貴方は人を愛せなくなっていたはずですよね?

柚木ゆず

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第8話 不思議その2 俯瞰視点(2)

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「調べてみたら、あのナフキンにはちゃんと俺とファニーの指紋がついていた。つまりアイツは、『ラフィール』のあの部屋に入っている。どうやって入ったんだ……?」

 あの場所には、許可を出した人間以外入れないようになっている。有り得ないことが起きているとようやく気付き、ジョルロアは慌てて上体を起こしました。

「俺達が食事を終えて去ったあとに、こっそり入った……? いいや、無理だ」

 予想外の問題が起きないように、退室後はすぐにアルスがリスクとなりそうなものを処分する。もしも何らかの方法を使って侵入できたとしても、その頃にはナフキンはなくなっています。

「…………そういえば……。あの時は、扉の前でアルスに指示を出していたな……」

 ジョルロアが出てから処理作業を始めるまでに、1~2分の間がありました。

「マエリスがどこかに潜んでいたとしたら、その隙に盗めはする。が…………それも、無理だ」

 食事を始める前には、アルス達に室内のチェックを命じている。その3人が隅々まで徹底的に確認をして、どこかに潜んでいたらその時に発見されています。
 それにそもそも、無関係者はあの部屋に絶対に入れない。マエリスが入る手段はなく、確保は不可能だと結論付けました。

「……だが、現にアイツはナフキンを手に入れていた……。間違いなく、あの空間に入っているんだ……!」

 だが、だが! 入る方法がないんだぞ!? 入る方法がないのに、どうやって入ったというんだ!?――。
 ジョルロアの頭の中は『謎』一色となり、たまらず頭を抱えました。

「どうなっている……!? アイツは、魔法でも使えるのか……!? 姿を消して、ずっと潜んでいたのか……!? それとも、あれか!? 催眠術が使えて、アルスを操って回収させたのか……!?」

 可能性としては、それしかない。そう感じましたが、それらもすぐに否定されてしまいます。

「それこそ、有り得ない……! ヤツが魔法を使えるなら大人しく要求を呑むはずないし、催眠術を使えるなら直接仕掛けるはずだ」

 自分達を力ずくで黙らせられるし、アルスではなく自分にかけて自白されたらいい。そのどちらもしていないのであれば、どちらも間違いとなります。

「……もう、他に手段はないぞ……!? 分からない……! 分からない……!! マエリスは、どうやってナフキンを手にした……!?」

 どくん。どくん。どくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくん!!
 まるで耳の中にあると感じるほどに心音が大きくなり、破裂しそうなほどに鼓動が速くなる。それに合わせて精神も不安定となり、ついに――

「ち、父上と母上に相談しよう!!」

 ――自分の中だけでは処理できなくなり、狼狽しながらベッドから飛び降ります。
 しかしながら――。
 2人へのヘルプが叶うことはありませんでした。なぜならば、

「ジョルロアぁああ!!」
「ジョルロアあああ!!」

 その求めていた父親と母親が、ノックもなしに部屋に飛び込んで来たからです。

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