気付いてくれたのは、わたしを嫌っていたはずの婚約者でした

柚木ゆず

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第5話 真実 エレノオール視点

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「…………痛み入ります」

 ベンジャマン様から真実を伺ったわたしは、姿勢を正しながら感謝の言葉をお伝えしました。

 ――二人きりでお話ししていた内容も、プレゼントの件も、理由があった――。

 マティルドの本心を見抜いた上での行動で、全てわたしのために行ってくださっていました。

「出会って間もない……お家の都合で出会った、わたしのために……。ずっと、ありがとうございました」
「真っすぐな瞳を持つ方が酷い目に遭うなんて、看過できませんし――。なにより、エレノオール様。貴女様は、お手紙を送ってくださりましたよね?」
「は、はい」

 わたし達は面識がなく、よく知らない相手と婚約するのはお辛いはず――。そんな思いで、良い妻になれるよう精一杯努力します、遠慮なく何でも仰ってください、と記しました。

「……自分だって不安でしょうに、慮ってくださる……。そういう方ですから、余計にお助けしたいという気持ちが湧いてまいりました」

 でも――。と、ベンジャマン様のお顔が歪みました。

「僕の読みは甘く、母の時のように完全に止められなかった――マティルドは一線を越えてしまいました。これまでの言動も含め、辛い思いを多々させてしまい申し訳ございません」
「そんなっ、頭をお上げくださいっ。ベンジャマン様のせいではございませんっ」

 妹はずっと他人想いの良い子だと思い込んでいて、仰られていたように『マティルドは悪人だ』と言われても誰も信じられませんでした。そんな中で懸命に動いてくださったのですから、感謝しかありません。

「こちらこそ、痛み入ります。……ですがご安心を。謝罪は今回で最後にします」

 わざわざ片膝を付きながらお返事をしてくださったあと、力強いブルーの瞳が真っすぐ前を向きました。

「彼女の悪事は必ずや白日の下に晒し、貴女様のお身体を元に戻します。……そのためには、情報が必要。僕の知らないところで起きた出来事、その詳細を教えてください」
「承知いたしました」

 手紙で呼びされたこと。赤色の宝石? のようなものの存在。意識を失い気が付くとこの身体に入っていたこと。
 特に2つ目の情報については、細かくお伝えしました。

「なるほど、その赤い宝石が原因でしたか。となれば、とにかくその物体を確保しないといけませんね」

 二度と表舞台に立てないようにした上で、入れ替わる。あそこまでしたマティルドが、説得に応じるとは思えません。
 本元を手に入れて、自力でどうにかするしかありません。

「マティルドは隠してしまっているでしょうし、お父様やお母様はあの子の味方となっています。確保は、難しいですね……」
「いえ、そこまで難しくはありませんよ。打つ手はありますし、そちらに連動して軟禁も解消できるでしょう」
「えっ? そ、そうなのですか……!?」

 困難だと思っていましたが、違う……? それに、軟禁に関しても……?

「二週間ほどいただくことになってしまいますが、上手くいく方法があるのですよ。ウチ――ウチであり父ならば、このやり方ができるんです」

 ………………そういうこと、ですか。
 確かに。わたしも、そのような流れになると感じております。

そちら・・・に関しましては、母の愚行によって知識が豊富にございます。先ほど申し上げたように断言できますので、どうかご安心を」
「はい。信じておりますし、不安はございません」

 お母様の暴走のお話、聞かせていただきました。その際にそうされた方がそう仰るのなら、間違いありません。

「痛み入ります。では仕込みを始めますので、エレノオール様」
「承知いたしました。………………。わたしはエレノオールなんです!! 信じてくださいっっ!! 信じてくださいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 ベンジャマン様の手によって再び椅子に縛り付けられた状態で叫び、ベンジャマン様は「もう付き合ってられない……。見苦しい……」と吐き捨てながら部屋を出ていく。そうして監視する人達経由でマティルドに違和感を覚えられないようにした上で、ベンジャマン様の計画が動き出して――


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