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第1話 予想外の夜 シャルリー視点(1)
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「あら、お嬢様……? 眠れませんか?」
「ええ、そうなの。……きっと、パーティーの打ち合わせ――のあとが原因ね」
女生徒専用の寄宿舎『リリー』もすっかり静かになっている、深夜の二時過ぎ。わたしは窓の外に見える学舎を見つめながら、侍女に微苦笑を向ける。
『シャルリー、ちょうどいいところに居てくれた。明後日出席するパーティーの件で話があるんだ』
『………………』《コクリ》
あれから人気(ひとけ)がない場所に移って相談をして、それが終わったらエタン様にたっぷりと八つ当たりをされた。
『ああそうだ』
((???))
『前から思っていたが、お前は字を書くのが遅い。こんなに遅いやつは見たことがないぞ』
『お前は、頭が悪いから気付かないのだろうな。遅いということは、相手が待つ時間も多くなるということなんだぞ』
『お前のせいで、意思疎通を取る方法はコレしかなくなっているんだぞ? 俺を待たせるな』
『まったく、普通は相手を困らせないように早くなろうと努力するものなのに。お前ときたら……』
などなど。『鼻で笑う』や『舌打ち』を織り交ぜながら、15分近くグチグチ言われ続けたのです。
「眠ろうとして目を閉じると、あの時の声や表情が目を閉じると蘇ってきちゃってね。いつまで経っても眠気が来てくれないの」
「……そうでしたか……。あの方も、本当に困ったものですね……」
エタン様は所謂俺様気質で、下手(したて)に出たりご機嫌取りをするのが大嫌い。しかしながらクラスメイトに格上――な上に密かに敵視している方がいらっしゃって、家と家の関係を考えると所謂ペコペコしないといけない。
そのストレスが一定以上溜まると、わたしにぶつけて発散するのです。
「カモミールをお淹れしましょうか?」
「ありがとう、気持ちだけもらっておくわ。今回は、外に出て星を見ようと思う」
残念ながら、ちょっとやそっとじゃ寝付けそうにない。こういう時は趣味に触れるのが一番なのです。
「ごめんなさい。付き合ってもらえるかしら」
「もちろんでございます。こちらをお召しになられて…………準備が整いましたね。参りましょう」
「こういう時は、部屋が一階でよかったと思うわね。レディにあるまじき行動だけど、今日も大目に見ていただきましょう」
不審な者は絶対に侵入できないようになっているとはいえ、念のため一人での行動は厳禁。門限はとうに過ぎているから――玄関から出入りできないから、レニアに手伝ってもらって窓から外へと出ました。
(お嬢様、今日はどちらでご覧になられますか?)
(そうね……。中庭にするわ)
この時期この時間は、あそこが一番星座を綺麗に見える。わたし達は満月の光に照らされながら左方向へと3分ほど歩いて『女生徒用宿舎エリア』から学び舎がある『学院エリア』に入り、更に3分ほど進んで無事目的地に到着したのでした。
「敷物の用意が出来ました」
「ありがとう」
着くと芝生の上にシートを敷いてくれて、その上に座って仰向けになる。
座ったまま空を仰ぐよりこうやって寝そべる方が一体感を得られるので、わたしはいつもこの体勢で行うのです。
「……………………」
「……………………」
星座の鑑賞はとある方に影響されて2年前に始め、レニアと共にどっぷりとハマった趣味。わたし達は揃ってシートに背をつけ、澄み切った夏の夜空を眺めます。
「……………………」
「……………………」
学院内では喋ることができないから、レニアといる時は本当によく喋ってしまう。でもこの時だけはお互い無言で、それぞれ自分の世界に浸る。
「……………………」
「……………………」
わたしはこの時期で一番好きな『へびつかい座』を、レニアは『さそり座』を眺め、心の中にあるモヤモヤを放出していって――
「???」
「???」
――いる、そんな時でした。不意に、茂みの向こうからこんな声が聞こえてきたのでした。
「寄宿舎から見て、南南西。ここで合ってるな」
「ええ、そうなの。……きっと、パーティーの打ち合わせ――のあとが原因ね」
女生徒専用の寄宿舎『リリー』もすっかり静かになっている、深夜の二時過ぎ。わたしは窓の外に見える学舎を見つめながら、侍女に微苦笑を向ける。
『シャルリー、ちょうどいいところに居てくれた。明後日出席するパーティーの件で話があるんだ』
『………………』《コクリ》
あれから人気(ひとけ)がない場所に移って相談をして、それが終わったらエタン様にたっぷりと八つ当たりをされた。
『ああそうだ』
((???))
