婚約破棄をされてお屋敷を追い出されてしまった私を救ってくれた人は、幼い頃に助けた小さなドラゴンでした

柚木ゆず

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第10話 粛清その1(1)

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「アリシアちゃん、お待たせ。息苦しくはなかったかな?」
「ううん、大丈夫。大事に持ってくれたおかげで、平気だったよ」

 丁寧に床へと降ろしてもらい、ソラ君の右手を見つつ首を振る。
 落ちたり振り落とされたりしないように、大きな手で包んでくれていた。身体は竜でも中身はソラ君だから、心地良さしかありませんでした。

「完全な竜化は、かなり体力を使うんだよね? ソラ君の方こそ、しんどくない?」
「この程度なら、悪影響は皆無だよ。……それじゃあ体調確認が済んだことだし、本題に入ろうか」

 ソラ君の顔が4人を向いて、途端に目の色が変わる。瞳からは優しさが消えて、厳しさと覇気のあるものになりました。

「君達は僕の大切な人に、様々なことをしてくれた。今日はそのお礼に来たんだよ」
「まっ、待ってくれ! 貴方の言い分は全く理解できないっ! 俺達は身に覚えがなく、それは彼女が貴方を唆しての――」
「だったら、一つずつ説明していこう。……お前が知らない部分も含めて、ね」

 言い訳をしようとしていた殿下を遮り、その鋭い目はエミに注がれました。

「まずは、お前達家族が知らない蛮行から始めよう。知らない蛮行とは、エミ・ナーズはアリシア・ロッザに呪いをかけ、美しさを吸い取ってたこと。そこにいる彼女の美は、偽りのものなんだよ」
「「「!?」」」
「なっ!? え、エミ……。それは、本当なのか……!?」
「うっ、嘘っ! 真っ赤な嘘ですわっ! この美貌は本物っ! あの女がブスになったのは偶然で、わたくしは無関係ですわっ!!」

 自分の胸元に手を当てながら殿下達を見渡し、目を剥いてわたしを鋭く指さす。
 だけど。

「そういえば……。この子達の美しさは、反比例していたわ……」
「う、うむ……。言われてみると、そうだな……」
アリシア姉さん・・・・・・コイツ・・・は、逆になってる。怪しい、よね」
「あ、ああ。無関係だとは、思い難い……」

 フィリップ殿下達の信用は得られず、それを眺めていたソラ君は僅かに目を細めた。

「どうやら、気付き始めたようだね。じゃあこれから、その疑惑が確信になるものを見せてあげるよ」
「っっ! 貴男は……っ。何もかも、知っていますのね……っっ!?」
「おや? 『何もかも』? 潔白を主張していた者とは思えない発言だね」
「そっ、そんなの今は関係ない! 知ってるんでしょっ!?」

 ソラ君の声調と態度を見て、隠せないと悟ったんだと思う。エミは昔のような口調になって、声を張り上げたのでした。

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