初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第1話 予想外の夜 シャルリー視点(2)

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「!?」
「!?」

 部屋を出たのが深夜2時過ぎで、今はもう2時半を回っています。こんな時間に他にも人がいるだなんて予想外で、心臓が大きく跳ねました。

(お、おじょ――むぐ!?)

 慌てて右手を動かし、レニアの口を塞ぐ。
 今の言葉、不穏な気配を感じました。見つかってしまったら危害を加えられる可能性がある以上、こちらの存在を感知されてはいけません。

《し ず か に し て》《う ご か な い で》
《コク コク》

 よかった。急いで口パクを行うと通じたようで、2回頷きが返ってきました。

((……声は男性のもので、10代……。学院の生徒、あるいはその従者でしょうね))

 ここは絶対に、関係者以外入れないようになっている。この時間に敷地内にいられる10代は、生徒かそのお付きのみです。

((……このお声に聞き覚えは、あるような気がしますが……。分かりませんね))

 きっと、学院内で耳にしたことがあるのでしょう。何か感じるものはありましたが、声音で特定はできませんでした。

((顔の確認も、難しいですね))

 身体を起こせば簡単に見れますが、そうすればこちらの姿も見られてしまいます。この状況ではやめておきましょう。

((他の情報を得られるといいのですが……。なにかないでしょうか――))
「お、来たな。お疲れ様」
((『来た』……? 誰かと待ち合わせをしていた……?))

 いえ、違いました。耳を澄ませていると羽の音が聞こえてきて、どこかに停まるような音がしました。
 謎の男性が待っていたのは、鳥。恐らくは伝書鳩です。

((夜に紛れたら、悟られずに伝書鳩を飛ばせる――それだけではありませんね))

 内側にいる人間ならば、警備の担当者を買収できます。少なくともこの方向にいる警備係の人は、お金などで見て見ぬふりをしているのでしょう。

((男爵家、子爵家レベルなら、きっと難しい。それより上、ですね))
「そのまま待機だ。ちょっと待っていてくれ」

 推理をしていると、カサカサという音とガサガサという音が聞こえました。
 これは……。伝書鳩が届けた紙――手紙か何かが二つあって、それらを開けているようです。

「……………………よし、順調にいってるみたいだな。じゃあ、送るのはこっちだな」

 一分ほど空白があり、再び紙が擦れる音が聞こえるようになりました。
 最後の方で、『送る』という単語が出ました。返事を伝書鳩に結んでいるようです。

「………………お待たせ。頼んだぞ」

 3~5秒ほどで飛び立つ音が聞こえ、すぐに羽ばたきの音は聞こえなくなりました。

「ふふ、今日は良い日だ。寝る前にとっておきを飲むかな」
((……男子生徒用の宿舎に、戻るみたいですね。わたし達も宿舎に戻って、この件を報告……するのは、危険かもしれませんね))

 もしも相手が侯爵家レベル以上だった場合、他にも敵が――この人の味方がいる可能性が高い。万が一関係者に伝えてしまったら、そうしようとしている姿を見られてしまっても、口封じをされかねません。

((…………手紙なら、送り主が分かりません。とりあえず学院長先生に、密告という形で送ってみま――っ!?))

 今度はわたしはおもわず声をあげそうになり、慌てて自分の口を両手で押さえました。
 聞き間違い、ではありませんよね? え、ええ、そうではありません。間違いなく今…………謎の人物は、ああ言いました。


((もう少しだ。もう少しで、レロッズ家とエタンに一泡吹かせられる。と))


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