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第2章この度、学生になりました。
13*妄想は楽しいのです。
しおりを挟む次の月曜日、学園に行くと教室の入り口にリリのお兄さんが立っていました。
いつも通り、少し早めに来ているので教室には誰もいないみたいです。
「おはよう、チャコちゃん。」
ニッコリ笑顔で挨拶をしてくれました。
推しのキラキラ声で挨拶+名前呼び、本当、ありがとうございますっ!!
今日も1日、頑張れそうです!!!
・・・心の中で土下座でお礼を言いつつ現実ではなんでもないように驚いて見せました。うん。その辺の女優よりも演技上手いんじゃないでしょうか?
「お、おはようございます。えと、リリはまだ来てないようですが‥‥」
「うん。まだ家にいたからもう少し後に来るんじゃないかな~今日は、『2人』で話したくて。ごめんね、迷惑だったかな?」
「っ!全然!迷惑だなんて思っていません。‥‥何か、御用でしたか?」
「‥‥立ち話もなんだし、ちょっと、中庭に行かない?朝の中庭もとっても気持ちいいんだ。」
「はい、是非お供させてください。」
リリのお兄さんにスッと手を差し出され、自然と手を乗せました。
スマートにエスコートされて中庭まで行きます。
「はは。」
いきなりお兄さんが笑い出したので何かと思って上を見上げると、お兄さんと目が合いました。
「いや、こんな所を殿下やレイに見られたら俺は半殺しされてしまいそうだなって思って。」
「え?レイ兄様はわかりますけど‥‥なんで、ディナンですか?ディナンはそんなことしないと思いますけど‥‥」
「‥‥まじか、チャコちゃん。」
「え?」
「いや、なんでもないよ‥‥。」
「ふふ。変なお兄さんですね。」
挙動不審なリリのお兄さんが可笑しくて、笑えて来ます。
「あ~~‥‥殿下の気持ちが少しわかったわ。」
「??」
「いや‥‥あ、あそこに座ろうか。」
「はい。」
そして、案内されたのは、カラフルなお花がいっぱい咲いているのを見渡せる絵本の中の一コマのような東屋でした。
「ふわ~‥‥とても綺麗ですね、こんな場所があるなんて知りませんでした。」
「喜んでくれて良かった。ここはね、生徒会のメンバーしか来れない場所なんだ。だからとても静かだし‥‥秘密の話をするにはもってこいの場所なんだよ。」
「秘密の‥‥場所、ですか。」
「秘密の話ね。まぁ、俺らの秘密の場所にしても良いけど?」
「っ!!それは、ご遠慮させていただきますっ!!」
「えー?つれないなぁ~~」
お兄さんは楽しそうに笑いながら座った後でも手を離してくれません。うん、こんな所を誰かに見られたら誤解されそうです。
「それで、お兄さんは‥‥」
「ん~~その、『お兄さん』ってやめない?フィンでいいよ。リリの友達だしね。」
「‥‥フィン様は、どうして私をここに?」
「ん?わからない?」
「さっぱり、全然分かりません。」
きっぱりと言うと、少し目を見開いたあと、楽しそうにまたフィン様は目を細めて笑いました。
「まぁ、いいや。ただ、チャコちゃんが俺と同じなのか知りたかっただけ。」
「同じ、とは?」
「『日本人だった頃の記憶』があるか知りたいって事。」
様子を伺うように、フィン様は少し笑みを深めて聞いて来ました。
「あぁ、その事ですか。ありますよ。前世の記憶。」
リリの家に行った夜に、お父様と相談しておいたのです。
お父様は、言いたいなら言えばいい。って言ってくれました。私の判断に任せると。
フィン様は、なんだか確信があるようですし、変に隠すよりも言ってスッキリした方が私に構うことはしないようになるんじゃないかと思ってぶっちゃけて見ました。
フィン様は、私の反応が予想外だったのか鳩が豆鉄砲に当たったような顔をしています。
「‥‥ふ、普通に言うんだね、びっくりした。」
「だって、フィン様は確信があって聞いて来たのでしょう?隠すことでも無いですし。別に、フィン様に知られてても構いません。」
