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第1話(7)
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「坊ちゃま。ご所望の品をお持ちいたしました」
「ありがとうジェームズ。助かるよ」
マリユ様がオーダーしてくださったコーヒーを飲み始めて、20分くらいが経った頃。首に傷跡のある初老の男性が戻ってこられて、マリユ様は見慣れない2つの物体を受け取った。
1つは縦が15センチで横が5センチ、幅が3センチくらいの、長方形の金属製のもの。2つ目は縦も横も30センチ前後で、先方に丸い大型の輪っか――ガラス製? の輪っかがついて、上部にボタンがついた不思議なもの。これは、なに……?
「前者は『録音機(ろくおんき)』という名前の、隣国のとある商人が手に入れた、遠方の国で開発された『機械』と呼ばれるもの。こうして背面にあるスイッチを入れると、内部にある装置に音声を保存できるんですよ」
「保存!? 保存って、残せるってことですよね!?」
「ええ。《保存!? 保存って、残せるってことですよね!?》このように、音を記録しておけるのですよ」
下部にある『すぴーかー』という部分から、私の声が響いてきた。
す、すごい。同じ世界なのに、別の国ではこんなものが誕生してたんだ……!
「そして後者は、『カメラ』。こちらは現像に特別な環境が要るためこの場で披露はできませんが、撮影といいまして――。ここにあるレンズと呼ばれる部分の前にある光景をフィルムと呼ばれるものに記録し、写真という形にして保存しておけるのですよ」
「も、もっとすごいものが出てきましたね……。これさえあれば……っ」
「そうですね。4つの中で最も重要な、『浮気の証拠』を楽に確保できます」
光景を、残せるんだもん。2人が会いさえすれば、簡単に入手できちゃう。
その国には、こんなにも便利なものもあったんだ……!
「浮気の証拠の確保につきましては、とあるオマケを付け加えたいため、僕が担当致します。ソフィー様はこの録音機を用いて、その他3つの証拠の収集をお願いします」
「はい……っ。大切に使わせていただいて、必ず確保します……っ」
その3つは、婚約者と幼馴染である私にしか出来ないこと。
なのでマリユ様にアドバイスを頂きつつ収集に必要な流れを考え、無事に方針が決定。録音機の存在を悟られないようにしないといけない等々、不安な面はあるけれど……。折角頂いたチャンスを無駄にはせず、きっちり確保します……!
「今後の予定は、明後日のお昼にエドゥアル、4日後のお昼にカーラ、7日後にライン邸で開かれる小さなパーティーでエドゥアルに会うようになってます。こちらを使用して、3つとも集めてきますね」
1度にまとめて行えば、怪しまれるかもしれない。証拠を集めるのは1日1つにして、慎重にしておく。
「ソフィー様のご健闘を、祈っております。でしたら、そうですね――。明後日の夜、4日後の夜、7日後の夜に、状況などの確認を行わせていただきたく思います。ハツルエ邸に伺っても構いませんでしょうか?」
「は、はい。よろしく、お願いいたします」
これは私のために行っていただいていることだから、本来は私から伺うべき。だけど『ハトの知人』さん――アリス様がそうであるように、ご実家は忙しいのかもしれない。なので、ここでもお言葉に甘えておいた。
「では明後日の夜、伺いますね。ソフィー様、お互いに頑張りましょう」
「はい……っ。マリユ様、よろしくお願い致します……っ」
私は改めて立ち上がって頭を下げ、そうしたら優しくて柔らかな微笑みが返ってくる。
対抗策が決まったことと、その素敵な笑顔。それらのおかげで、すっかりマイナスな感情はなくなっていて――。
私はカフェを訪れた時とおなじで、軽い足取りで家路についたのでした。
アリス様――ううん。『ハトの知人』さん、ありがとう。
貴方のおかげで真実に気付けて、お兄様のお力を借りることもできました……!
「ありがとうジェームズ。助かるよ」
マリユ様がオーダーしてくださったコーヒーを飲み始めて、20分くらいが経った頃。首に傷跡のある初老の男性が戻ってこられて、マリユ様は見慣れない2つの物体を受け取った。
1つは縦が15センチで横が5センチ、幅が3センチくらいの、長方形の金属製のもの。2つ目は縦も横も30センチ前後で、先方に丸い大型の輪っか――ガラス製? の輪っかがついて、上部にボタンがついた不思議なもの。これは、なに……?
「前者は『録音機(ろくおんき)』という名前の、隣国のとある商人が手に入れた、遠方の国で開発された『機械』と呼ばれるもの。こうして背面にあるスイッチを入れると、内部にある装置に音声を保存できるんですよ」
「保存!? 保存って、残せるってことですよね!?」
「ええ。《保存!? 保存って、残せるってことですよね!?》このように、音を記録しておけるのですよ」
下部にある『すぴーかー』という部分から、私の声が響いてきた。
す、すごい。同じ世界なのに、別の国ではこんなものが誕生してたんだ……!
「そして後者は、『カメラ』。こちらは現像に特別な環境が要るためこの場で披露はできませんが、撮影といいまして――。ここにあるレンズと呼ばれる部分の前にある光景をフィルムと呼ばれるものに記録し、写真という形にして保存しておけるのですよ」
「も、もっとすごいものが出てきましたね……。これさえあれば……っ」
「そうですね。4つの中で最も重要な、『浮気の証拠』を楽に確保できます」
光景を、残せるんだもん。2人が会いさえすれば、簡単に入手できちゃう。
その国には、こんなにも便利なものもあったんだ……!
「浮気の証拠の確保につきましては、とあるオマケを付け加えたいため、僕が担当致します。ソフィー様はこの録音機を用いて、その他3つの証拠の収集をお願いします」
「はい……っ。大切に使わせていただいて、必ず確保します……っ」
その3つは、婚約者と幼馴染である私にしか出来ないこと。
なのでマリユ様にアドバイスを頂きつつ収集に必要な流れを考え、無事に方針が決定。録音機の存在を悟られないようにしないといけない等々、不安な面はあるけれど……。折角頂いたチャンスを無駄にはせず、きっちり確保します……!
「今後の予定は、明後日のお昼にエドゥアル、4日後のお昼にカーラ、7日後にライン邸で開かれる小さなパーティーでエドゥアルに会うようになってます。こちらを使用して、3つとも集めてきますね」
1度にまとめて行えば、怪しまれるかもしれない。証拠を集めるのは1日1つにして、慎重にしておく。
「ソフィー様のご健闘を、祈っております。でしたら、そうですね――。明後日の夜、4日後の夜、7日後の夜に、状況などの確認を行わせていただきたく思います。ハツルエ邸に伺っても構いませんでしょうか?」
「は、はい。よろしく、お願いいたします」
これは私のために行っていただいていることだから、本来は私から伺うべき。だけど『ハトの知人』さん――アリス様がそうであるように、ご実家は忙しいのかもしれない。なので、ここでもお言葉に甘えておいた。
「では明後日の夜、伺いますね。ソフィー様、お互いに頑張りましょう」
「はい……っ。マリユ様、よろしくお願い致します……っ」
私は改めて立ち上がって頭を下げ、そうしたら優しくて柔らかな微笑みが返ってくる。
対抗策が決まったことと、その素敵な笑顔。それらのおかげで、すっかりマイナスな感情はなくなっていて――。
私はカフェを訪れた時とおなじで、軽い足取りで家路についたのでした。
アリス様――ううん。『ハトの知人』さん、ありがとう。
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