『前から思っていたが、お前は字を書くのが遅い。こんなに遅いやつは見たことがないぞ』
『お前は、頭が悪いから気付かないのだろうな。遅いということは、相手が待つ時間も多くなるということなんだぞ』
『お前のせいで、意思疎通を取る方法はコレしかなくなっているんだぞ? 俺を待たせるな』
『まったく、普通は相手を困らせないように早くなろうと努力するものなのに。お前ときたら……』
などなど。『鼻で笑う』や『舌打ち』を織り交ぜながら、15分近くグチグチ言われ続けたのです。
「眠ろうとして目を閉じると、あの時の声や表情が目を閉じると蘇ってきちゃってね。いつまで経っても眠気が来てくれないの」
「……そうでしたか……。あの方も、本当に困ったものですね……」
エタン様は所謂俺様気質で、下手(したて)に出たりご機嫌取りをするのが大嫌い。しかしながらクラスメイトに格上――な上に密かに敵視している方がいらっしゃって、家と家の関係を考えると所謂ペコペコしないといけない。
そのストレスが一定以上溜まると、わたしにぶつけて発散するのです。
「カモミールをお淹れしましょうか?」
「ありがとう、気持ちだけもらっておくわ。今回は、外に出て星を見ようと思う」
残念ながら、ちょっとやそっとじゃ寝付けそうにない。こういう時は趣味に触れるのが一番なのです。
「ごめんなさい。付き合ってもらえるかしら」
「もちろんでございます。こちらをお召しになられて…………準備が整いましたね。参りましょう」
「こういう時は、部屋が一階でよかったと思うわね。レディにあるまじき行動だけど、今日も大目に見ていただきましょう」
不審な者は絶対に侵入できないようになっているとはいえ、念のため一人での行動は厳禁。門限はとうに過ぎているから――玄関から出入りできないから、レニアに手伝ってもらって窓から外へと出ました。
(お嬢様、今日はどちらでご覧になられますか?)
(そうね……。中庭にするわ)
この時期この時間は、あそこが一番星座を綺麗に見える。わたし達は満月の光に照らされながら左方向へと3分ほど歩いて『女生徒用宿舎エリア』から学び舎がある『学院エリア』に入り、更に3分ほど進んで無事目的地に到着したのでした。
「敷物の用意が出来ました」
「ありがとう」
着くと芝生の上にシートを敷いてくれて、その上に座って仰向けになる。
座ったまま空を仰ぐよりこうやって寝そべる方が一体感を得られるので、わたしはいつもこの体勢で行うのです。
「……………………」
「……………………」
星座の鑑賞はとある方に影響されて2年前に始め、レニアと共にどっぷりとハマった趣味。わたし達は揃ってシートに背をつけ、澄み切った夏の夜空を眺めます。
「……………………」
「……………………」
学院内では喋ることができないから、レニアといる時は本当によく喋ってしまう。でもこの時だけはお互い無言で、それぞれ自分の世界に浸る。
「……………………」
「……………………」
わたしはこの時期で一番好きな『へびつかい座』を、レニアは『さそり座』を眺め、心の中にあるモヤモヤを放出していって――
「???」
「???」
――いる、そんな時でした。不意に、茂みの向こうからこんな声が聞こえてきたのでした。
「寄宿舎から見て、南南西。ここで合ってるな」
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