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第2・5話 馬車内での出来事 俯瞰視点(1)

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((はぁー。ブスとバカの相手をするのは疲れるな))

 ハツルエ邸を発ち、わずか十数秒後のこと。窓から身を乗り出してソフィー達に手を振っていたエドゥアルは、足を組んで大息を吐きました。
 彼にとってソフィーは金を生む存在で、ノアムはご機嫌を取らなくてはならない面倒な存在。そのためデートなどの接触仕事が終わると、毎回このように悪口で溜まったストレスを発散させていたのでした。

((しかも今日はコショウでヘマをしやがるし、バカオヤジは自信満々にトリュフを食わせようとしてくる。おかげで酷い目に遭った))

 唇は腫れてヒリヒリする上に、特に美味しくもないチョコレートを絶賛していくつも食べないといけない。エドゥアルは背もたれに全体重を預け、チッと舌を鳴らしました。

((思い出しただけで、イライラする……っ。特に、『害』を出しやがったあのブス女は許せない……!))

 故意か故意じゃないかなんて、関係ない。俺を苦しめた時点で、それは罪。重罪だ! 次に会う時は、同じ目に遭わせてやる。覚悟しとけよ……!!
 そうして彼は仕返しをする方法を考え、それは十数分で完成。指をパチンと鳴らし、薄笑いを浮かべます。

((アイツは俺が今も本気で愛していると思い込んでいて、何をやっても怪しまれない。だから))

 強烈な味の菓子を――いや、そんなものじゃこの苛立ちは収まらない。とっておきを混ぜたやつを、食わせてやる。楽しみにしておけよぉ。
 自分はしてもいいけれど、されるのは許せない――。そんな理不尽な心の持ち主はクククっと喉を鳴らし、ここでソフィーの話題はお仕舞い。好きでもない女の顔を脳内から追い出し、真に愛する者の顔を思い浮かべます。

((カーラを想像するだけで心が安らぐし、実際にいると心が弾む。同じ人間なのに、どうしてここまで違うんだろうな? ……そりゃあやっぱ、心身ともにカーラが圧倒的に格上で、俺らの気持ちが通じ合っているからなんだよなぁ))

 2人は同じタイミングで恋に落ち、今は両想い。好みも好物も、考えも――ソフィーを利用しようという考えも、同じ。
 彼にとって『一致』は非常に嬉しいことで、こうして自問自答してニヤニヤとしているのです。

((カーラと次に会えるのは、7日後。その日が待ち遠しい))

 次回のデートでは何をしようか。どこを行こうか? そうだ! 例の場所に連れていってあげよう。それに、その日はソフィーと会う日の翌々日。強烈なお菓子のリアクションを細かく教えよう!
 エドゥアルは上機嫌でスケジュールを組み始め、全てが完成した、その直後でした。

((ぐぅ!?))

 満面の笑みだった表情が、一変。突如歪んでしまったのでした。

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