初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第1話 予想外の夜 シャルリー視点(3)

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「お、お嬢様! い、いまっ」

 謎の男性の足音が完全に聞こえなくなり、更に20秒くらい経ったタイミングでした。レニアの顔がぐっと近づいてきました。

「え、え。わたしも聞いたわ」

 一泡吹かせる。そう言っていました。

「レロッズ家と、エタンって……」
「この学院には『エタン』はおひとりだけで、レロッズ家はこの国に一つしかない。そうなるわね」

 エタンとレロッズ家は、わたしが知っている方とお家です。

「さっきまでそっちに居た人は、エタン様――そしてレロッズ家に恨みを持っている。すごい場面に出くわしたわね……」
「悪い夢を見ている気分ですよ……。と、とにかくレロッズ様にご報告をしないと――…………」
「? レニア?」
「…………報告、するべきなのでしょうか……?」

 動揺が表れていた顔からソレがスゥッと消え、顔つきが険しくなりました。

「面倒見がいい優等生、その姿は大嘘。あの男は初恋の人に執着するあまりお嬢様に滅茶苦茶な命令を出し、当主は同調し、今日まで常に苦しめてきました。痛い目を見るべきではないでしょうか?」
「………………」
「お嬢様に害は飛んでこないような口ぶりでしたし、放っておいて困るのはあの男たちだけだと思うんです」

 そうですね。それは、わたしも感じていました。

「これくらいしても、罰は当たりません。それに……。もしかしたら、『一泡』が切っ掛けになって婚約が解消になるかもしれませんよ」
「………………」
「お嬢様には、見て見ぬふりをする資格がありますっ。お嬢様っ、今夜の出来事は忘れましょう!」
「…………………………ありがとう、レニア。でもね、そちらも気持ちだけもらっておくわ」

 正直に言うと、わたしも知らないフリをしたい。だって、ずっとずっと理不尽な目に遭わされ続けているのだから。
 ただそれでも、知らないフリをするのは居心地が悪い。
 いくら相手があんな人でも、見て見ぬふりはやっぱりできません。

「本当に、ありがとう。貴方の存在と言葉にいつも救われるわ」
「お嬢様……」
「心配をかけてしまってごめんなさい。さ、戻りましょう」

 このタイミングで男子生徒用宿舎を訪ねてしまえば、それこそ悟られてしまいます。
 報告をするのは、朝――登院時。寝坊してしまったら大変なので急いで自室に戻ってベッドに入り、

((余計に眠れなくなってしまいましたね))

 起きたことがことだけに目が冴えてしまい、結局徹夜。一睡もできない状態で朝を迎えてしまい、着替えを行って食堂で朝食を済ませ、目的を果たすべく登院したのでした。



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