復縁して欲しい? 嫌です

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
19 / 33

第11話 だから僕は ヒューゴ視点(1)

しおりを挟む
「浮気を行い、しかもその後の対応は酷いものだった。そういった情報が入り、全てを知ってしまった瞬間に、僕はかつてない程に腹が立ったのですよ。貴方と自分にね」

 男爵家では、なかった……。あのサンリュエル公爵家の人間だった、シャルル――いや……シャルル様は……。左右の拳を、強く握り締めた。

「呆れ果てたことによって、幸いにも落ち込まれることはありませんでした。ですがそれは心の奥に封じ込めておきたくなるもの、辛い記憶が刻まれてしまいました。それが、許せませんでした」
「…………」
「更に細かく調べ上げ、真実を――ノズエルズ家の悪行を晒したかった。けれど当時はその方面に力を割く余裕がなく、その結果必要な証拠を掴むことができなくなってしまった。それが悔しく、情けなかったのですよ」

 パキリと、音がした。
 シャルル、様は……。奥歯が割れてしまうほどに、そう、思われている……。

「だからその際に、改めて決意をしたのですよ。動けるようになったらすぐ動き、この気持ちを伝える。そしてお返事がどうであれ、二度とこんなことが起きないように守り続ける。そう、決めたのですよ」
「ど、どうであれ……。断られても……? 断られても……!?」
「ええ。あの方の幸せは、僕の幸せでもありますので。今と違う状況になっていたのであれば、陰でひっそりと動き続けるつもりでした」

 恐らく、アニエスの居る方向なのだろう。斜め後ろに穏やかな視線を送り、向き直る――と、それは一変して……。別人のような、鋭いものへと変貌した……。

「その後有難いことに受け入れて頂けて、お傍で守り続けることができるようになりました。……そしてそんな時に、再び厄介で面倒な存在が近づいてきた。だから繰り返さないよう僕へと意識を向けさせ、ここへと誘導したのですよ」
「なっ!? 全部……。思い通りに動かされていた……!?」
「悪い芽は完全に、摘んでおきたかった。そこで大きな行動を起こさせて、しっかりと叩き潰しておきたかったのですよ」

 シャルル様は地面で伸びている15人を眺め回し、再び……。刃のように鋭い視線が、俺へと戻ってきた……。

「殺人を企む。犯罪者へ依頼する。治安局員を買収する。実行する。これだけの罪が重なれば、大変なことになってしまいますね」

 バレなければ何も怖くない――。
 だから堂々と行っていたが……。他貴族、しかも上位貴族の命を狙い、本来は中立機関である治安局に接触したんだ……。協力者レベルでも終身刑で、主犯レベルなら……。極刑が、待っている…………。

「しゃっ、シャルル様……!! おっ、お待ちくださいっ! とっ、取引を致しませんか!?」

 こんな未来は嫌だ……!! どうにかこの場を……!! そんな思いで俺は両膝をつき、この御方を見上げた。
 だっ、大丈夫! 俺ならきっと、取引に応じてもらえる!!

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:228,997pt お気に入り:12,317

え? 姉じゃなくて私が聖女だったんですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:124

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:167,323pt お気に入り:7,980

処理中です...