切にして居るというのが伝わって来た。
・・・私には入る隙間などない。
そう思うと、胸が締め付けられた。
「そうなのか。じゃあ、また明日だな。」
「うん。また明日ね。」
そう言って、チャコが去って行く背中を見えなくなるまで見ていた。
チャコが、何度もこっちを振り返って手を振ってくれたのがとても嬉しかった。
「‥‥アルバート、チャコの手紙を隠した奴がいる。早急に見つけ出せ。」
『え!?‥‥はい、必ず。』
その場でアルバートに連絡を入れる。
アルバートは一瞬驚いた様だが、ちゃんと察したのか真剣な声が帰って来た。
うん、これで少しはわかるんじゃないだろうか。
何故、もっと早くに指示しなかったのか。なんて私は愚かなのか。
私は、帰るためにまた生徒会室に荷物を取りに行った。
「あれ、ディナン殿下まだ帰ってなかったんですね。」
柔らかだが、何処か冷たい声が部屋に響く。
「あぁ。学園内を少し散歩してたんだ。何か問題でも?‥‥フィン。」
フィン・イルハウェル。筆頭公爵家適男の、リリの兄だ。
いつも、人好きのする笑顔を貼り付けてとても食えない男だ。
「少し‥‥ねぇ。いや、何も問題なんかありませんよ。お気になさらず。」
本当に、何を考えているのかわからない奴だ。‥‥なんだかいけ好かない。
「私はもう帰るが‥‥なにか用事か?」
「いえ、殿下がまだ帰られていないとお聞きしたので様子を見に寄っただけです。」
「そうか。では、失礼する。」
「はい。お気をつけて。」
フィンは、綺麗に頭を下げた。
その日の夜。
久々に‥‥チャコに連絡してみようか‥‥しかし、仲直りしていきなりかけられたらそれこそ迷惑か?いや、でも、まだ話したいし‥‥いや、明日も会えるんだから我慢ずるべきか?いや、と言うよりもジョーが連絡している可能性が‥‥いや、しているな。絶対。寝る直前までしているな。絶対。ジョーはそう言う奴だ。この、離れていた6年を全力で埋めようとしているに決まっている。その中で、私が連絡したらそれこそ、チャコを困らせるんじゃないか?
・・・うん。今日は譲ろう。しかし明日は、ジョーよりも早く学園へ行ってチャコの隣に座ろう。
その為に、私はもう寝よう。うん。そうしよう。
ソワソワと、ソファーの周りを歩いていたのをやめてベッドの中へ潜る。
『私は、ディナンが手紙くれなくっても定期的に送ってたし、王都に帰って来た時は、ずっと連絡取ってた。会いたくて、何度も連絡してた。でも、無視したのはディナンじゃない!パッタリと手紙も、電話も取ってくれなくなったのはそっちでしょ?なのに、なんで私が悪いみたいになってるの?それは違くない?』
チャコも、私に会いたがっていてくれたのか。
何度も連絡したと言っていたな。その中には写真もあったのだろうか‥‥。
今度、ジョーに昔の写真を見してもらおう。
‥‥チャコ、本気で怒っても可愛かったな‥‥。
天井を見ながら今日のチャコを思い返す。
ビクビクしたり、泣きそうになったり、不敵な笑みをしていたり。
今でも、チャコは百面相だった。綺麗だと思っていたのに、とても可愛くて‥‥
・・・・・結構、育っていたな。
久しぶりに触った髪は、相変わらず柔らかくて
頬っぺたはフニフニしているようだった。
唇も、何も塗っていない筈なのにプルンとしてて‥‥
唇‥‥
「・・・・・・あ”ぁぁぁぁ。寝れない。」
ボスンっと、枕に顔を埋めた。
たった1日一緒にいただけで、こんなにまた惹かれるなんて。
これから私は、どうしたらいいんだ。
「早く、明日になってくれ‥‥。」
会いたい。
もう、それしか思えなかった。
◇◆◇◆◇◆
「ディナン。おはよう。」
「あぁ、ジョー‥‥おはよう。」
「え”、どしたの?そんなに疲れた顔して」
「いや、昨日は寝つきが悪くてな。別に大した事じゃない。」
そう。昨日はあれから色々と考えてしまって寝付けなかった。
色々って‥‥うん。色々は、色々だ。
「‥‥ジョー、今日はチャコの隣は私が座るからな。」
「は?そんなのありえないってわかってるでしょ?」
「ず、狡いぞ!昨日も座っただろう!?」
「ディナンが、チャコと仲直りしたからって席を譲るわけないでしょ?」
「仲直りなんて‥‥そもそも、喧嘩してない。」
「はは。確かにね。ディナンが勝手に怒ってただけだよね~~」
「う”っ。」
「チャコの事、信用できないんだったら隣に座る資格ないから、俺が座る。」
「信用してないわけないだろう!?ジョーが私の立場だったらどうしたんだ!」
「え?速攻会いに行って話する。」
「あ”‥‥が‥‥。そ、それが出来たらどんなに良かったか‥‥私の立場だと簡単には出来ないんだ!!」
「わかってるよ?でも、俺なら、会いに行く。それ一択。」
「‥‥くっ」
ごもっともだ。ジョーなら、例え王子という立場だとしても、何を捨ててもチャコに会いに行きそうだ‥‥。くっ。何も言い返せん。
「まぁ、良かったね。仲直りできて。」
「‥‥あぁ。」
「チャコも、喜んでたよ。」
「‥‥そうか。」
ほっこりと胸が暖かくなった。
「あ、あと、王宮での噂、チャコに言っちゃったからね。」
「ん?噂?」
「ほら、前に聞いたじゃん。リリと結婚するのかってそれ。」
「あぁ、あれ‥‥‥‥はぁ!?お、おま‥‥ちょ、はぁ!!??」
「ふふ。言葉になってないけど。」
ジョーはいたずらな笑みを浮かべてなんでも無いように笑った。
いや、いや、ふざけんなよ!言うか!?普通、言うか!?
口をパクパクさせて、言いたい言葉が出てこない。でも、ジョーは察したのかまた笑った。
「大丈夫。チャコ、嬉しがってたよ!?『大好きな二人が結婚したら嬉しい』って。」
こ、こいつ‥‥追い討ちかけてきやがった‥‥‥‥!
有る事無い事・・いや、ある事なんだけど、でも、ダメじゃん!私の気持ち知ってていうのは、反則じゃないのか!?
ジョーは、珍しくツボに入ったのかくつくつと笑っている。
「~~っ!!ジョー!!お前なぁ!!!」
「ひゃ~~ディナン殿下、こわぁい!」
人をおちょくる様に、ジョーが駆けて行った。それを追いかけたかったが、生徒たちの目が気になり私は我慢して優雅に歩くことにする。ジョーはその行動もお見通しのようで、ニヤッと笑ったのが見えた。
あ~~絶対、チャコの隣は座れないみたいだ。はぁ。
思わず、天を仰ぐとチャコがこっちを見ているのが見える。
クスクスと控えめに笑っている。その隣には、リリがいた。
何かを話して、無邪気に笑っているチャコがとても眩しくて目を細めてしまう。
あぁあ。今日は斜めにしか座れなさそうだ。
そんなことを思いながら、他の生徒に変に思われないように背筋を伸ばして歩いた。
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