婚約破棄をされてお屋敷を追い出されてしまった私を救ってくれた人は、幼い頃に助けた小さなドラゴンでした

柚木ゆず

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エピローグ(下)

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「ソラ君、わたしを好きでいてくれてありがとう。…………わたしもね、ソラ君が大好き……!」

 これは――。生まれて初めて誰かを好きになって、そんな人にする人生で初めての告白。
 だから、なのかな? ここに至るまでに、自分が何を言ったのかをあまり覚えていない。つい数十秒前の出来事のはずなのに、殆ど覚えていない。

『突然ごめんね。お邪魔します』

 王宮内にあるソラ君の私室を訪ねて、『あのね』と始めたのは覚えている。
 記憶にあるのは、そこまで。
 そこからは多分、感謝とか気持ちの変化とかを伝えたんだと思う。使用させてもらっている賓客室を出る前に浮かんだ言葉を、全部打ち明けたんだと思う。

 この場で伝えたい事は山ほどあって、実際に沢山口にしたはずなのに。気が付いたら想いの全てを伝えていて。
 そして――。

「そう言ってもらえて、本当に嬉しいよ。……改めて僕からも、伝えさせてください。アリシアちゃん、ずっと君を大好きでした」

 ソラ君は、品よく爽やかに笑みを浮かべてくれて。わたしの右手を取って片膝をつき、優しく口づけをしてくれました。

「不思議な生き物にも関わらず必死に看病してくれて、何度も何度も温かい励ましの言葉をかけてくれて、あの日の僕は、心も体も救われた。それ以来その清廉な優しさがずっと忘れられなくて、この気持ちが成就するなんて夢みたいだよ」
「わたしもね、すごく嬉しくて幸せ。受け入れてもらえるって、こんなに幸せになる事だったんだね……っ」

 殿下の時も似たようなことを言われたけど、あの時とはまるで違う。勝手に頬が緩んで、笑顔が止まらない。

「ソラ君。貴方ともっともっとお喋りをしたいし、一杯一杯一緒の思い出を作りたい。これから――これからも、よろしくお願いしますっ」
「僕も、全く同じ気持ちだよ。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 わたし達はペコっと頭を下げて見つめ合い、揃って破顔一笑。一緒に幸福を感じ合って、また微笑み合う。

「…………見つめ合っているだけで幸せだなんて、不思議だよね。暫くこのままでいたい、そう思えるよ」
「わたしも、そうだよ。じゃあ恋人になって最初の思い出は、『見つめ合う』だね」

 陛下達への報告とか結婚の準備とか、ソラ君の名を汚さないための花嫁修業とか。これからやらないといけないことは山ほどあるけど、今はこの時間を大事にしたい。この気持ちに、浸っていたい。

「……アリシアちゃん。ずっと、一緒にいようね」
「……うん。ソラ君、ずっと一緒にいようね」

 視線と言葉で喜びを共有して、やがて、お互いに一歩だけ前に進む。
 好きな人としたいことといえば…………やっぱり、アレ。わたし達は、次の思い出作りを始めるのでした。

「アリシアちゃん。愛してる」
「ソラ君。わたしも、愛してる」

 2つ目の思い出の名前は、キス。
 愛する人の柔らかさと体温を一緒に感じて、また微笑み合う。そしてもう一度口づけを行い、もう一度微笑み合う。

 なんだか同じことの繰り返しだけど。わたしもソラ君も、こうしていたい。

 この人となら、おんなじことを何回やっても幸せ。微笑み合うたびにもっと胸の奥があったかくなって、唇を重ねるたびにもっともっと幸福感で満たされる。

 話に聞いていた『恋人になってすること』とは、ちょっと違ってる。
 だけど。わたし達の心は、幸せで一杯。嬉しくて嬉しくて、まだ止められない。止めたくない。

「…………ねえ、ソラ君。こういうのって、わたし達らしいかもしれないね」
「そうだね、アリシアちゃん。僕達らしいね」

 出会いが特殊なわたし達の恋は、これでいいと思う。
 自分達がやりたいと思うことを、順にやっていけばいいと思う。

 なので。

 わたしとソラ君はみたび唇と唇を重ね、じっくりと、お互いが満足するまで。その愛を、一緒に確かめ合うのでした――。


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感想 13

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みんなの感想(13件)

こすや
2024.03.08 こすや

エミの苦痛ぶりが 「」のセリフが 全部 平仮名なので 読んでいてもすごく伝わってきますね‼️ 呪い返しの反動 凄い‼️
次は王子と王族の 手のひら返しと媚び媚び がみられるかな(笑)

解除
こすや
2024.03.07 こすや

エミ………自業自得ですね……
エミの叫び………『北斗の👊』の雑魚のやられる時を想像してしまいました(笑)

解除
こすや
2024.03.02 こすや

ヌフフフ
フィリップとエミ の絶望の始まりだわ‼️
フィリップも なかなかどうして 悪いヤツでしたね………心根があかん!
エミ 思いっきりやられちゃって‼️

楽しみです!
性格悪い?わたし………( *´艸`)

解除

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