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第11話 だから僕は ヒューゴ視点(1)
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「浮気を行い、しかもその後の対応は酷いものだった。そういった情報が入り、全てを知ってしまった瞬間に、僕はかつてない程に腹が立ったのですよ。貴方と自分にね」
男爵家では、なかった……。あのサンリュエル公爵家の人間だった、シャルル――いや……シャルル様は……。左右の拳を、強く握り締めた。
「呆れ果てたことによって、幸いにも落ち込まれることはありませんでした。ですがそれは心の奥に封じ込めておきたくなるもの、辛い記憶が刻まれてしまいました。それが、許せませんでした」
「…………」
「更に細かく調べ上げ、真実を――ノズエルズ家の悪行を晒したかった。けれど当時はその方面に力を割く余裕がなく、その結果必要な証拠を掴むことができなくなってしまった。それが悔しく、情けなかったのですよ」
パキリと、音がした。
シャルル、様は……。奥歯が割れてしまうほどに、そう、思われている……。
「だからその際に、改めて決意をしたのですよ。動けるようになったらすぐ動き、この気持ちを伝える。そしてお返事がどうであれ、二度とこんなことが起きないように守り続ける。そう、決めたのですよ」
「ど、どうであれ……。断られても……? 断られても……!?」
「ええ。あの方の幸せは、僕の幸せでもありますので。今と違う状況になっていたのであれば、陰でひっそりと動き続けるつもりでした」
恐らく、アニエスの居る方向なのだろう。斜め後ろに穏やかな視線を送り、向き直る――と、それは一変して……。別人のような、鋭いものへと変貌した……。
「その後有難いことに受け入れて頂けて、お傍で守り続けることができるようになりました。……そしてそんな時に、再び厄介で面倒な存在が近づいてきた。だから繰り返さないよう僕へと意識を向けさせ、ここへと誘導したのですよ」
「なっ!? 全部……。思い通りに動かされていた……!?」
「悪い芽は完全に、摘んでおきたかった。そこで大きな行動を起こさせて、しっかりと叩き潰しておきたかったのですよ」
シャルル様は地面で伸びている15人を眺め回し、再び……。刃のように鋭い視線が、俺へと戻ってきた……。
「殺人を企む。犯罪者へ依頼する。治安局員を買収する。実行する。これだけの罪が重なれば、大変なことになってしまいますね」
バレなければ何も怖くない――。
だから堂々と行っていたが……。他貴族、しかも上位貴族の命を狙い、本来は中立機関である治安局に接触したんだ……。協力者レベルでも終身刑で、主犯レベルなら……。極刑が、待っている…………。
「しゃっ、シャルル様……!! おっ、お待ちくださいっ! とっ、取引を致しませんか!?」
こんな未来は嫌だ……!! どうにかこの場を……!! そんな思いで俺は両膝をつき、この御方を見上げた。
だっ、大丈夫! 俺ならきっと、取引に応じてもらえる!!
男爵家では、なかった……。あのサンリュエル公爵家の人間だった、シャルル――いや……シャルル様は……。左右の拳を、強く握り締めた。
「呆れ果てたことによって、幸いにも落ち込まれることはありませんでした。ですがそれは心の奥に封じ込めておきたくなるもの、辛い記憶が刻まれてしまいました。それが、許せませんでした」
「…………」
「更に細かく調べ上げ、真実を――ノズエルズ家の悪行を晒したかった。けれど当時はその方面に力を割く余裕がなく、その結果必要な証拠を掴むことができなくなってしまった。それが悔しく、情けなかったのですよ」
パキリと、音がした。
シャルル、様は……。奥歯が割れてしまうほどに、そう、思われている……。
「だからその際に、改めて決意をしたのですよ。動けるようになったらすぐ動き、この気持ちを伝える。そしてお返事がどうであれ、二度とこんなことが起きないように守り続ける。そう、決めたのですよ」
「ど、どうであれ……。断られても……? 断られても……!?」
「ええ。あの方の幸せは、僕の幸せでもありますので。今と違う状況になっていたのであれば、陰でひっそりと動き続けるつもりでした」
恐らく、アニエスの居る方向なのだろう。斜め後ろに穏やかな視線を送り、向き直る――と、それは一変して……。別人のような、鋭いものへと変貌した……。
「その後有難いことに受け入れて頂けて、お傍で守り続けることができるようになりました。……そしてそんな時に、再び厄介で面倒な存在が近づいてきた。だから繰り返さないよう僕へと意識を向けさせ、ここへと誘導したのですよ」
「なっ!? 全部……。思い通りに動かされていた……!?」
「悪い芽は完全に、摘んでおきたかった。そこで大きな行動を起こさせて、しっかりと叩き潰しておきたかったのですよ」
シャルル様は地面で伸びている15人を眺め回し、再び……。刃のように鋭い視線が、俺へと戻ってきた……。
「殺人を企む。犯罪者へ依頼する。治安局員を買収する。実行する。これだけの罪が重なれば、大変なことになってしまいますね」
バレなければ何も怖くない――。
だから堂々と行っていたが……。他貴族、しかも上位貴族の命を狙い、本来は中立機関である治安局に接触したんだ……。協力者レベルでも終身刑で、主犯レベルなら……。極刑が、待っている…………。
「しゃっ、シャルル様……!! おっ、お待ちくださいっ! とっ、取引を致しませんか!?」
こんな未来は嫌だ……!! どうにかこの場を……!! そんな思いで俺は両膝をつき、この御方を見上げた。
だっ、大丈夫! 俺ならきっと、取引に応じてもらえる!!
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