「そうかな?もし、俺が君の記憶を悪用しようって奴だったらどうするのさ?」
「フィン様はそんな事しませんよ。」
「っ!なんで、そう言い切れるの?」
「だって、フィン様も同じ記憶があるんでしょう?悪用する意味なく無いですか?」
「‥‥確かに。」
「ね?そんな回りくどい事する意味無いですよ。私よりもずっとフィン様の方が頭いいんですから!」
「く‥‥ふふ。ははっは」
なんか、いきなり笑い出してしまいました。
まぁ、黒い笑いでは無いみたいなのでそっとしておきましょう。
「ねぇ、君の事教えてよ。」
一通り笑ったかと思ったらいきなり言い出しました。
「え?」
「だから、君の前世は男だった?女だった?どんな子だった?あ、どんな仕事してた?何が好きだった?あ、趣味とかあった?あとね、」
「えぇ~~いきなり質問攻めですね?‥‥ふふ」
フィン様が、堰を切ったように話しはじめるもんだからおかしくなって笑ってしまいました。
「だって、いないじゃん?こんな事話せるの。嬉しく無い?」
「確かに、誰にもわかってもらえなかった事が話せるのはとても嬉しいです。」
「だからさ、まずは自己紹介しよう!」
「ふふ。はい。」
「じゃあ、俺からね。ゴホン。改めて、俺は『櫻井祐介』。死んだ時は、28歳だった。死因は、あまり覚えてないんだ。事故か何かなんだと思う。仕事は、イラストレーターをやってたんだ。だから、絵を描くのは結構得意だよ。趣味は、お恥ずかしい話、結構ヲタクで色んな漫画を読み漁ったり、集めたり、アニメでも映画でも見るものが好きだったな。思いっきりインドアな人間だったよ。あ、小説や二次創作も描くのも見るのも好きだったな。」
櫻井‥‥!さっくんと同じ苗字だなんて!!やっぱり、フィン様は選ばれし人なんですね!!
「結構ぶっちゃけるんですね‥‥うん、じゃあ、私も。私は、『海野 桜』です。ふふ。同じ『桜』ですね。私は、29歳で亡くなりました。私も、突然だったのでなんで死んだのかは覚えてません。3歳の時に事故で頭を打った時に思い出したんです。前世の仕事は、中小企業の社長秘書をしていました。えっと、趣味は、私も小説や漫画好きでよく読んでいましたし、描いていましたよ。あとは、カラオケが結構好きで1人でもよく行ってましたね。今でも、よく歌ってストレス発散してます。」
一通り、ヲタクなのは匂わせくらいでやめておきつつ、昼職だけしか言ってないけどまぁいいでしょう。その後も、私達はいつの時代に生まれたとか、出身地は何処だとかを話しているといつの間にか予鈴がなっていました。話してみると、怪しかった雰囲気は何処にもなくてただのいい人とフィン様はなっていました。良かった。
「ごめんね、話し過ぎちゃったね。」
「いいえ、楽しかったので。」
「ほら、2人でいる時は普通に話してって言ったでしょう?桜さん?」
「もう、他の生徒もいるのでそれは無しですよ、フィン様。」
「本当につれないなぁ~~はは。」
「送ってくれてありがとうございました。」
「うん。また、色々と話そう。」
「はい、是非。」
朝の時間いっぱいいっぱいに話して、ちょっと遅刻気味に教室に入ると、全員の視線がこちらに向きました。‥‥うげ、これはアウトだった?先生は来てないけど‥‥。
そそくさと荷物を置いていた席に着くと、ブスッとしたジョーが此方をジーーーっと穴が開くほど見てきます。うん。ジョーの言いたいことが手を取るように分かります。わかるけど‥‥
「ジョー?ごめんね、心配したよね?」
「‥‥んーん。大丈夫。チャコ、さっき来てたのがリリのお兄さん?」
「あ、うん。三年生の、フィン様だよ。」
「ちょっと、チャコ!いつの間にお兄ちゃんの事、名前呼びまでする仲に!?やっぱり、うちにお嫁に来ちゃう!?」
「ちょ、変な誤解生むから!りり、やめて!」
「‥‥確かに。リリ、その辺にしろ。そろそろ先生が来る。」
「‥‥はぁい。」
ディナンに鎮められてリリは不服ながらも前を向きました。
・・・ディナン、一切こっちを見ないんですけど。なんか、怒ってる?
