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番外編 姉の婚約者が人間以下のゴミになるまで シャルロット視点(1)

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((はあ。どうしたものでしょうか))

 研究の素材集めの帰りに立ち寄った、高級リストランテ。その店内の奥にあるVIP用の個室にて、わたくしは心の中でため息を吐いていました。

「シャルロット、ふたりで食べるランチは美味しいね。招待を受けてくれたこと、改めて感謝するよ」

 対面のテーブルで幸せそうに微笑んでいる、アラン・ザックルス様。この方は、お姉様の婚約者。
 にもかかわらず平然とわたくしに愛を振り撒いてくる、ゴミと人間の間を行き来しているような生き物ですの。


『ベアトリスと比べて、シャルロットは外も中身も優れている』

『シャルロットとベアトリスを比べるなんて、おこがましい。ダイヤモンドと路傍の石の差があるよ』

『職人に命令をして、君にピッタリのイヤリングを作らせたんだよ・・・・・・・

『何件も先約があったらしいが、ウチの威光を使って先に制作させたんだ』


 いくら断ってもお姉様に内緒で会おうとするのは、まだ可愛い方ですわね。家族の前で家族を嬉々として引き合いに出したり、マナー違反を誇ったり、あげく自分の都合良いように解釈したり。
 とても18の人間とは思えない。
 目の前にある頭をラボで開いて、脳味噌を調べたくなりますわ。

((どうにか穏便に済まそうとしていましたが、この様子なら無理ですわね))

 お姉様に気付かれないように諦めさせて、再びお姉様へと好意を向かせる。そんな都合の良いことは、やはり起きそうにありませんわね。

((となれば、どうしましょうか。このままでは、お姉様が辛い思いをしてしまいますわね))

 ベアトリスお姉様には、出来る限り幸せな人生を歩んでいただきたい。こんな状態の生き物と夫婦になっても、ロクなことになりませんわ。

((あの薬を使えば、わたくしにとっても都合の良い形で解決できてしまえますわ。とはいえ、実行はできませんわねぇ))

 ラボにある薬の使用は、アラン様の人生を『無』としてしまう。
 そんな効果に、わたくしの中にある最低限の『常識』と『モラル』が反応してしまいますのよね。

((そろそろこの問題を解決しないと、面倒なことになりますわ。なにか、常識やモラルに影響しない方法はないのでしょうか――))

 そんなことを、考えている時でしたわ。
 不意にアラン様のお口から、看過できない言葉が飛び出しましたの。

「もし周囲が雑音を唱え始めたら、ベアトリスの不貞をでっち上げる。ベアトリスが俺を裏切ったことにして、今ある婚約を解消するから心配要らないよ」
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