婚約者が継母や妹に陥れられそうになっているので、それを利用して継母たちを陥れることにした

柚木ゆず

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第3話 不意に訪れる、異変 俯瞰視点(2)

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「「ビスクドール……?」」

 二人の視線が、ベッドに釘付けとなってしまった理由。それはカロルのベッドの中央で、見たこともない人形がうつ伏せ状態で置かれていたからです。

「? ???」
「? ???」
「………………ね、お母様。お母様って、ビスクドールを持ってなかったよね?」
「ええ。一つも持っていないわ」

 この国でもビスクドールは令嬢に人気がありましたが、カロルは――クラリスも、それよりもリングやネックレスを好みました。そのため一体も所有してはおらず、そこにあるはずがなかったのです。

「だよね……。じゃあ、なんであるの……?」
「邸内にもなかったのに……。どうなっているのかしら……?」
「もしかして、誰かのイタズラ……? 驚かせようとして、置いた……?」
「その可能性は、ないわね。そんなことをする人間はいないわ」

 使用人達は全員が自分達に忠誠を誓っているし、アレットが何かしようとしたらすぐに報告が来る。そう思い込んでいるため、クラリスの推理はすぐ否定されました。

「それも、そっか。??? だったらなんで、あるの……?」
「不思議よね……。本当にどうなっているのかしら……?」

 カロルとクラリスは何度も首を傾げ、更に1分半ほど戸惑ったあと、親子揃ってベッドへと向かい始めます。
 考えていても仕方がない。邪魔だからどけよう。もうすぐやって来るであろうメリッサに渡すため、二人は謎のビクスドールに近づいていきます。

「ねえお母様。良いコト思い付いたわ」
「ん? なにかしら?」
「メリッサに渡すのは止めて、お姉様に押し付けつけるの。コレ、アレットにピッタリだし」
「まあ、それはいいわ。そうしましょ。確かにピッタリだものね」

 突然現れて気持ち悪い上に、シンプルな真っ白のワンピースを着ている――ビスクドールのくせに、みすぼらしい服を着ていること。それらによってカロル達は新たな愚行を思い付き、一転して嬉々としながら進みます。
 そうしてようやくベッドの傍にたどり着き、押し付けるべくカロルが両手でビスクドールを持ち上げます。そして――

「「ぎやあああああああああああああああああああああああああ!?」」

 ――すぐに二人は、邸内中に響き渡るほどの悲鳴を上げる羽目になりました。
 なぜならば――


 持ち上げたことで露わになった正面では、服の胸部が真っ赤に染まっていたからです。

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