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第10話 予想外の言葉 アメリ視点(1)
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「「セレステ様から、わたし(わたくし)達を助けてくださる!? え……!? え……っ!?」」
応接室でわたし達を待っていたのは、少しも予想していなかった言葉。それがあまりにも想定外で、お母様と顔を見合わせてしまった。
「ま、マエル様……。どうして、その件を……?」
「なぜわたくし達が、その件で懊悩していると……。ご存じ、なのですか……?」
「それは今日学院で、彼女に頼まれたからですよ。2人を助けて欲しいと」
対面に座られているマエル様は、その隣を――お姉様を一瞥したあと、説明をしてくださった。
わたしがマエル様を欲しくなって、断られたから力ずくで奪おうとしていたコト。
それを実現するために、ニフェエル侯爵家のセレステ様に協力を仰いだコト。
一昨日の指摘に対する反応で作戦が台無しになって、セレステ様のご機嫌を酷く損ねてしまったコト。
お姉様はそれらを、マエル様に伝えていた……。
「ロゼはこれまで散々な仕打ちを受けてきましたが、それでも、2人は家族。家族がどうしようもない窮地に陥って無視できなくなり、そう訴えてきたのですよ」
「「………………」」
「正直に言うと、貴方がたの本性を知って、相当に思うところがある。感情に身を任せたくなりました」
っっ!!
貫かれそうな鋭い視線を向けられて……。そうされていたマエル様は、大きくため息を吐かれた。
「けれど――。最愛の人の願い、望みに、応えないワケにはいかない。そこで2つの要求の実現と引き換えに、手を差し伸べることにしたのですよ」
要求……? それって……? そう思っていると、再びお姉様に視線が動いた。
「一つめの要求、それは今日からロゼがザルテーラス邸で暮らすことを認めること。……僕としては、悪意が満ちていた場所に婚約者が居るのは落ち着かない。けれど未成年の状態でそれを実現するには、両親の許可が必要となる。そこでこの書類にサインを行い、その許可を出していただきたいのですよ」
「そっ、そんなコトだったら喜んで致しますっ! ねっ、お母様っ!!」
「ええっ! 即致しますわ!!」
だって、何一つダメージがないお願いなんだもんっ。お母様はサインを行い、部屋を飛び出して――室外で待機していたお父様のサインも取ってきて、マエル様にお渡しした。
「……では、二つ目の要求にまいりましょうか。そちらは、貴方がたが取り上げた形見の返却。ロゼの大事なものを、返していただきたいのですよ」
「っ、分かりました!! お母様っ!」
「えっ、ええっ! すぐお持ちいたします!!」
こっちも、大したコトのない要望なんだもんっ! またお母様は飛び出してアクセサリーを持ってきて、両手でお姉様に渡した。
「ま、マエル様っ。わたくし共は、ご指示に従わせていただきました!」
「で、ですので……っ」
「ええ。我がザルテーラス侯爵家の力を使い、貴方がたを助けましょう。とはいえニフェエル家は同格でして、大人しくさせるには罠を張る必要があります。そこでアメリには、明日僕の言う通りに動いて欲しいんだよ」
確かに同じ侯爵家だから、簡単にはいきませんよねっ。
マエル様っ。わたし達は、どうすればいいんですかっ? 喜んで動きますから、なんでも仰ってくださいっ!
応接室でわたし達を待っていたのは、少しも予想していなかった言葉。それがあまりにも想定外で、お母様と顔を見合わせてしまった。
「ま、マエル様……。どうして、その件を……?」
「なぜわたくし達が、その件で懊悩していると……。ご存じ、なのですか……?」
「それは今日学院で、彼女に頼まれたからですよ。2人を助けて欲しいと」
対面に座られているマエル様は、その隣を――お姉様を一瞥したあと、説明をしてくださった。
わたしがマエル様を欲しくなって、断られたから力ずくで奪おうとしていたコト。
それを実現するために、ニフェエル侯爵家のセレステ様に協力を仰いだコト。
一昨日の指摘に対する反応で作戦が台無しになって、セレステ様のご機嫌を酷く損ねてしまったコト。
お姉様はそれらを、マエル様に伝えていた……。
「ロゼはこれまで散々な仕打ちを受けてきましたが、それでも、2人は家族。家族がどうしようもない窮地に陥って無視できなくなり、そう訴えてきたのですよ」
「「………………」」
「正直に言うと、貴方がたの本性を知って、相当に思うところがある。感情に身を任せたくなりました」
っっ!!
貫かれそうな鋭い視線を向けられて……。そうされていたマエル様は、大きくため息を吐かれた。
「けれど――。最愛の人の願い、望みに、応えないワケにはいかない。そこで2つの要求の実現と引き換えに、手を差し伸べることにしたのですよ」
要求……? それって……? そう思っていると、再びお姉様に視線が動いた。
「一つめの要求、それは今日からロゼがザルテーラス邸で暮らすことを認めること。……僕としては、悪意が満ちていた場所に婚約者が居るのは落ち着かない。けれど未成年の状態でそれを実現するには、両親の許可が必要となる。そこでこの書類にサインを行い、その許可を出していただきたいのですよ」
「そっ、そんなコトだったら喜んで致しますっ! ねっ、お母様っ!!」
「ええっ! 即致しますわ!!」
だって、何一つダメージがないお願いなんだもんっ。お母様はサインを行い、部屋を飛び出して――室外で待機していたお父様のサインも取ってきて、マエル様にお渡しした。
「……では、二つ目の要求にまいりましょうか。そちらは、貴方がたが取り上げた形見の返却。ロゼの大事なものを、返していただきたいのですよ」
「っ、分かりました!! お母様っ!」
「えっ、ええっ! すぐお持ちいたします!!」
こっちも、大したコトのない要望なんだもんっ! またお母様は飛び出してアクセサリーを持ってきて、両手でお姉様に渡した。
「ま、マエル様っ。わたくし共は、ご指示に従わせていただきました!」
「で、ですので……っ」
「ええ。我がザルテーラス侯爵家の力を使い、貴方がたを助けましょう。とはいえニフェエル家は同格でして、大人しくさせるには罠を張る必要があります。そこでアメリには、明日僕の言う通りに動いて欲しいんだよ」
確かに同じ侯爵家だから、簡単にはいきませんよねっ。
マエル様っ。わたし達は、どうすればいいんですかっ? 喜んで動きますから、なんでも仰ってくださいっ!
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