初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第9話 正反対、だった エタン視点

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「……………………」

 俺がすべてを失ったあと、そんなことになっていただなんて……。正反対の人生を歩んでいただなんて……。
 おもわず、言葉を失ってしまった。

「ふふ。世の中はよくできているよね」
「……な、なんだ? どういう、意味だ……?」

 唖然となっていたら、フレデリックは俺を見下ろしながら笑い出した。
 何がおかしい……!

「自分勝手に振る舞い他者を傷付けた者が、自身の行いによって人生を崩壊させる。因果応報は本当にあるのだと、よく理解できたよ」
「っ! 貴様ぁ……!!」

 ふざけやがって!

「なにが因果応報だ!! 俺は何もやっていない!! あれは100パーセント濡れ衣なんだよ!! 俺は罪を背負わされた悲しき被害者だ!!」
「被害者、ね。過去どころか現在でも、こんなことを強要してくるような人間だ。なにも分からないし気付かないんだろうね」

 ヤツはシャルリーの隣に立ち位置を変えながら、シャルリーが書いた文字を一瞥した。

「自分に常識がないと――その域をゆうゆうと超え、もはや狂っているのだと理解できていないのだからね。無理な話だ」
「狂っている!? 俺が!?」
「愛している人と同じ声の人がいたら、いなくなってしまったその人を思い出してしまうから喋るなと命令する。狂っているとしか言えないだろう? じゃあなんと表現すればいいんだい?」
「っっ、俺の『愛』をっ、『想い』をバカにしたな!! ゆるせない――」
「愛? 想い? 気持ち悪い」

 なっ! なあ!?

「どこが、ではなく何もかもが気持ち悪い。吐き気を催すよ」
「貴様! 貴様ぁぁ……!! きさまぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「うるさい、お前こそ声を出すな。迷惑だ」
「きさまぁああああああああああああああ!!」
「これも同じく、何を言っても分からないし気付かないんだろうね。ある意味、とてつもなくおめでたい生き物だよ」

 ヤツは肩を竦め、生意気に鼻で笑った。

「実際に話してみると想像以上。呆れて怒る気すらなくなってしまったし、長々と喋っていたら気持ち悪さが感染してしまいそうだ。お互いこのあと行くべきところがあることだし、終わりにしよう」
「ふざけるな! 俺にそんなものはない!! 謝罪するまでは許さない――」
「いや、あるさ。牢屋がお前の向かう場所だ」

 ……は? こいつ、なにを言って……。

「理解できていないようだから、教えてあげよう。お前は、そこに落ちているナイフでシャルリーを刺そうとした。殺人未遂など複数の罪を犯し、清算する義務があるんだよ」
「犯罪だと!? これはだなぁ! コイツが俺を煽ったからで――」
「そんな言い訳は通用しない。もしソレが通るなら、貴様はとっくに殺されているぞ?」
「黙れ!! こんな理不尽っ、まかり通るか――」
「こうなると思ったよ。……今し方言ったように、相手をするのはもう終わりだ。すまないがこの男を治安局に連れて行ってくれ。あとで俺も向かうよ」
「待て! 話を聞け!! 俺はまだ――まてぇえ!! やめろおお!! やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 俺は今も被害者なのに!! 組み伏せられていた男達によって、理不尽・・・に引きずられていって――

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