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第5話 追求の時 マエリス視点(2)
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「好きが云々は、嘘だったというのか……」
「まさか……。このために、嘘をついていたというの……!?」
お義父様もお義母様も浮気とは無関係で、わたし同様――わたしよりも長い間、好きという感情を失ったのだと思い込んでいました。
ずっと正しいと思っていた認識が崩壊し、おふたりは思わずジョルロアさんに詰め寄りました。
「………………………………」
「ジョルロア! なんとか言ってくれ!!」
「ねえ! ジョルロア!! なんとか言って頂戴!!」
「………………………………ああ、そうだよ。そうさ! ファニーと交際するために嘘を吐いていたんだよ!!」
数分ぶりに発せられた声は、苛立ちがたっぷり籠った所謂逆ギレの大絶叫でした。
「こっちは貴族で相手は給仕! 結婚どころか交際すら夢のまた夢の関係だ!! だからと言って諦められるか!! ファニーは天使っ、運命の相手なんだからな!! どうに関係を持てるよう必死になって考えたのがこの嘘だ!! ……今までずっと上手くやれていたのに……! お前のせいで滅茶苦茶になったじゃないか!!」
「……わたしに対する第一声が、謝罪ではなく叱責。さすが、平然とああいったことをしたり言ったりするですね」
「うるさい!! 分かったような口を利くな!! お前に俺の苦しみが分かるか!? 分からないだ――」
「分かりますよ」
嫌という程に、分かります。
その痛みを、知っています。
「…………てっ、適当なことを言うな!! もういい黙っていろ!!」
またしても悪びれずにわたしを睨みつけ、血が出るほどに唇を噛みました。
「乗っている馬車が横転したり……! そのせいで大怪我をして、何か月間も動けなかったり……! やっと治ったと思ったら、こんなことになったり……! どうなってるんだ……!? なんで、俺ばっかりこんな目に――」
「ジョルロア殿、そういった話はひとりの時にやっておくれ。……そんなことより、卿。どうしましょうか?」
ジョルロアさんの声を遮り、お父様が一歩前に出ました。
その問いかけは言わずもがな、今度の対応についてです。
「関係を絶つと誓い、現状維持にするのか。絶たずに離婚とするか。どういったお考えをお持ちなのですかな?」
わたしは心の底から、後者を願っています。
『そうなんだよ。ライズ、アイツは俺にストレスばかり溜めさせる。あんなのを子ども扱いするのは苦痛だよ』
『あ~あ。マエリスもライズも、死んでくれたらいいのにな。なんで事故に巻き込まれるのが俺なんだよ』
『いつも言っているけど、俺の妻はファニーで子どもはレオンだけ。マエリスもライズも、俺に憑りついている悪霊みたいなだからね。何を言ってもいいのさ』
だってこの人は、わたしの宝物にあんな風に言ったのです。
そんな人間に近くにいて欲しくはありませんし、居たらライズに悪影響を与えてしまいます。ですので二度と顔も見たくないのですが…………婚約も結婚も、両家の未来のために行われています。
((……仕方が、ありませんね。ライズ、ごめんなさい))
選択されるのは、前者。この人との縁は、死ぬまで切れることはないのでしょう――
「…………卿。ジョルロアの浮気を、見なかったことにしていただきたい」
――…………。
え?
お義父様は、なにを言って……?
「まさか……。このために、嘘をついていたというの……!?」
お義父様もお義母様も浮気とは無関係で、わたし同様――わたしよりも長い間、好きという感情を失ったのだと思い込んでいました。
ずっと正しいと思っていた認識が崩壊し、おふたりは思わずジョルロアさんに詰め寄りました。
「………………………………」
「ジョルロア! なんとか言ってくれ!!」
「ねえ! ジョルロア!! なんとか言って頂戴!!」
「………………………………ああ、そうだよ。そうさ! ファニーと交際するために嘘を吐いていたんだよ!!」
数分ぶりに発せられた声は、苛立ちがたっぷり籠った所謂逆ギレの大絶叫でした。
「こっちは貴族で相手は給仕! 結婚どころか交際すら夢のまた夢の関係だ!! だからと言って諦められるか!! ファニーは天使っ、運命の相手なんだからな!! どうに関係を持てるよう必死になって考えたのがこの嘘だ!! ……今までずっと上手くやれていたのに……! お前のせいで滅茶苦茶になったじゃないか!!」
「……わたしに対する第一声が、謝罪ではなく叱責。さすが、平然とああいったことをしたり言ったりするですね」
「うるさい!! 分かったような口を利くな!! お前に俺の苦しみが分かるか!? 分からないだ――」
「分かりますよ」
嫌という程に、分かります。
その痛みを、知っています。
「…………てっ、適当なことを言うな!! もういい黙っていろ!!」
またしても悪びれずにわたしを睨みつけ、血が出るほどに唇を噛みました。
「乗っている馬車が横転したり……! そのせいで大怪我をして、何か月間も動けなかったり……! やっと治ったと思ったら、こんなことになったり……! どうなってるんだ……!? なんで、俺ばっかりこんな目に――」
「ジョルロア殿、そういった話はひとりの時にやっておくれ。……そんなことより、卿。どうしましょうか?」
ジョルロアさんの声を遮り、お父様が一歩前に出ました。
その問いかけは言わずもがな、今度の対応についてです。
「関係を絶つと誓い、現状維持にするのか。絶たずに離婚とするか。どういったお考えをお持ちなのですかな?」
わたしは心の底から、後者を願っています。
『そうなんだよ。ライズ、アイツは俺にストレスばかり溜めさせる。あんなのを子ども扱いするのは苦痛だよ』
『あ~あ。マエリスもライズも、死んでくれたらいいのにな。なんで事故に巻き込まれるのが俺なんだよ』
『いつも言っているけど、俺の妻はファニーで子どもはレオンだけ。マエリスもライズも、俺に憑りついている悪霊みたいなだからね。何を言ってもいいのさ』
だってこの人は、わたしの宝物にあんな風に言ったのです。
そんな人間に近くにいて欲しくはありませんし、居たらライズに悪影響を与えてしまいます。ですので二度と顔も見たくないのですが…………婚約も結婚も、両家の未来のために行われています。
((……仕方が、ありませんね。ライズ、ごめんなさい))
選択されるのは、前者。この人との縁は、死ぬまで切れることはないのでしょう――
「…………卿。ジョルロアの浮気を、見なかったことにしていただきたい」
――…………。
え?
お義父様は、なにを言って……?
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