婚約者と幼馴染が浮気をしていたので、チクチク攻撃しながら反撃することにしました

柚木ゆず

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第9話 7日後の夜 3回目の状況確認と、ハトの知人からのサプライズ(3)

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「知人さんから初めてザッハトルテをもらったのは、6年前。その時から全て、ケーキ以外を――メッセージプレート、袋、箱、箱にあるリボンを、保管してあるんです」
「そうなのですか? それは、友人冥利、製作者冥利に尽きますね」
「お手紙でそう報告したら、『ハトの知人』さんも喜んでくれていました。マリユさん・・・・・は、ご存じではなかったので――ぁっ! すっ、すみませんマリユ様っっ! たいへん失礼致しました!!」

 不意に起きた、不思議なこと。それは、目の前にいらっしゃる方への呼称。敬称である『様』ではなく、『さん』をつけてしまっていたのです。

「侯爵家様に、『さん』だなんて……。重ね重ね失礼致しました……っ!!」
「いえ、お気になさらないでください。妹の友人は僕にとっても友人ですし、僕は侯爵家の嫡男として生まれただけ。たまたま、今の地位を得ただけの事です。あいにくと公の場ではそうはいきませんが、私的な場でしたら何ら問題はありませんよ」
「あ、ありがとうございます……。寛大なお言葉、感謝いたします……っ」

 両手を前で揃えて深々と頭を下げながら安堵して、でも――。心の中では、何回も首を傾げる。

((……どうして……。私はさっき、マリユさん、なんて言ってしまったんだろ……?))

 ウチは3代前まで平民で、エドゥアル達が言うように新人貴族。だけど私が生を受けた時はすでに貴族の一員で、私はずっと貴族としての教育を受けてきた。
 だから絶対に、粗相はしない。貴族界ではちょっとしたことが大問題になってしまうためマナーは特に叩き込まれていて、どんな時でも乱れはしない。

((けど……。さっきは、そうなった……))

 なぜ? 今まで一度もなかったのに、なぜ言っちゃったの?

((マリユ様がお優しい方で、『ハトの知人』さんのお兄様だから?))

 ううん、違う。それでも、さん付けはしない。
 じゃあ……、なんで……?

「おや。残念ながら、時間となってしまいました。失礼させていただきますね」

 そうやって考えていると、マリユ様が名残惜しそうに立ち上がった。
 マリユ様は、現在19歳。次期当主や宰相候補として、昼夜問わず様々な勉強や御用事があるそうです。

「お忙しいところをありがとうございます。『ハトの知人』さんに――アリス様に、幸せになりました、とお伝えください」
「承知しました。次にお会いするのはお迎えに上がる際、3日後ですね。その時には撮った写真もお見せできますので、そちらも楽しみにしておいてください」
「はい……っ。マリユ様、よろしくお願いいたします。ありがとうございました……っ」

 今日も内密な接触のため、お別れは家内で。そうして去られた後は再び『さん付け』について考えてみたけど、2時間後――お父様が帰宅するまで行ってみても、答えは出ず。
 仕方ないのでその話題は頭の隅に置いてベッドに入り、色々なことがあった1日は終わったのでした。

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