婚約者と幼馴染が浮気をしていたので、チクチク攻撃しながら反撃することにしました

柚木ゆず

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第13話 ハトの知人になった切っ掛けと、内緒にする理由 マリユ視点(1)

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 全ての始まりは、偶然だった――。
 それは、今から8年前のこと。その日僕は定期健診で病院を訪れており、その際にそこで入院しているソフィー・ハツルエという女の子を見かけた。

「パパぁ……。わたし…………。だいじょうぶ、なんだよね……? このまま…………その、ね……。死んじゃわない、よね……? 前みたいに元気になって、またお外で遊べるようになるよね……?」

 彼女は肺の病気を患っており、身体の異変と非日常的な環境が多くの不安を生む。ベッドの上で大粒の涙を浮かべ、小さな小さな、今にも消えてしまいそうな不安げな声でしきりに尋ねていた。

左右の肺ここが、苦しくなくなるよね……? ちゃんとお家に、戻れるよね……っ? ね……っ?」
「ああ、もちろんだとも。ソフィーの病気は、必ずよくなるよ。お父さんが言うことも、お医者さんが言うことも、ぜんぶ本当だよ」

 お父上は優しくそう仰るが、彼女の表情は冴えないまま。
 僕にはその気持ちが、痛い程によく分かった。

((……『安心だよ』。『治った人はちゃんと居るんだよ』。そう言われても、怖いよね))

 この身体も同じ病にかかり、かつて3か月の入院と4か月間の自宅療養を経験した。
 発症がある程度の年齢であれば、そうはならないのだけれど。幼い頃は、とにかく怖い。『どうにかなってしまうのかも』という恐怖に駆られ、気持ちが落ち込んでしまう。

((あの時は、毎日が辛かった。怖かった。……この子はこれから、あんな思いをする羽目になるのか。…………なんとか、和らげてあげたいな))

 自分と近い年齢の子が、同じ病気で苦しんでいる。それを目にしたのはこの日が初めてで、経験者としては放っておけなかった。どうにかして、少しでも楽にしてあげたかった。

((……僕にできることは、ないだろうか……?))

 そうして過去を振り返り、当時自分が欲したもの探す。そうして見つかったのが、『話し相手』だった。
 こういった時は気を紛らわせたり、弱音を吐けたりする人が欲しくて。そういう者を求めていたのだ。

((……だとしたら……。手紙、がいいな))

 僕と彼女は初対面だし、ここで会えばどうしても侯爵家の人間だと気付かれてしまう――対等な立場として、弱音を聞くなどが出来ない。
 そこで使用するものは、正体を知られずに済む手紙。そして、

((動物が届けてきてくれたら、楽しいだろうし……。異性より、同性の方が心を開きやすいだろうな))

 より彼女を癒せる要素を加え、そうして『ハトの知人』が誕生したのだった。
 そして、その後。月日が流れて、8年後――

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