婚約破棄ですか？ 私は構いませんが、このあと貴方は大変なことになってしまいますよ？

番外編 ２人で過ごす初めてのクリスマスと、聖なる夜 俯瞰視点（４）

「結婚式の日にルビーのブレスレットをプレゼントする。夫婦となって５年後に、『ニトケラの湖』でチョーカーを贈る。10年後にはエメラルドの指輪をプレゼントする等々。この国には他にも言い伝えや伝統があり、それらはすべて行うつもりだ」

　この国に存在する、それ以外の言い伝え。同じく恋人であり夫婦の定番となっているものを順に挙げてゆき、それらの実行を宣言します。

「けれどその際も必ず、君を最優先とする。儀礼的ではなく、その時のコレットに一番似合うと確信したものだけを贈らせてもらう。だから――。これからも貴方の傍で貴方を見続け、貴方という人を愛し続けさせていただきます」

　そうしてシルヴァンはコレットの背後に回り、やがて彼女の胸元ではダイヤモンドが輝くようになりました。
『プレゼントした際は、男性がつける』。そういった決まりがあるのですが、こちらもそういったものが理由ではありません。愛する人に自らつけたい――。そういった強い思いと想いがあるため、このように動いたのです。

「………………うん、よく似合ってる。ますます綺麗だ、コレット」
「……シルヴァン様……っ。プレセントだけではなく、こんなにも幸せになるお言葉と想いまで頂けて……っ。人生の中で最も、幸せなクリスマスとなりました……っ」
「それはよかった。でもね、これが一番ではない。なぜだか分かるかな？」
「ええ……っ。『生涯、薔薇の道をエスコートしていく』と、仰ってくださったからですよね？」

　あの時の言葉は、何よりも大切な言葉です。忘れるはずが、ありませんでした。

「ああ、そうだね。……これからもずっと今夜のような、ううん。今夜以上の、だな。棘のない薔薇の道の上で君の手を引いてく。コレット、楽しみにしていてください」
「はいっ、そうさせていただきます……っ。シルヴァン様っ、ずっと……っ。私を導いてください……っ」

　コレットは嬉し涙を零し、それを見たシルヴァンは優しく微笑んで。そうした２人の顔が、ゆっくりと近づいてゆきます。

「……コレット」
「……シルヴァン様」

　そして互いの距離はやがて０となり、唇と唇が触れ合います。
　この行動は初代国王夫妻のソレと同じですが、もちろん――。２人は自らの意思で口づけを交わし、大切の人を、愛を、聖夜の幸せと共に感じ合ったのでした――。