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第14話 戻ってきた影たち アルチュール視点
しおりを挟む「今日という日に、乾杯」
夜空に丸々と浮かび上がる、満月。自室の窓から絶景を見上げ、俺は軽快にグラスを傾けていた。
現在は午前2時7分。あちらでは、アリスの確保が済んでいる時間。そこでまずは、確保成功を祝っていたのだ。
「…………ふふ。勝利の美酒は格別だな」
1本120万ルーベルの高級ワインが、いつもよりも更に美味く感じる。やはり勝利を祝う酒は、喉の通りがまるで違う。
「この段階で、この美味さだ。屈服させたあとに――有能な駒を手に入れたあとで飲む美酒は、どれほどの味となるのだろうな」
オーレリアン、だったか。あの男のせいで心は奪えなかったものの、頭が良く顔もいい女が手に入るんだ。さぞや美味いものとなるに違いない。
「我が商会を更なる高みへと押し上げる、商業のブレイン。到着と、調教が楽しみだ」
この俺に無駄な努力をさせ、エプリスヒの森では恥をかかせたんだ。その分も含め、しっかりと仕込んでやる。
「俺はアブノーマルじゃない、ノーマルな人間だ。主従的な愛は興味がないが、まあいいだろう。それも一興だ」
そうして俺はワインを傾けながら調教内容を考え、長針が3回ほど回った頃だろうか。背後――扉が恭しくノックされた。
ははは。ようやく、ご到着のようだ。
「すぐに向かう。とりあえずアリスは、エントランスで跪かせておけ――おい! 誰が開けていいと言った!!」
立ち上がっていると扉が勝手に開き、そこではルイと影の3人が並んでいた。
コイツらは、いつの間に常識をなくしてしまったんだ? 主の許可なく無断で開けるなど、言語道断で――ん?
「おい。お前達、どうした?」
睨みつけていると、あることに気が付いた。4人の顔は真っ青になっていて、体はプルプルと震えているのだ。
「「「「…………。…………」」」」」
「おいっ、主が聞いているんだぞ!! 誰もいい! 早く答えないか――…………」
歩み寄ろうとしていた俺もまた、ヤツらのようになってしまう。
な、なぜだ……? どうなっているんだ……?
どうして、4人の背後には――
「こんばんは――もう夜が明けるので、違いますね。おはようございます。お久しぶりです、ファズエルス様」
「数時間前は珍しい体験ができました。感謝いたします、アルチュール様」
オーレリアンとアリスが、平然と立っているんだ……!?
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