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第9話 動き出す、企み(2)
しおりを挟む「貴様ら、何者だ……。何を企んでいる……!」
「じいさん、聞こえなかったのか? 数秒前に、『お前達はここで死んじまう』って言ったろ」
「オレらが企んでるのは、アンタら2人の殺害。殺って欲しいって依頼を受けたんで、あの時みたいに仕事をするんだよ」
取り囲んでいる4人はケラケラと笑い、懐から刃物を取り出しました。
ケベックさんは、どうにか脱出しようとしてくれていましたが……。これでは、難しいです……。
「そうだぜお嬢さん、抵抗してもムダ。もうどうしようもできねーんだよ」
「メリッサ・ハンナは足を滑らせ、墓に頭をぶつけて死亡。御者のケベック・ラディオは狼狽しながら搬送しようとして、その結果操縦を誤り事故死。こういう未来が確定してるんだよ」
「ここは私有地で、他には誰も立ち入らない。詰んでんだよ」
坊主頭の男性、眼鏡をかけた男性、短髪の男性はニヤニヤと言葉を繋いでゆき、そのあと長髪の男性が――リーダー格の男性が、一歩前に出ました……。
「てなワケで、死亡確定。あの世逝き確定。だから冥土の土産として、とあるメッセージがある。『お嬢ちゃんを絶望させる』のもあちらさんの要望だから、しっかり聞いて絶望してくれよ?」
「…………絶望、ですか……。それは、依頼者は叔父達、という内容ですね……?」
この4人は、わたし達を狙っている。この時間、ここに来ることを知っている。他殺には見えないように殺そうとしている。
それらを鑑みると、流石に分かります。犯人は、叔父達です。
「……まさかあの者達が、ここまでするとは……っ。旦那様達の死から悪事を学ぶなんて、この上ない蛮行愚行だ……!!」
「かははっ、じーさん違げーよ。クレモンさんはあの事故を利用して、悪事を学んじゃいねーよ」
「さっき、『あの時みたいに』って言ったろ? 要するに俺達は、前にも依頼を受けているんだよ。彼からね」
な……。
で、でしたら……。
でしたら…………。
あの、出来事は――
「嬢ちゃんの、思ってる通りだ。アレは、偶然ではなく必然の悲劇。クレモンさんから依頼を受けて、俺らが事故に見せかけ殺したんだよ」
どうやって捏造したか。死に際にはどんな表情をしていたか。報酬をいくらもらったか等々。
知りたくもなかった情報を、次々と知得してしまい……。ケベックさんは天を仰ぎ、わたしはへたり込んでしまいました。
「お嬢ちゃんんは勘違いしていたが、絶望させるポイントは『今回の依頼者は叔父達』じゃねーんだ。『今回も前回も、依頼者は叔父達』、だったんだよ」
「ライグ坊ちゃんは、前々からお前を憎んでいてな。そのため、どん底に落としてからの殺害を熱望されていたんだが――。十二分に、絶望したみたいだな」
「ぁ、ぁぁぁ……。そんな……。わたしは……。お父様とお母様を、殺した、人達と……。ずっと、いっしょに、いた……」
全身から血の気が引いて、頭の中がグルグルと回る錯覚に襲われます。
そんな人達と、何年も過ごして……。何度も、言葉を交わして……。毎年、お墓を訪れていた……。
こんなに恐ろしいことは……。ありま、せん……。
「お父様……。お母様……。ごめん、なさい……。なにも、気付けなくて……。そんな人達を、自由にさせていて……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」
「おいおい。パパとママへの謝罪は、ここじゃなくてあっちでしろよ。そうした方がしっかり届くぞ」
リーダー格の男性が、ほくそ笑みながら近づいてきます。
ケベックさんもわたしも、もう、抵抗する気力がなくて……。もう、駄目です……。私は、殺されて、しまいます……。
「……お父様、お母様……。ごめんなさい……」
お二人の無念を……。晴らすことは、できませんでした……。
ごめん、なさい。
「……エリー君……。ごめんなさい……」
お土産を持って帰ることは、できませんでした。
今度こそちゃんとお礼をしたかったのですが、それもできませんでした。
ごめん、なさい……。
「だーかーらー、謝罪はあっちでしろって言ってるだろ。……うるせぇから、墓にぶつけてとっとと黙らせるか」
長髪の男性は舌打ちをして、太い右手が伸びてきます。
その手は、お父様やお母様の命を奪った手。おぞましくて恐ろしいものが、ゆっくりと近づいてきて――
「汚い手でメリッサに触れるな。貴様らが優位の時間はもうおしまいだ」
――その手は――。聞き覚えのある声によって、動きを止められたのでした。
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