5 / 21
第2話 知った、から 俯瞰視点(3)
しおりを挟む
「じゃあ、アレット。これからもう二つ、作戦に関する大事な『お願い』をしておく」
3分ほど抱き合い、オーバンが椅子へと戻ったあとのことでした。彼は新たに取り出した紙2枚にペンを走らせ、作業を終えるとアレットの前に置きました。
「さっき説明したように、コレを使ってヤツらを仕留める。そのためにはソレをフランクさん達『味方』に渡し、以降は俺の指示通りに動いてもらう必要がある」
「ええ。そうね」
「そしてこの作戦のスタートは、3日後のスタートがベスト。だから2日後の夜1時丁度に、ベファリース家の門番にこっそり渡しに行く。それに関する伝達と、受け取ったら即日完璧に動き出せるように、この紙2枚を邸内の人間に――あの3人に気付かれないようにした上で、味方全員にしっかりと目を通してもらってくれ」
「分かったわ。カロルお継母様たちは明日から3人で外出し始めるみたいだから、明日みんなに見せるわ」
あの3人は捏造の準備を行うため日中はお屋敷に居ない、とフランク経由で把握済み。それによって簡単に、目標を達成できるようになっていました。
「アレットにトドメを刺すための行動が、自分達がついに刺される状況を作っていた。最高だな」
オーバンは、南――ベファリース邸が建つ方角に向けて大仰に噴き出し、たっぷりと嗤ったあとは再び正面に視線を戻しました。
「このお願いが大事なお願いの一つ目で、最後のお願いは『自然体を保って』。ここは特に、全員にしっかりと守ってもらいたい」
アレットを含め味方全員の中でひとりでも違和感があれば、計画の効果はガクンと落ちてしまいます。最悪、逆効果をもたらしてしまう危険性もあります。
そこでオーバンは輪をかけて念を押し、そうすればすぐに力強い頷きが返ってきました。
「私自身のこともそうだけど、お母様への行いは許せない。みんなもそう思ってくれているから、大丈夫。何があっても絶対に不自然は出さないわ」
「…………ああ、そうだな。なら、絶対に大丈夫だな」
目の前にいるアレットの瞳。今はお屋敷内にいるアレットの味方達の姿。それらを見て、思い浮かべ、同様の反応を返しました。
「じゃあ、この場で伝えることはもうない。――というわけで、真面目は話はここでお仕舞。ここからは予定通り、お茶会を楽しもうぜ」
3人はアレットが何も知らないと思っているため、普段通りの時間を過ごす必要がありました。それになにより、アレットを元気づけたいという気持ちがありました。
ですので今度こそ用意していたフィナンシェやモンブランを並べ、二人きりのお茶会が始まりました。
「久しぶりにモンブランを食べたいって仰られておりましたので、今回用意させていただきました。お姫様、どうぞ召し上げれ」
「ありがとうございます、王子様。味わわせていただきますね」
「マロンクリームのキメが細かくって、スポンジもふわふわ……! すごく美味しい……っ」
「そっか。気に入ってもらえてよかったよ」
これから3人の悪意が動き出そうとしていますが、今のアレットにはオーバンが考えてくれた作戦があります。そのため戯れたり舌鼓を打つ余裕があり、その後アレットはたっぷりと、大切な人との時間を楽しんだのでした。
そして、それから3日後。ついに、オーバン考案の計画が動き出して――
3分ほど抱き合い、オーバンが椅子へと戻ったあとのことでした。彼は新たに取り出した紙2枚にペンを走らせ、作業を終えるとアレットの前に置きました。
「さっき説明したように、コレを使ってヤツらを仕留める。そのためにはソレをフランクさん達『味方』に渡し、以降は俺の指示通りに動いてもらう必要がある」
「ええ。そうね」
「そしてこの作戦のスタートは、3日後のスタートがベスト。だから2日後の夜1時丁度に、ベファリース家の門番にこっそり渡しに行く。それに関する伝達と、受け取ったら即日完璧に動き出せるように、この紙2枚を邸内の人間に――あの3人に気付かれないようにした上で、味方全員にしっかりと目を通してもらってくれ」
「分かったわ。カロルお継母様たちは明日から3人で外出し始めるみたいだから、明日みんなに見せるわ」
あの3人は捏造の準備を行うため日中はお屋敷に居ない、とフランク経由で把握済み。それによって簡単に、目標を達成できるようになっていました。
「アレットにトドメを刺すための行動が、自分達がついに刺される状況を作っていた。最高だな」
オーバンは、南――ベファリース邸が建つ方角に向けて大仰に噴き出し、たっぷりと嗤ったあとは再び正面に視線を戻しました。
「このお願いが大事なお願いの一つ目で、最後のお願いは『自然体を保って』。ここは特に、全員にしっかりと守ってもらいたい」
アレットを含め味方全員の中でひとりでも違和感があれば、計画の効果はガクンと落ちてしまいます。最悪、逆効果をもたらしてしまう危険性もあります。
そこでオーバンは輪をかけて念を押し、そうすればすぐに力強い頷きが返ってきました。
「私自身のこともそうだけど、お母様への行いは許せない。みんなもそう思ってくれているから、大丈夫。何があっても絶対に不自然は出さないわ」
「…………ああ、そうだな。なら、絶対に大丈夫だな」
目の前にいるアレットの瞳。今はお屋敷内にいるアレットの味方達の姿。それらを見て、思い浮かべ、同様の反応を返しました。
「じゃあ、この場で伝えることはもうない。――というわけで、真面目は話はここでお仕舞。ここからは予定通り、お茶会を楽しもうぜ」
3人はアレットが何も知らないと思っているため、普段通りの時間を過ごす必要がありました。それになにより、アレットを元気づけたいという気持ちがありました。
ですので今度こそ用意していたフィナンシェやモンブランを並べ、二人きりのお茶会が始まりました。
「久しぶりにモンブランを食べたいって仰られておりましたので、今回用意させていただきました。お姫様、どうぞ召し上げれ」
「ありがとうございます、王子様。味わわせていただきますね」
「マロンクリームのキメが細かくって、スポンジもふわふわ……! すごく美味しい……っ」
「そっか。気に入ってもらえてよかったよ」
これから3人の悪意が動き出そうとしていますが、今のアレットにはオーバンが考えてくれた作戦があります。そのため戯れたり舌鼓を打つ余裕があり、その後アレットはたっぷりと、大切な人との時間を楽しんだのでした。
そして、それから3日後。ついに、オーバン考案の計画が動き出して――
10
あなたにおすすめの小説
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました
3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」
男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。
初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。
その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。
しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。
社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。
一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる