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第13話 ハトの知人になった切っ掛けと、内緒にする理由 マリユ視点(2)
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「…………そうか。ソフィーさんは、婚約をしたのか」
文通を始めてから8年後、今から6か月前のこと。自室で彼女からの手紙を読んでいた僕の中には、2つの感情が生まれていた。
1つめ。それは、祝福の感情。
友人が幸せになることは、とても喜ばしいこと。素敵な相手に巡り合えて、よかった。ソフィーさん、おめでとう。
僕は手紙に向かい、拍手をしていた。
2つめ。それは、落胆の感情。
僕はいつしか、彼女に恋をしていたのだ。
『人間の質は、血で決まる』。
『貴族として歩んできた歴史の長さが、よき人間を生み出す』。
これらは貴族社会では有名な『自惚れ』なのだが、彼女はソレは否だと体現していた。
真っすぐで、他者想いで、損得を考えずに行動できてしまえる。手紙を送り合っているうちにそういった面を知って、『助けてあげたい女の子』が『好きな女の子』に変化していた。生まれて初めて、恋をしていたのだ。
けれど――。それを伝えることは、できなかった――。
できるはずもなかった。
立場上直接会える機会はなく、無理やり近づくのは非常に不自然。正体を明かせば自然に近づけれるのだけれど、それは絶対にしたくなかった。
彼女にとって『ハトの知人』は、心の支えであり大切な存在。そういったもののために、ソレを利用する事はしたくなかったのだ。
「………………もし、違う形で出会えていれば――。そう考えてしまいたくなるけれど、そうであるなら『ハトの知人』は存在していなかった。ソフィーさんが無事、入院と自宅療養を乗り越えられたのだから、それでいい。当初の目的が果たせたのだから、贅沢や我が儘を言ってはいけないね」
そうして僕はこの気持ちに蓋をすると決め、エドゥアル・ラインとの恋を心から祝福することにした。引き続き、陰から見守ることにした。
だが。それから5か月後。
事態は急変し、そう言ってはいられなくなってしまうのだった――。
文通を始めてから8年後、今から6か月前のこと。自室で彼女からの手紙を読んでいた僕の中には、2つの感情が生まれていた。
1つめ。それは、祝福の感情。
友人が幸せになることは、とても喜ばしいこと。素敵な相手に巡り合えて、よかった。ソフィーさん、おめでとう。
僕は手紙に向かい、拍手をしていた。
2つめ。それは、落胆の感情。
僕はいつしか、彼女に恋をしていたのだ。
『人間の質は、血で決まる』。
『貴族として歩んできた歴史の長さが、よき人間を生み出す』。
これらは貴族社会では有名な『自惚れ』なのだが、彼女はソレは否だと体現していた。
真っすぐで、他者想いで、損得を考えずに行動できてしまえる。手紙を送り合っているうちにそういった面を知って、『助けてあげたい女の子』が『好きな女の子』に変化していた。生まれて初めて、恋をしていたのだ。
けれど――。それを伝えることは、できなかった――。
できるはずもなかった。
立場上直接会える機会はなく、無理やり近づくのは非常に不自然。正体を明かせば自然に近づけれるのだけれど、それは絶対にしたくなかった。
彼女にとって『ハトの知人』は、心の支えであり大切な存在。そういったもののために、ソレを利用する事はしたくなかったのだ。
「………………もし、違う形で出会えていれば――。そう考えてしまいたくなるけれど、そうであるなら『ハトの知人』は存在していなかった。ソフィーさんが無事、入院と自宅療養を乗り越えられたのだから、それでいい。当初の目的が果たせたのだから、贅沢や我が儘を言ってはいけないね」
そうして僕はこの気持ちに蓋をすると決め、エドゥアル・ラインとの恋を心から祝福することにした。引き続き、陰から見守ることにした。
だが。それから5か月後。
事態は急変し、そう言ってはいられなくなってしまうのだった――。
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