婚約破棄が嬉しかったのでおもわず笑ってしまったら、それを見た元婚約者様が怯え始めたようです

柚木ゆず

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第2話 学院を去ったあと~屋敷内での出来事~ ノエル視点(1)

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「なあっ⁉ こっ、婚約を破棄されてしまった!? がっ、学院を自主退学してきただと!?」
「ノエル何を言っているの!? たちの悪い冗談はやめて頂戴っ!!」
「お父様お母様、こちらはたちの悪い冗談ではありません。どちらも事実ですよ」

 エントランスでは二人が限界まで目を見開いていて、私は静かに首を左右に振った。
 婚約破棄も退学も、実際にあったこと。そのため丁寧に事情を説明したら、今度は揃って頭を抱え始めた。

「証人たちを用意されてしまっていて、捏造を否定できないだと……!? なんてことだ…………‼」
「侯爵家との繋がりがなくなっただんて……!! おまけに……慰謝料すら発生しないだなんて……!! 悪夢だわ……っ!!」

 マランお父様とルシールお母様。この人達は私を『自分達が幸せになるための道具』としか思っておらず、あの婚約はそんな目的をもとに成立していた。

『ノエルに興味を持ったのだが、彼女はどうやら俺に興味がないようでね。卿、どうにかならないものかな?』
『あっ、ありがとうございます!! ご安心くださいませっ! 大至急無礼を叱り、言い聞かせます!!』
『オラース様のような御方に興味を持てないなんて、なんと愚かなのかしら……っ!! 早く大きな勘違いを分からせないといけませんわ!!』

 今から、2年と5か月前。オラース様は入学式の日に所謂一目惚れをされて、その結果私は無理やり婚約をさせられた。

 自分勝手で我が儘で、イエスマンにならないと怒り出す面倒くさい人。とにかく女性好きで、自身のお家が雇う使用人に頻繁に手を出してもいる人。

 逆らうと食事抜きや平手打ちが待っているので、そんなオラース様と関係を持たないといけなくなってしまって……。おまけにこの方は性格がアレなため、一緒の時間を過ごすうちに本物の好意を抱くようになったフリをしなければならなくなって……。
 学院を卒業すれば――結婚ができるようになれば即、こんな方と結婚をしなければならなくなってしまったのだった。

『お父様、お母様。今ならまだどうにか対応できますので、どうかお考え直しを。オラース様は、あまりにも問題がある方で――』
『ノエル、しこついぞ‼ お前は黙って我々に従っていろっ!』
『これまで沢山の時間とお金をかけて、貴方を育ててあげたのだからね。そろそろ恩返しをしてもらわないと困るわ』

 貴族の家に生まれたのだから、政略結婚は覚悟していた。けれどこの関係は明らかに破滅が見えていて、今回のソレは承服できなかった。
 だから自力で結婚を回避できる方法を考えていて、およそ2年の月日が流れた頃――

「ありがとう、ミリア。貴方のおかげで光が見えたわ」

 ――邸内で最も親しくしている、お姉さんのように慕っている侍女。彼女の協力によって、回避する方法が――貴族籍を捨てて家を出ても生きていける方法が、見つかったのだった。

((……残る問題は、オラース様ね。あの方は私を強く求めているから、姿を消したら全力で捜索を始めてしまうはず……))

 あとはソコだけなのだけれど、どうしましょうか……?
 そう考えていた時に、

『ノエル・ラーデルン! この瞬間をもって、お前との婚約を破棄する!!』

 私に興味を失くすという、嬉しいハプニングが発生してくれた。
 なので私は大喜びで罪を受け入れ、こうしてお屋敷に戻って伝える。そしてここを去る準備――は、まだしない。そうする前に一つ、お父様とお母様にこれまでの『お礼』をすることにしたのだった。

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