婚約者と幼馴染が浮気をしていたので、チクチク攻撃しながら反撃することにしました

柚木ゆず

文字の大きさ
8 / 72

第1話(7)

しおりを挟む
「坊ちゃま。ご所望の品をお持ちいたしました」
「ありがとうジェームズ。助かるよ」

 マリユ様がオーダーしてくださったコーヒーを飲み始めて、20分くらいが経った頃。首に傷跡のある初老の男性が戻ってこられて、マリユ様は見慣れない2つの物体を受け取った。
 1つは縦が15センチで横が5センチ、幅が3センチくらいの、長方形の金属製のもの。2つ目は縦も横も30センチ前後で、先方に丸い大型の輪っか――ガラス製? の輪っかがついて、上部にボタンがついた不思議なもの。これは、なに……?

「前者は『録音機(ろくおんき)』という名前の、隣国のとある商人が手に入れた、遠方の国で開発された『機械』と呼ばれるもの。こうして背面にあるスイッチを入れると、内部にある装置に音声を保存できるんですよ」
「保存!? 保存って、残せるってことですよね!?」
「ええ。《保存!? 保存って、残せるってことですよね!?》このように、音を記録しておけるのですよ」

 下部にある『すぴーかー』という部分から、私の声が響いてきた。
 す、すごい。同じ世界なのに、別の国ではこんなものが誕生してたんだ……!

「そして後者は、『カメラ』。こちらは現像作業に特別な環境が要るためこの場で披露はできませんが、撮影といいまして――。ここにあるレンズと呼ばれる部分の前にある光景をフィルムと呼ばれるものに記録し、写真という形にして保存しておけるのですよ」
「も、もっとすごいものが出てきましたね……。これさえあれば……っ」
「そうですね。4つの中で最も重要な、『浮気の証拠』を楽に確保できます」

 光景を、残せるんだもん。2人が会いさえすれば、簡単に入手できちゃう。
 その国には、こんなにも便利なものもあったんだ……!

「浮気の証拠の確保につきましては、とあるオマケを付け加えたいため、僕が担当致します。ソフィー様はこの録音機を用いて、その他3つの証拠の収集をお願いします」
「はい……っ。大切に使わせていただいて、必ず確保します……っ」

 その3つは、婚約者と幼馴染である私にしか出来ないこと。
 なのでマリユ様にアドバイスを頂きつつ収集に必要な流れを考え、無事に方針が決定。録音機の存在を悟られないようにしないといけない等々、不安な面はあるけれど……。折角頂いたチャンスを無駄にはせず、きっちり確保します……!

「今後の予定は、明後日のお昼にエドゥアル、4日後のお昼にカーラ、7日後にライン邸で開かれる小さなパーティーでエドゥアルに会うようになってます。こちらを使用して、3つとも集めてきますね」

 1度にまとめて行えば、怪しまれるかもしれない。証拠を集めるのは1日1つにして、慎重にしておく。

「ソフィー様のご健闘を、祈っております。でしたら、そうですね――。明後日の夜、4日後の夜、7日後の夜に、状況などの確認を行わせていただきたく思います。ハツルエ邸に伺っても構いませんでしょうか?」
「は、はい。よろしく、お願いいたします」

 これは私のために行っていただいていることだから、本来は私から伺うべき。だけど『ハトの知人』さん――アリス様がそうであるように、ご実家は忙しいのかもしれない。なので、ここでもお言葉に甘えておいた。

「では明後日の夜、伺いますね。ソフィー様、お互いに頑張りましょう」
「はい……っ。マリユ様、よろしくお願い致します……っ」

 私は改めて立ち上がって頭を下げ、そうしたら優しくて柔らかな微笑みが返ってくる。
 対抗策が決まったことと、その素敵な笑顔。それらのおかげで、すっかりマイナスな感情はなくなっていて――。
 私はカフェを訪れた時とおなじで、軽い足取りで家路についたのでした。



 アリス様――ううん。『ハトの知人』さん、ありがとう。
 貴方のおかげで真実に気付けて、お兄様のお力を借りることもできました……!

しおりを挟む
感想 226

あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

処理中です...