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第14話 終演 叔父クレモン視点(2)
しおりを挟む「小雨の影響が、あったのだろうな。お前が押しのけた拍子に足を滑らせ、石段に後頭部を打ち付けたのだよ」
顔を向けると、イネスが動かなくなっていて……。エリオスが――メリッサの目を手で塞いでいるエリオスが、淡々と状況を解説した。
そ、そんな……。オレが……。オレが、イネスを……。
「イネスを……。ころ、した……?」
「そうだな。お前は、メリッサを石にぶつけて殺そうとしていたが――。代わりに、愛しの妻がぶつけてしまったのだよ」
「ぁ、ぁぁぁぁぁ……。しっ、死ぬな、イネス……っ! 死なないでくれ、イネスぅ……っ!」
覗き込んで、呼びかける。
肩を掴んで、呼びかける。
何度も何度も、呼びかける!!
だが……。
反応は、一切なく……。息を吹き返すことは、なかった……。
「そんな……。そんな……っ。そんな……っっ。ぁぁぁぁぁ! ぁぁああああああああああああああああああああああ!!」
「分かったか、クレモン。それが、大切な人を失う悲しみだ」
ヤツは冷たい声音を発し、更には――
「………………」
「分かったか、イネス。それが、お前達が行おうとしてきたことだ」
「………………」
「分かったか、ライグ。これが、因果の応報だ」
――2人に対して鋭い視線を注ぎ、やがてオレは治安所員に拘束された。
「ぁぁぁぁぁ……。うわぁああ……。あぁぁああああああああ……」
「安心しろ。裁判が済めば、お前もライグも、すぐ後を追える。地獄で家族3人仲良く暮らせるだろうよ」
「い、嫌だ……。この世で、3人で、暮らしたい……。時間よ、戻れ……っ。頼む……っ。戻ってくれ……!!」
「俺は――メリッサも、何度もそう願ったが実現しなかった。時の流れは決して、後ろには向かないのだよ。……これ以上は、目の毒だ。続きは牢獄で行うといい」
それを合図に連行が始まり、
「待てっ! 待ってくれ!! せめてあと少しだけでも、イネスの傍にいさせてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「大罪人の頼みを聞く道理などない。そうして無様に叫び続け、後悔しながら死を待つといい」
「はなせっ! はなせぇっ!! はなせぇぇぇぇっ!! イネスのそばにぃぃぃぃっ!! イネスといっしょにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ――か、は……」
千切れそうな程に右手を伸ばしていたら、腹部に激痛が走った。
もっと、みていたい、のに……。めのまえが、まっくらに、なっていて……。おれのいしきは、とだえ、た……。の、だった……。
〇〇〇
その後――。各新聞社発行の新聞には、このような文字が大々的に掲載されたのでした。
《ハンナ夫妻転落死事件の真犯人、逮捕》
《クレモン、ライグ両被告の刑が確定。実行犯の4人と共に、即日死刑が執行されました》
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