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第2章この度、学生になりました。
16*失恋は辛いものです。
しおりを挟む「‥‥どうしたの?リリ。」
後ろから話しかけてきたのはリリでした。
でも、なんだか元気ない?なんていうか、様子がおかしい気がします。
「チャコ、少しだけ、はなせる?」
「うん、勿論いいよ。ここだと誰か来るから、どっか行こう?」
「うん‥‥私の部屋でもいい?」
「そうだね、それが安全だしそうしよう。ちょっと、ジョーにだけ連絡入れておくね。」
「うん‥‥せっかくのパーティーなのにゴメンね。」
「全然いいに決まってるでしょ?ほら、行こう。」
リリは、泣いていたのか少し涙声です。折角のお化粧も取れかけてしまっています。一体どうしたんでしょうか‥‥というか、エスコート役のディナンは何してるんでしょうか。ちょっと、腹が立ってきます。
『チャコ?』
『あ、ジョー。ゴメンね、今リリと一緒なんだけど、ちょっと様子がおかしくて‥‥話をしたいって言われたからリリの部屋に行って話してくるね。ほんとゴメン。』
『様子がおかしいって‥‥大丈夫なの?俺のことは気にしないで。帰るの待ってるから、話終わったら絶対連絡してね。』
『何があったかはわからないんだけど‥‥放って置けないから‥‥うん、分かった。ありがとうね。』
一通りジョーに説明して連絡石を切りました。
連絡している間に、リリの部屋に着きます。うん、相変わらず女の子らしい可愛い部屋です。
いつもはアルノーさんがいるのに部屋には誰もいませんでした。
まぁ、これだけ大きなパーティーの最中だから抜けて来れるわけないですね。
リリをソファーに座らせて、近くにあったポットと茶葉でお茶を入れます。
「はい、リリ。」
「‥‥ありがとう。」
リリはお茶を受け取って一口ゆっくりと飲みました。
「‥‥美味しい。」
「ふふ。昔、お父様に何かしてあげたくて、ジャンに習ったの。役に立って良かったわ。」
「そうだったの‥‥。」
リリは、少し落ち着いたのかカップの中の紅茶を見つめながら話し出しました。
「いきなりゴメンね。私、こんなに自分が弱いなんて知らなかったわ。」
「気にしないで?友達が泣いてたら一緒にいるのは当たり前でしょう?」
「ありがとう、チャコ‥‥う‥‥うぅ。」
「それで、なにがあったの?話せる?」
「うん。‥‥あのね、」
◇◆◇◆◇◆
「え、結婚!!??」
「‥‥うん。さっき、殿下との噂とかが凄くて居づらかったからお父様に殿下との婚約はやめてくれって‥‥言ったの。その時に、『アルノーならもう直ぐ結婚するぞ』って言われて‥‥。」
「うわぁ‥‥彼女いたんだ、アルノーさん‥‥」
「私も、初めて知って‥‥目の前が真っ暗になってずっと泣いてたんだけど‥‥」
「そっか、それでずっと居なかったんだね。」
「チャコ‥‥辛すぎるよ‥‥‥‥失恋って、こんなに苦しいんだね‥‥‥‥うぅ。」
「‥‥‥‥そうだね、辛いし苦しいよね。」
クッションに顔を埋めているリリの背中をゆっくり優しく撫でます。
「アルノーさんとは、少しでも話したの?」
「‥‥うん。本当かどうか聞きに行った。」
「やっぱり本当だったんだ‥‥」
「うん。有難うございますって笑顔で言われちゃったよ。」
「そか‥‥‥‥‥‥」
リリは、気持ちを伝える前に失恋しちゃったんですね‥‥。それは辛すぎる。。
本当に大好きな人を諦めるのって辛いですよね。いや、そんじょそこらのことで諦めらるわけないですよね‥‥。でも、結婚するなら‥‥相手が幸せになるなら‥‥‥‥
ずっと泣いているリリをみて、私も辛くなってきます。
こんな時は何すれば良いでしょうか?
気がまぎれる事?大人なら、お酒付き合ったりできますがまだ未成年だから飲めないですし‥‥私は、失恋した時何をしてもらったらうれしかったでしょうか‥‥?うーーん。
「よし!!リリ!!!いますぐ、出かけよう!!ドライブ!!気分爽快!!」
「え?何?」
「だから、ここに居たらアルノーさんが来ちゃうかもだし、ドライブしていっぱい話して、いっぱい泣いて、スッキリするまでうちにいなよ!!お泊まり会しよっ!!」
「‥‥‥‥うん。」
そうと決まればまずは準備です!