「えと、ディナン?怒ってる?」
「何を怒ることがあるというんだ。別に、怒ってなどいない。」
いやいや、口調がもう‥‥。でも、確かに何も怒られるようなことなんかして無いですもんね。うん。堂々としてよう。
◇◆◇◆◇◆
「‥‥チャコ、あれ見て。」
食堂でご飯を食べ終わってお茶を飲んでいたら何か見つけたのかリリがいきなり小声で話しかけて来ました。
「ん?どれ?」
「私たちの二つ右のテーブルの壁をしにしてる男の子2人。」
「っ!!!まさか、そんなこと‥‥」
「私も思わず二度見したわよ。でも‥‥」
そこには、一つの本を2人で見て距離が物理的に近くなっている男子がいました。
え、そんなに近づく必要あります?もう、腕当たってもすよ?顔を、覗き込んでしまっていますよ?なにそれ、ありがとうございます!!!!
「あの2人、両思いですわね。」
「いや、両片思いの方が燃えない?」
「確かに!相手の気持ちがわかるようでわからない時期って楽しいわよね!!」
「あれ?心なしか右の子顔赤く無い?いや、ちょっと赤いよね?あ、もしかしてこっちから見えにくいけど、後ろから弄られてるのかな?」
「両片思いで、そこまでしますか!?」
「いやいや、片思いだと思っているからこそ、体だけでも自分のものに‥‥って事よ。そして、致している最中にぽろっと本音が漏れて‥‥エンダーーーー!!!それがセオリーでしょ!」
「きゃーーっ!!胸が切なくなりますわ!!心なしか、左の子が右の子を見る視線が熱くなって言ってるような‥‥」
「あ、なんか耳打ちしてる!!やっぱり!!やっぱり、この後、トイレか空き教室に直行よね!!キャーっ!!」
2人でコソコソとバレない程度にガン見していると、見ていた男の子たちはそそくさとどっか行ってしまいました。うんうん。やっぱり、やりに行くのね。
「うんうん。御幸せに‥‥!」
「チャコ、リリ。そんなにあの男どもがどうかしたのか?」
「‥‥ジョー!?いつからそこに‥‥」
「今来たところだよ?で?なんであんなに熱視線送ってたのかな?」
・・・ジョーの笑顔が怖いです。
「いや、仲良いねって見てただけだよ?ねぇ、リリ?」
「え、えぇ。決して邪な気持ちでなんか見てませんわよ?」
嘘下手か!!
「ふーーん?邪な気持ちで見てたのかぁ~」
ジトーーっと、ジョーに視線で迫られます。
「そ、そういえば!ディ、ディナンも、今度のリリのお父様の誕生日会に行くんでしょう?」
「あ?あぁ。宰相からリリのエスコートを頼まれたからな。」
「ディナンの久々の正装、楽しみにしてるね!!」
「あ、あぁ。」
「ジョーの正装も、楽しみね。私のエスコートしてくれるんでしょう?」
「うん。もちろん。どんなの着て欲しいとかある?」
「そうねぇ‥‥あ、服装じゃ無いんだけど、こうやって‥‥こんな感じで髪を上げて見て欲しい!ジョーに絶対似合うと思うの!」
手櫛でジョーの髪をかきあげて抑えてみると、整った綺麗な顔がよく見えるようにしました。思ったより近くでジョーと目が合うと、ジョーが一気に真っ赤になっていきます。
「わ、わかったよ!絶対、神上げていく‥‥」
「う、うん‥‥」
思ってたよりもジョーが照れるもんだから、私まで恥ずかしくなってきちゃいました。
まぁ、無理やりながらなんとか話をそらせました。
その後は、のんびりと4人で話しながら食堂を後にしました。
・・・本当に、あの男の子たちはどこに行ったんですかね?気になります。
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