殿下、妃殿下。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ

柚木ゆず

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((もしかしたら……。意外と、大したことのない相手かもしれないわね))

 4日後の、午後7時前。エサト家の豪邸内にある、パーティー会場。リブロン会のメンバー3人と共に開始を待っていた私は、人知れずほくそ笑んだ。

『現在我が息子とエリル・ハーマ君は、別室でとある準備をしております。どうやら大事なお話があり、今回はその為に開かれたようですぞ?』

『おやおや? どうやら皆様、皆目見当がつかないようですな? でしたら企画者のわたしから、ヒントを差し上げましょう』

『ヒントは、2人同時に登場する、ですぞ。一体、何があるのでしょうな? はっはっはっはっはっは』

 これはアルズ様の父親であり侯爵家のトップである、エニオ様の台詞。
 その為に開かれた。異性が二人同時。だったらそれは、婚約の発表に決まっている。私達のように事前に聞かされていない人でも、簡単に分かること。
 なのにこの人はイタズラっぽい顔をしていて、全員が気付いていないと思い込んでいる。この程度の人が一族のトップなら、私の動きにも気付かなそうだ。

((…………親は、どうにかなりそう。次は、本人の情報を集めましょっか))

 会場には沢山の、現地の貴族アルズ様をよく知る貴族がいる。これも演出なのか謎の自由時間があと20分くらいあるから、その間に聞いて回ろう。

「先程ご挨拶をさせていただいた、サーヤと申します。お話をさせていただいても構いませんでしょうか?」

 自分は、エリル様に招待された者。アルズ様を知らない人。そういう部分を活かして参加者に近づき、さり気なく情報を収集してゆく。

『アルズ様? 真面目で優秀な方だよ』

『学舎に在籍していた頃は、生徒会長をされていたよ。確か、2年生から会長だったね』

『良くも悪くも、一直線、だね。一度やると決めたら、何があってもそうする。ひたすらにゴールを目指し走り続ける、そんな御方だね』
『もっとも彼は、それ故にしばしば視野狭窄に陥る。幼馴染としては、もっと広い視野を持って欲しいところだね』

 こんな感じで情報を集め、おおよそ把握できた。
 アルズ様は、視線が一点に向きがちな人。そこを上手く利用すれば、後者の作戦――代償なしにしても、きっと成功する。

((ここで得たものを加味して、調節すれば…………間違いなく、いける。すぐに計画をしたい、ところだけど――))

「皆さん、お待たせしました。二人の登場ですぞ!」

 今はパーティーに参加していて、婚約発表が始まる。そのため仕方なく意識をそっちに戻し、他の参加者と一緒に会場の扉に顔を向けた。

(わたくし、エサト様のお顔は存じ上げていませんの。どんな方なのでしょうか?)
(私も、存じ上げていません。楽しみですね)

 ティリス様の話に合わせ、私も若干声を弾ませる。
 あの女の恋人になんて興味はないけど、一応は友人だからしょうがない。私もそわそわしているフリをして、登場を待つ。

(あっ、扉が開きますわっ。まずはエリル様が先に入ってきて………………まあっ。あの方がエサト様ですのねっ!)
(…………………………。………………………)

 続いて入ってきた男性を見た瞬間、私の目はエサト様に釘付けになる。
 だって……。だって……っ。
 そこにいたのは――。

((ロドリグ・ハマン……))

 私達を嵌めた男、だったのだから。

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