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第7話 愚か者を襲う、2つの衝撃 ジャック視点(1)

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「バズセル君。君は『ある』と豪語していたが、なかったようだね」

 なぜチャームが出てこない!? 僕は確かに置いたんだぞ!? なぜだっ!?
 もしやクローゼットを弄っていて、気が付いていた? いやっ。ヤツに悟られないよう、奥深くに――当分は触れない場所に忍ばせておいた!! それに仮に気付いているなら、『こんなものがあった!』『おかしい!』と言い出しているはずだ! じゃあ、なぜなんだ……!?
 背中に大量の汗をかきながら思考を巡らせていたら、ダニエル校長とヴァン教頭が真ん前までやってきた。

「決定的な証拠があるといいながら、ありませんでした。家宅捜索まで行わせて、これなのですから。大問題ですよ?」
「おまけに出発前の教科書の件もある。これらを加味するとやはり、コレット・ブランティス君は犯人ではないのだろうね。この件の真犯人は、君――あるいは君達。彼女が言っていたように、ノーダメージで新たな関係を作るための策略。それは、我々の邪推かのう?」

 普段の温厚さが、嘘のよう。鋭い視線が2つ注がれるようになり、

「わたくしも、そう感じておりますわ。だって……」
「教科書とコレ、だもんな」
「バズセル様とレイテルン様の言い分を信じる方が、おかしいわ」

 オーディエンスからも、大量の白い目が注がれるようになってしまった。

「ちっ、違いますよ校長殿教頭殿っ! 僕にっ、僕達にそんな感情はありませんっ! 僕は確かに見たっ、チャームを見たんですっ!」

「じゃあっ! いったいどこにあるんだっ? どこにもないじゃないかっ!」

「そっ、それは……っ。それは…………っ。それは……………………。それは………………………………」

 オーディエンスの中から飛んできた問いに、答えることができない……。
 だって、僕は確かに置いたんだ!! ヤツが絶対に見ない場所にっ、この季節は着用しないお気に入りの服の中に隠していたんだ!! 上手く隠したんだ!!

((なのに、なくて……))

 ワケが分からないんだ!! 頭がどうにかなりそうなんだ!!
 そんな状況で上手く返せるわけがないじゃないか!!

((だが……っ。返事をしないと、大変なことになってしまう……!!))

 どうすればいい……!? どうしたら、いいんだ……!?

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