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第4話 もう一つ増えた結果 俯瞰視点(2)

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「すっ、すぐに捨てるのだ!!」「いますぐに捨てなさい!!」「ひとつ残らず捨てて!!」

 ドナルド、カロル、クラリス。3人は顔を真っ青にして身を寄せ合い、喉が裂けんばかりに声を張り上げました。

「クラリスっ、アレットに押し付けるのはなしよ!! いいわね!?」
「当たり前よお母様!! 捨てる!! すぐ捨てる!!」

 アレットの部屋に置けば、自分達が体験した恐怖を与えることができる。そう理解していますが、邸内にあるのはあまりにも気持ち悪い。
 そのため即座に予定は変更され、処分が決まったのでした。

「あんなにも一秒でも早く消し去りたい!! ただちに捨てるのだっ!!」
「だけど敷地内で行っては駄目よ!! 敷地外っ、できるだけ離れた場所で処分なさい!!」
「あとっ、その際はちゃんと素手で持って捨てなさいよ!! 絶対よ!! 絶対だからね!?」

 もしも敷地内で処理をしたら、敷地内で何かしらの悪いことが発生するかもしれない――。素手で持たせてから処分させたら、万が一何かしらの悪いことが発生してもソイツに降りかかるはず――。
 そんな考えで細かく条件を指定し、すぐさま二人の使用人に命令。それによってようやく奇妙なビスクドールは屋敷から居なくなり、ようやく三人は胸を撫で下ろしました。

「よかった……。やっと、終わった……」
「よかったわ……。やっと消えたわ……」
「よかった……。やっと平和になった……」

 しかしながらあの騒動によって受けたダメージはあまりに大きく、笑顔は一切ありません。3人共によろよろと立ち上がり、力なく出入口へと向かいます。

「だ、旦那様、奥様、お嬢様……? どうなされるのでございますか……?」
「…………身体を洗って、もう寝る……」「…………身体を綺麗にしてから、寝るわ……」「起きているのは、辛いから……。臭いを落としたら、もう寝るわ……」

 しばらく何も考えたくない――。今の三人には、そんな思いしかありません。
 ですのでまだ午後6時にも関わらず就寝の支度を始め、

「カロル……。クラリス……」
「ええ……。あなた……」
「一緒に、寝よ……」

 恐怖の余韻によって独りでは眠ることができず、その後三人は固まり――それでも不安で眠れなくなったため、使用人の部屋に押しかけます。そうしてやっとカロル達は落ち着けるようになり、一様に穏やかな寝顔を浮かべたのでした。

 明日以降も、悲鳴を上げ続けることになるとは知らずに――。

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