私を捨てた元婚約者が、一年後にプロポーズをしてきました

柚木ゆず

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第5話 回想 ディオンとの出会い(5)

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「? クリステル?」
「クリステル様? どうかされましたか?」
「えっ……。あ、その……。ええと……。ご、ごめんなさい。ほっ、ほんの少しだけお待ちくださいっ」

 呼び止めたことに自分でもビックリとしていて、私はアタフタしながらディオンさんに頭を下げた。そして大急ぎでそうした理由を探し始め、すぐに――。心の中の不思議な感覚に気付き、やがてその原因が分かりました。

((……私。この方と、もっと一緒にいたいんだ))

 守られているんだって安心できる、両腕。広くて温かい、お胸。パニックから救ってくれた、優しい声と落ち着いた雰囲気。
 それらを忘れられなくって。ディオン様のお傍にいたい、ディオン様をもっと知りたい。そう、強く思っていたのです。

「……………………あの。ディオン様」
「はい。なにかな?」
「そ、その……っ。わっ、私とまた会ってくださいませんかっ? さっ、先程のお礼を行いたいと思っておりますのでっ。ディオン様のご都合がよろしい時に、ディオン様が指定をした場所で構いませんのでっ。会って、いただけませんか……っ?」

 衝動や興奮や照れや緊張で、しどろもどろ。私は顔を真っ赤にしながらお願いを行って、そうしたら――。

「よろこんで。そのお気持ち、有難く受け取らせてもらいます」

 すぐに、爽やかな微笑みを返してくれたのです。
 こうして私は約束をして別れ、ここから私達は縁を育み始めました。

「お時間を設けてくださり、ありがとうございます。こ、こちら……っ。お礼のクッキーです。よろしければ、お召し上がりください……っ」
「ありがとう。…………このクッキー、レモンピールが良いアクセントになってるね。とても美味しいよ」

 あの日から一週間後に私達の中間地点で国境付近でお会いして、クッキーを食べながら楽しくおしゃべりをしたり。

「クリステルさん・・と居ると、楽しい気分になるよ。君さえよければ、また会ってくれないかな?」
「っっ、もちろんですっ! 私もっ、ディオンさん・・と一緒はとても楽しいのでっ。是非お願いしますっ!」
「あはは、そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ次は、俺の国を案内するよ。まだまだ見どころは沢山あるんだよ」

 幸せな提案を頂いて、隣国を案内してもらったり。お返しに今度は私が住んでいる国を案内して、その次はお互いのお家を訪れたり。
 そうしているうちに、想いは大きくなっていって……。幸せなことに、ディオンさんの心は『LIKE』から『LOVE』に変わっていってくれて……っ。

クリステル・・・・・。今はもう、貴方が居ない人生は考えられません。一生涯、俺の隣を歩いてくださいませんか?」
「はぃ……っ。私も、ディオンさんが居ない人生は考えられません。貴方とお隣を、歩かせてください」

 今から1か月前、出会ってから11か月後。私はベルラトの畑思い出の場所で、エンゲージリングをいただいたのでした。

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