涙でよれた化粧を取って、お直しをして、寝巻きと必要最低限の物を侍女さんに用意してもらって、公爵閣下に暇と、リリが私の家に泊まる事を伝えました。
リリのお父様は、リリが失恋したと知っているから特に引き留めることもなく快く了承してくれました。
「チャコ、俺も送っていくのに‥‥」
「ジョー、ディナン、ゴメンね。いまは女二人がいいと思うからさ。緊急事態だからゆっくり話せないんだけど、今度説明するからっ!本当に今日は楽しかったよ。ありがとう。また、学校でね。」
「わかった。気をつけて帰ってね。」
「チャコ、寄り道しないようにな。」
「うーーん。それはどうだろう?ふふ。おやすみっ!!」
リリは、ずっと涙を我慢していたため誰とも話すことが出来ませんでした。
「運転手さん、ちょっと、行って欲しいところがあるんですけど‥‥」
「お嬢、旦那様達に怒られますよ?」
「ジン!あなたがいるから大丈夫よ!行くったら行くの!!」
「‥‥はぁ~本当に仕方のない人ですね。」
「うふふ。有難う。じゃあ、あそこへお願いね。」
「畏まりました。」
「ちゃ、こ?どこ行くの?」
「それはー‥‥着いてからのお楽しみよ。」
◇◆◇◆◇◆
「わぁ‥‥とっても綺麗ね。初めて来たわ。こんな場所があるなんて知らなかった。」
「ここはね、私とジョーとディナンとジンの秘密の場所なの。昼間に来ても絶景なのよ。」
「‥‥大切な場所だったんじゃないの?私が来て良かったの?」
「何言ってんの?リリは私の親友なんだから来て良いに決まってるでしょう?」
「‥‥ふふ。ありがとう。」
「あたしも、夜に来たのは初めてだけど思っている以上に夜景が綺麗ね。星もよく見えて明るい。」
「‥‥うん。」
いつもの場所に腰掛けて静かに夜景を見ます。
リリは今、何を考えているのでしょうか。‥‥本当は、海とかに行きたかったですがここからだと3日はかかるのでやめておきました。うん。でも秘密基地はいつ来ても綺麗です。
「‥‥私、心のどこかで望めば何でも手に入るって思ってたの。やりたい事も、アルノーの気持ちも、将来も。」
「うん。」
「でも、そんな事なかったわ。特に人の気持ちなんか手に入れようとして手に入るものじゃなかった。」
「そうだね。」
「特別扱いされるのが当たり前でそんな当たり前なことに気がつかないなんて‥‥」
「‥‥」
「アルノーはね、ずっと私に厳しくしてくれたの。ちゃんとダメなことはダメって怒ってくれて、褒められることが少ないけどその分、褒められると本当に嬉しくて‥‥いつの間にか居なくちゃダメな人になってた。‥‥‥‥アルノーも23歳だもんね。そりゃ婚約者の一人や二人いるよね。あーー気付かないなんてばかだなぁ、私。‥‥11歳も下の私なんて相手にされるはずがないのに‥‥うっ‥‥うぅ‥‥」
「‥‥うーん、歳は関係ないと思うよ?それに、真剣にアルノーさんに恋したリリをばかだなんて思わない。怒ってくれる存在って、本当に少ないもの。好きになるのは必然だよ。」
「‥‥‥‥うん。」
「それにね、相手にされないって決めつけちゃダメだと思う。」
「え?」
「だって、そうでしょう?リリはこんなに天使なんだよ!?確かに、年齢って埋められるわけじゃないし一回り‥‥ゴホン。11個も差があるのは大きいかもしれないけど、そのくらいの差なんて、今は大きく感じても40代になれば全然気にならないもの!!」
「え??」
「だって、考えてみ?12歳と23歳は結構な年の差って思うでしょう?」
「う、うん。」
「だけど、42歳と53歳ってそんなに変わらなくない?もっと言えば、92歳と103歳って同い年って感じしない?」
「‥‥そうかなぁ?しないと思うけど…。」
「そうだよ!!30過ぎたら年の差なんてあまり関係ないよ!!70代以降はみんな同い年だよ!」
「‥‥ふ。ふふふ。ぷははは」
「え、え、なに?リリ、どした?」
「だって‥‥チャコの考え方変‥‥。ふふふ」
「そうかなぁ?」
あれーー?おかしいなぁ??
「というか、励ますところがズレてる!くくく」
「えぇ!!??うそ!!」
「ダメ、チャコがおかしくて涙止まった‥‥ふふふ」
「えぇ???しんみりモードで行こうと思ったんだけどなぁ‥‥」
「うそーー!あれのどこがしんみりなのよーーっ!!もっと泣かせなさいよーーっ」
「もっと泣いて良かったよ~~一生懸命なぐさめるよーー!!泣け泣けっ!!」
「ちょ、あ、やぁっ!!きゃははは」
いつの間にか、リリに笑顔が戻って来ました。良かった。
でも、もっと泣いて良かったんだけどなぁ??
「お楽しみ中申し訳ございませんが‥‥さっきからジョー様にディナン様、旦那様にレイ様、カート様と‥‥アルノーからひっきりなしに連絡が来ているので、ソロソロお屋敷に戻られてはいかがでしょうか?」
「「えぇぇぇ、もう!!?」」
「はい。」
「うーーん。」
本当は、ここで一杯飲んだり食べたりしてから帰りたかったなぁ~せっかく子供用のシャンパンもどき持って来たのに‥‥。まぁ帰ってから朝まで語りながら飲むとしましょう!
「じゃあさ、チャコ!一曲歌って!!」
リリが、きらきら笑顔でリクエストして来ました。
「あーでも、楽器が‥‥」
「お嬢、此方に。」
ジンがいつも使っているギターを手渡して来ました。
あれ、なんで持ってるんですかね?
「お嬢の必需品はいつ何時でも使えるように持っています。」
「そうなの?ジン、ありがとう。リリ、どんな歌がいい?」
「うーん。しっとりしたこの夜景に合う綺麗な歌がいいな。」
うん、それならあれしかないですね。
「りょーかいっ!」
座っていた所からリリの前に来てギターを持って音を合わせます。よし、大丈夫そうです。
ーー♪
「上を向いて‥‥♪」
ーーー♪
ーー♪
「一人ぼっちの夜ーー♪」
「‥‥リリ、溢れちゃってるね。」
「だって‥‥だってぇ~~‥‥」
「うん、私もいるよ。一人ぼっちになんかしないからね。」
必死に上を向いているリリの手をギュッと握りました。
「うん‥‥うん‥‥‥‥っ」
その後、リリが泣き止んで落ち着いてから帰ったらお父様達みんなに怒られたのは言うまでもありませんね。ごめんなさい。
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