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第3話 目が覚めたら アラン視点(3)
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「『そこは問題ないよ。もし周囲が雑音を唱え始めたら、ベアトリスの不貞をでっち上げる。ベアトリスが俺を裏切ったことにして、今ある婚約を解消するから心配要らないよ』。それが、1か月前の午後5時14分37秒に発せられた言葉。そして――。『上手く不貞をでっち上げられなくても、心配は要らないよ。必要とあらば、ベアトリスを殺す。……相手がいなくなったら、必然的に相手を次女にスライドさせるしかないからね。ウチの力を総動員して、事故死に見せかけて上手く消すから安心してくれ』。こちらが、昨日午後4時41分13秒に言い放った言葉ですわ」
「……そう、か……。俺がそう言ったのは、そのタイミングだったのか……」
一度成立した婚約が解消され、前婚約者の妹と婚約し直す。それは貴族界でも非常に珍しい出来事で、詳細を伏せていても『もしやアランかシャルロットが、ベアトリスを裏切った?』という声があがる可能性があるにはあった。
俺はシャルロットがソコを懸念していると思って、そう言ったんだ。
「それが、理由……? 余計ワケが分からなくなった! 自分と婚約するためにこんな風に言ってもらえるなんてっ、誰でも嬉しくなる言葉なのにっ! なにがどうなれば今の状況に繋がるんだ!?」
「……やはり貴方様は、自惚れていますね。いいえ、自分の中で自分の都合の良いように受け取ってしまう癖(へき)があります。言っておきますがアラン様のそんなお言葉やこれまでの言動で、好意を抱くようになる人なんてそうそういませんよ」
ベアトリスと比べて、シャルロットは〇〇が優れている――。シャルロットとベアトリスを比べるなんて、おこがましい。ダイヤモンドと路傍の石の差があるよ――。
自分の家族とこんな風に比較されて、喜ぶはずがない。
職人に命令をして、君にピッタリのイヤリングを作らせたんだ。何件も先約があったらしいが君のために、ウチの威光を使って先に制作させたんだ――。
こんな話を聞いて、好印象を持つはずがない。
シャルロットは……。呆れ笑いを浮かべた。
「十八の人間とは思えない思考回路で、怒る気も湧かなくなりますわ。人は呆れすぎると、笑ってしまうのですね」
「……………………」
「貴方様は信じられない理由で、わたくしから離れようとはしなかった。わたくしがいくら拒否をしても、『真実に気付いていないだけだ』『本心は違うはずだ。素直になってくれ』と諦めようとはしませんでした」
「……………………」
「そして貴方様は更に、あのようなあまりにも身勝手なことを平然と言い始めました。ですからわたくしの中で、考えが変わったのです。アラン・ザックルスは、何をしてもいい『人間以下のゴミ』となったのですよ」
「……………………」
「これも少し前に口にしましたが、こんなわたくしにも最低限の常識とモラルはありましてね。実験には、人間以下のゴミ、と判断した存在しか使用しないようにしているんですよ」
ケラケラケラ、と……。
完全にねじが外れた表情と声色、それらを俺に向けてきて――。
「ですから、実験体になっていただきます。さあ始めましょうか、アラン様」
白衣のポケットから、青紫色の丸薬を取り出したのだった……。
「……そう、か……。俺がそう言ったのは、そのタイミングだったのか……」
一度成立した婚約が解消され、前婚約者の妹と婚約し直す。それは貴族界でも非常に珍しい出来事で、詳細を伏せていても『もしやアランかシャルロットが、ベアトリスを裏切った?』という声があがる可能性があるにはあった。
俺はシャルロットがソコを懸念していると思って、そう言ったんだ。
「それが、理由……? 余計ワケが分からなくなった! 自分と婚約するためにこんな風に言ってもらえるなんてっ、誰でも嬉しくなる言葉なのにっ! なにがどうなれば今の状況に繋がるんだ!?」
「……やはり貴方様は、自惚れていますね。いいえ、自分の中で自分の都合の良いように受け取ってしまう癖(へき)があります。言っておきますがアラン様のそんなお言葉やこれまでの言動で、好意を抱くようになる人なんてそうそういませんよ」
ベアトリスと比べて、シャルロットは〇〇が優れている――。シャルロットとベアトリスを比べるなんて、おこがましい。ダイヤモンドと路傍の石の差があるよ――。
自分の家族とこんな風に比較されて、喜ぶはずがない。
職人に命令をして、君にピッタリのイヤリングを作らせたんだ。何件も先約があったらしいが君のために、ウチの威光を使って先に制作させたんだ――。
こんな話を聞いて、好印象を持つはずがない。
シャルロットは……。呆れ笑いを浮かべた。
「十八の人間とは思えない思考回路で、怒る気も湧かなくなりますわ。人は呆れすぎると、笑ってしまうのですね」
「……………………」
「貴方様は信じられない理由で、わたくしから離れようとはしなかった。わたくしがいくら拒否をしても、『真実に気付いていないだけだ』『本心は違うはずだ。素直になってくれ』と諦めようとはしませんでした」
「……………………」
「そして貴方様は更に、あのようなあまりにも身勝手なことを平然と言い始めました。ですからわたくしの中で、考えが変わったのです。アラン・ザックルスは、何をしてもいい『人間以下のゴミ』となったのですよ」
「……………………」
「これも少し前に口にしましたが、こんなわたくしにも最低限の常識とモラルはありましてね。実験には、人間以下のゴミ、と判断した存在しか使用しないようにしているんですよ」
ケラケラケラ、と……。
完全にねじが外れた表情と声色、それらを俺に向けてきて――。
「ですから、実験体になっていただきます。さあ始めましょうか、アラン様」
白衣のポケットから、青紫色の丸薬を取り出したのだった……。
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