初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず

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第8話 わたしの10年間 シャルリー視点(2)

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「まさか、このような日が訪れるとは思いませんでした」
「わたしも、同じ気持ちでございます」

 あれから一年後。わたしはノズーロ子爵令息フレデリック様と婚約を交わすこととなり、契約の場でわたし達は微笑みを交わしました。

「『妹のご友人』が『星座鑑賞仲間』となって、『婚約者』となる。こんなことがあるのですね」

 ――星座の鑑賞はとある方に影響されて1年半前に始め、レニアと共にどっぷりとハマった趣味。わたし達は揃ってシートに背をつけ、澄み切った夏の夜空を眺める――。

 あの時言っていた『とある方』は、フレデリック様なんです。

『マトート様。夜空に輝く星を眺めてみてはいかがでしょうか?』

 フレデリック様の妹君リナ様とわたしは、同じお茶会のメンバー。その関係で親しくしていただいていて、病気・・で声を出せなくなってしまったことをいつも案じてくださっていました。
 兄妹仲が非常に良いためフレデリック様も御存じで、フレデリック様も気にしてくださっていた。ですのでリナ様とのお茶会の際にノズーロ邸を訪れた際に、ご提案と共に星座の本をプレゼントしてくださったのです。

『僕は星座の鑑賞が趣味で、星々の輝きを眺めていたら心が安らぐのですよ。よろしければ一度、星に触れてみてください』

 人前で声を出せないことに大きなストレスを感じており、わたしはその日の夜に早速バルコニーに出ました。そうしていただいた本を参考にレニアと共に星を探して眺め始め、

「……綺麗……。星を見るのって…………落ち着くし…………楽しい」

 すぐに、その魅力に引き込まれました。
 その日から夜の星座鑑賞が趣味となって天気の良い日は毎晩バルコニーに出るようになり、星座好きの方と交流をしたくなってフレデリック様が主催されている鑑賞会にも参加するようになりまして。いつしかフレデリック様は、大好きな趣味の『先生』であり『仲間』となっていたんです。
 そういう関係もあってお父様はわたし達の仲を御存じで、更にはノズーロ家とのパイプは今のウチにとって非常に魅力的という事実もあった。そして同じようなことをノズーロ家当主様もお考えになられていて、お話がとんとん拍子に進んでいき今日という日を迎えました。

「貴方様と僕が違っているように、人間は十人十色。僕はこの場で、婚約が苦しみを生むものとならないことを誓い、同時に、多くの笑顔を生むことを誓います」

 声が出ない病気の真実を知ったフレデリック様は怒ってくださっただけではなく、わたしの中に生まれてしまっていた『婚約』『結婚』に関する悪いイメージを気にしてくださっていました。……そんな方なのですから、一緒に居て幸せにならないはずがありませんでした。

 かつてとは、正反対。

 一緒に過ごせば過ごすほど、フレデリック様を知れば知るほど、もっともっと好きになっていって。結婚してから今日までの間に沢山の幸せな思い出が出来て、うれし泣き以外で涙を流した記憶はありません。


 昔は、色々ありましたが――。
 今は大切な人との間に宝物も生まれて、家族4人で幸せな人生を歩んでいます。

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