婚約破棄をされてお屋敷を追い出されてしまった私を救ってくれた人は、幼い頃に助けた小さなドラゴンでした

柚木ゆず

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第10話 粛清その1(2)

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「エミ……!? そ、その喋り方はいったい……!? おまけに、目付きまで別人のようだ……。なにかに憑りつかれた――憑りつかれていた、のか……?」
「アリシアちゃんによると、それが本当の性質らしい。何かがあって変わったのではなくて、素が出ただけだね」

 すっかり別人のようになっている姿に驚いている殿下を一瞥し、ソラ君の視線はエミへと戻りました。

「知っているのか? もちろん、何もかもを知ってるよ。君がこれまでなにをやってきたのかをね」
「………………へぇ、そうなのね。ふふふふふふ。そうなんだぁ」
「おや、急に笑い出すなんて。どうしたんだい?」
「………………だったらさあ、解呪についても知っているんでしょ? どうせ何もかも失ってしまうのなら……。アリシアお前も道ずれにしてやるわっっ!!」

 歯を剥いて胸元に手を突っ込み、つけていた2つのネックレスを首から乱暴に引きちぎる。
 あれのトップにあるものが、ソレ。赤と青の宝石が、呪いの道具です。

「御存じの通り、これを床に叩きつければ奪われた美は戻ってこなくなるっ! 一生その醜い姿のままよ!!」
「っ、やめないかエミっ!! これ以上罪を重ねるのはやめろ!!」
「そうだやめないか!! それ以上相手を刺激するな!!」
「やめなさい!! すぐに!!」
「やめろっ! 止まれ!!」

 殿下、陛下、妃殿下、第二王子殿下も、目を見開き声を張り上げる。
 わたしのため、ではなく――。自分達の保身のために。

「嫌よ! お断りよ!! 自分だけ堕ちるものかぁあああああああああああああああ!!」
「くっ! こうなったら――」

 言葉での制止は無理だと悟り、殿下が手を伸ばし始めます。
 ですがそれは、間に合いそうにない。その行動よりも早く、エミが動き出します。

「殿下も竜のお前もっっ、止めようとしたって無駄よ!! アンタ達が近づく前にっっ!! こうやってねえっっ!! どっちも床に叩きつけられるんだか…………ら…………?」

 右手を思い切り振り抜いたエミは、呆然としてネックレスを見つめる。

「「「な…………」」」

 殿下と陛下と妃殿下と第二王子殿下も、同様に呆然としてネックレスを見つめます。
 なぜなら――。そのネックレスは床に当たる直前に止まり、まるで糸で引っ張られているかのように、ソラ君の手元に飛んでいったのですから。


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