婚約破棄ですか？ それはこれから、私が貴方に行うものですよ？

第５話 その後のイザック達 俯瞰視点（４）

「貴様のせいだ!!」
「貴様のせいだ!!」

「貴女のせいよ!!」
「貴女のせいでよ!!」

「お前達が現れなければ、成功していたんだぞ……!!　どうしてくれる!!」
「貴方達さえいなければ、成功していたのに……!!　どう責任を取りますの!?」

　６人はそれぞれの胸倉や髪の毛を掴み、口端が裂けんばかりに絶叫します。
　ここでも彼らは、『失敗は人のせい』。この結果を生んだのは相手だと本気で考えており、理不尽な怒りをぶつけあいます。

「貴重な一枠が減ってしまったではないか!!　どうしてくれる!?」
「それはこちらの台詞だ!!　１ルピオスも手に入らなかったではないか!!」

「代わりにそちらが支払いなさい!!　さあ早く!!」
「払うのはそちらでしょう!!　伯爵家なら高価な絵や調度品があるでしょう!?　売ってそのお金を持ってきなさい!!」

「お前達さえいなければ……!!　最悪だ……っ!!」
「こんなことになるだなんて……！　この疫病神……!!」

　６人は怒鳴り合って、引っ張り合って、感情の向くままに暴れます。
　そうしてその醜い争いはその後十数分間も続き、

「……こんな者の相手をしているのは、時間の無駄だ!!　行くぞレスティラっ、イザックっ！」
「……愚者の相手をいつまでしているほど、暇ではない……!!　ゆくぞアヴァっ、マイリスっ！」

　体力が尽きたため捨て台詞を吐いて馬車に乗り込み、それぞれが次の目的地お屋敷へと向かいました。
　ですが――

「ああいった愚行を働かれる方とは、今後一切関係を持つつもりはございません」

　――捏造事件を理由に断られたり、

「……どなたですかな？　わたしの友人に、そんな顔をされた方はおりません」

　力も財もない者と関わっていても、損しかない。そんな理由で縁を切られたり、

「反省をされていないという、情報が耳に入りましたので。お断りさせていただきます」

　ハーテンス邸の門前での、大喧嘩。それが広まっていて、断られたり。
　両家は必死になって知人友人を頼りましたが、支援者は０。１ルピオスさえ得られず、その結果――

「「「ぅぁぁぁぁぁ……！」」
「「「うぁぁぁぁぁ……！」」

　全額、自力での確保が――。鉱山での数十年にも及ぶ労働が、決まってしまったのでした。