婚約者と幼馴染が浮気をしていたので、チクチク攻撃しながら反撃することにしました

柚木ゆず

文字の大きさ
47 / 72

第15話 ハトの知人(3)

しおりを挟む
「………………知人さん。この紅茶もパイも、貴方が淹れて、作ってくれたんですよね?」
「ええ、そうよ。だって今日は、記念すべき日なんだもの。パイは午後の3時ごろ、紅茶はさっき、腕によりをかけて準備したわ」

 アリス様は即座に頷き、テーブルの上にあるカップやお皿を見回した。
 ……やっぱり……。そういうことなんだね。

「ソフィーさん、突然どうしたの? パイと紅茶に、気になることがあった?」
「…………はい、ありました。その2つを口にして、気が付きました。アリス・ジョンピス様・・・・・・・・・・。貴方は、『ハトの知人』さんではありませんね?」

 この方は、違う。本物は――。

「本物の『ハトの知人』さんは、貴方のお兄様。マリユ・ジョンピス様ですよね?」

 紅茶に宿っていた感情と去り際の表情は、同じ。そして紅茶に含まれていた甘やさ柔らかさは、アップルパイにも含まれていた。
 そのアップルパイは、特製のザッハトルテと同様――作った人は、『ハトの知人』。なので必然的に、私のペンフレンドは――。大切な人は――。あの方になる。

「…………ようやく、分かりました。3回目の夜の、粗相の理由が」

 マリユ様ではなく、マリユさんと呼んでしまったワケ。あれは無意識的に、マリユ様から『ハトの知人』さんを色を感じていたから。
 そして、さっき。キッチンスペースへと向かわれたアリス様を、待っている際。思い返せば私は、ハトの知人様、と言っていた。
 あれも無意識的なもので、マリユさんの時とは逆。アリス様とは一面識もなく、本能的に畏まっていたため起きたこと。

「私には、8年間交流している私には、分かります。マリユ様が、知人さんなのですよね?」
「…………ふふふっ、お見事。大正解よ。ここに居るワタシは、代行者。真の『ハトの知人』は、マリユ兄様よ」

 アリス様はクスリと微笑んで立ち上がり、上機嫌でパチパチと拍手を始めた。
 え? ええ? 上機嫌……!?

「ソフィーさん、ワタシはね。他者の懐に入る事が、得意なの。相手が好む性格を演じて、こざかしい連中を手玉に取るのが好きなのよ」
「そ、そうだったのですね……」
「だから、人を『見る目』も肥えてるの。貴女なら真実に気付けると、確信していたわ」

 引き続き上機嫌なアリス様は私に歩み寄り、右方向――曰く、マリユ様の自室がある方向へと視線を動かしました。

「あの人はね、ワタシから見れば過保護が入ってるのよ」

 あの日カフェを待ち合わせ場所にした経緯。アリス様に任せた経緯。これまでの想い。キッチンスペースで明かされた想い。とある一部分は教えられないそうだけど、それら以外は全て教えてくださった。

「過保護たちは時として目を濁らせ、何かと見落としてしまうわ。……ソフィーさん」
「は、はいっ」
「そういった理由で真実に気付けたのなら、余計な言葉は不要よね? 今その胸に抱いている気持ちを、兄様に届けてあげて」
「はいっ! ありがとうございます、アリス様」

 にこやかな笑顔に、深々とお辞儀。そうして私は、

「お兄ちゃん。これは、約束の反故じゃないわよ? だってあたしは、『問われたら答えるな』とは言われていないんだもの」

 そんな温かみのある笑い声を聞きながら、マリユ様の――『ハトの知人』さんのお部屋を目指したのでした。

しおりを挟む
感想 226

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

あなたと妹がキモ……恐いので、婚約破棄でOKです。あ、あと慰謝料ください。

百谷シカ
恋愛
「妹が帰って来たので、今日はこれにて。また連絡するよ、ルイゾン」 「えっ? あ……」 婚約中のティボー伯爵令息マルク・バゼーヌが、結婚準備も兼ねた食事会を中座した。 理由は、出戻りした妹フェリシエンヌの涙の乱入。 それからというもの、まったく音沙汰ナシよ。 結婚予定日が迫り連絡してみたら、もう、最悪。 「君には良き姉としてフェリシエンヌを支えてほしい。婿探しを手伝ってくれ」 「お兄様のように素敵な方なんて、この世にいるわけがないわ」 「えっ? あ……ええっ!?」 私はシドニー伯爵令嬢ルイゾン・ジュアン。 婚約者とその妹の仲が良すぎて、若干の悪寒に震えている。 そして。 「あなたなんかにお兄様は渡さないわ!」 「無責任だな。妹の婿候補を連れて来られないなら、君との婚約は破棄させてもらう」 「あー……それで、結構です」 まったく、馬鹿にされたものだわ! 私はフェリシエンヌにあらぬ噂を流され、有責者として婚約を破棄された。 「お兄様を誘惑し、私を侮辱した罪は、すっごく重いんだからね!」 なんと、まさかの慰謝料請求される側。 困った私は、幼馴染のラモー伯爵令息リシャール・サヴァチエに助けを求めた。 彼は宮廷で執政官補佐を務めているから、法律に詳しいはず……

【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。

との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」 今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。 ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。 「リリアーナ、だからごめんってば」 「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです

天宮有
恋愛
 子爵令嬢の私シーラは、伯爵令息レヴォクに婚約破棄を言い渡されてしまう。  レヴォクは私の妹ソフィーを好きになったみたいだけど、それは前から知っていた。  知っていて、許せなかったからこそ――私はこの日の為に準備していた。  私は婚約破棄を言い渡されてしまうけど、すぐに受け入れる。  そして――レヴォクの後悔が、始まろうとしていた。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...