貴方は人を愛せなくなっていたはずですよね？

番外編 ファニーのその後 俯瞰視点（４）

「…………ああもう！！　どういうこと！？」

　あれから１０日後。ファニーは、自宅の中で目を吊り上げていました。
　その理由は、ルゾート。

『明日は夕方から隣国に行かないといけなくて、次に会えるのは１０日後になる。君のためにも、頑張ってくるよ』

　そう約束したのにもかかわらず、まだ来ない――たった今深夜０時を迎えたため、結局訪れなかったのです。

「約束をしてすっぽかすだなんて、どういうつもり！？　自分から言っておいて守れないなんてバカなの！？　バカなのよね！？　大バカ！！　罰が下れ！！」

　また両親に押し付けるくらいレオンが泣きじゃくった＆時間を無駄にされてしまった。いつもより苛立っているファニーは壁へと思い切りクッションを投げつけ、その後なんと５分近くも暴言を吐き続けたのでした。

「…………ダメダメ、あんなヤツのためにイライラしていたら損よね。今日はもう、あんなアホのことは忘れて寝ましょ」

　次会ったらきっちりお詫びをさせないと――。そんなことを考えながらベッドに入り、起きると腕組みをしながらルゾートを待ち始め――


「…………はあ！？」

「…………はあっ！？」

「…………なんなの！？」

「…………なにい！？」

「…………どういうつもり！？」

「…………どうなってるの！？」

　待ち始めたものの、ルゾートは一向に現れない。１日２日３日と時間が過ぎてゆき、ついに１週間が経過してしまいました。

「っっ！　もう限界よ！！　そっちが来ないならこっちから行く！！」

　ファニーは以前ルゾートに招待され、彼が国内で暮らす家を訪れたことがありました。
　あそこにはルゾートが雇った使用人がいて、その女に会えば何か分かるかもしれない。
　そんな思いでファニーは家を飛び出し、寄り合いの馬車に２時間半ほど揺られ、目的地に到着しました。

（（？？　あの時いた、門番がいない……？））「ごきげんよう。ルゾートさんの恋人、ファニーでございます！」

　本心を悟られないよう外用モードになり、疑問を抱きつつも門の外から大きな声を出します。

「ごきげんよう～！　ごきげんよう～！　ごきげんよう～！　……あら？」

　何度呼んでも、返事はなし。建物の中から人が出てくる気配もありません。

「ご、ごきげんよう～！　ごきげんよう～！　ごきげんよう～！　ごきげんよう～！」

　もしかして聞こえてない？　そう考えて大きな声で挨拶を繰り返し、それでも結果は変わりません。
　しかしながら繰り返すより他なく、ファニーはひたらす声を張り上げて――

「え？　え！？」

　――１４分が経った頃でした。ようやくその声に反応があったのですが、ソレを受けたファニーは唖然となってしまうのでした。
　なぜならば、


「ワシの家に、なにか御用ですかな？」


　返って来た反応は、こういったものだったからです。